【ミニコラム】栃木・群馬県民にとって東武特急は不便なのか

先日、以下のようなツイートをしました。

https://twitter.com/tosaka_public/status/1429716437736644612

実のところサークル関係の後輩がたまたま私の地元栃木県に来ていた旨をツイートしていたためテキトーに反応しただけだったのですが、予想外に反響がありました。そのため、本来書き記す予定は全く無かったものの、東京と宇都宮の間をそこそこの頻度で移動する機会があった栃木県民の1人として東武特急の使い勝手について思うところをごく簡単に書き記します。
なお、私は鉄道関係についてはそこまで詳しくなく、そういったサークルの所属でも無かった(元ツイートをした後輩は"そういったサークル"の所属だったんですけどね。この辺の事情について説明するとややこしくなるので割愛します)ので、詳しい人からしたらいろいろと突っ込みどころがあるかもしれませんが、どうかご容赦ください。
また、あくまでも北関東の元・地元住民の立場からの文章になります。例えば「日光・鬼怒川と箱根だったらどっちが魅力的な旅行先か」とか「スペーシアと(伊勢志摩へ向かう)近鉄特急しまかぜだったらどっちに乗りたいか」と言った、他所からいらっしゃる方の視点は全く考慮しておりません。こちらもご容赦ください。
それから、割と北関東や東京のローカルな地名が出てくる文章のため、お手元に地図をご用意いただくと多少スムーズにお読みいただけるかと思います。
あと、ミニコラムと銘打っておきながら本文が9000文字ほどあります。要約がヘタクソなのは事実でございますが、どうか多少お時間が空いた際にお読みいただければと思います……。

さて、山猫軒のごとくお願いやらお断りやらを書き連ねてきましたが、ここからが本題。先述の通り、私は「東武特急はかゆいところに手が届かない」という趣旨の後輩のツイートに対して、その微妙な不便さの理由を3点挙げました。再掲すると

・東武特急の行先、浅草が中途半端
・栃木群馬からの対東京輸送を担う宇都宮高崎線などに比べて利便性が微妙かつ車社会なのでJRが遠い地域からでも自家用車でJRに逃げられる
・両毛地区に拡がる中都市に向けてタコ足みたいに線路を引いたせいでりょうもう号が主要都市をカバーできていない

この3つです。順を追って書き記していきましょう。


1.浅草が中途半端

栃木県民、あるいは恐らくは群馬県民の大半も同様であるかと思いますが、とにかく東武特急のメインターゲットであるような北関東の人々は、東武線に乗るかはさておいて、割と頻繁に東京に出向きます。彼らは何のために東京に出向くのでしょうか。もちろん色々なパターンが考えられますが、例えばレジャーであったり観光であったり、そうした物見遊山を楽しむ、ある意味修学旅行的な楽しみを求めて『東京』に出向く人ももちろん一定数います。北関東よりもっと遠くの、例えば関西であったり九州であったり、あるいは海外の人にとっての『東京』は一般的にそういう街かもしれません。そうした側面で『東京』を切り取ったとき、確かに浅草という街やその周辺には、例えば浅草寺であったり、雷門であったり、東京スカイツリーであったり、はたまた黄金に輝く不思議な形のオブジェを頭に乗せたビル(スーパードライホール)であったり、そうした『東京』の名所が数多くありとても魅力的な行先であると言えます。


ですが、北関東の人にとっての『東京』はある意味ではそういう街で無かったりします。一言で言うならば”所用”が発生する場所です。北関東の人に限らず、家の近所で成し得ない所用を済ませるためにどこか別の場所へ出向く行動は広くなされています。そして、そういう”所用”が発生する場所はたいてい地元より大きな街ですし、そこで成し得ない”所用”があればさらに大きな街に出向くわけです。例えば、宇都宮の隣町の地方都市、鹿沼で成し得ない所用があれば宇都宮に出向きますし、宇都宮で成し得ない所用がある人は一番身近な”宇都宮より大きな街”である東京に(実際はこの他にも大宮に出向く流れが少なからず存在しますが、それを考慮すると少々ややこしくなる上にどう考えても東武で行くような場所では無いので割愛します)出向くわけです。これが例えば関西にお住まいならばこのポジションは大阪(あるいは京都や神戸)になりますし、九州にお住まいならば福岡、韓国の京畿道にお住まいならばソウル……と言った街になるでしょう。この”所用”には様々なパターンが想定されますが、例えばショッピングであったり、あるいはビジネスと言った用事が考えられます。仕事の都合で、あるいはインターパークやベルモール(いずれも宇都宮の大型ショッピングモール)で揃えられないものを買うための休日のお買い物といった”所用”のために、北関東から一番身近な大きな街である東京に出向く人は実に数多くいます。もちろん他地域でも「どうしても日本最大の都市である東京にしかないもの」を求めて東京に出向く方もいらっしゃるかとは思われますが、北関東の人にとっての『東京』はもう少しカジュアルで身近な存在です(とは言えめったに東京に出向かない人、東京に行くことが一大イベントの人、そもそも東京行きの電車の乗り方がわからない人も確かにいらっしゃいますが……)


前置きが長くなりましたが、こうした”所用”を済ませるための都市として『東京』を見たとき、かなり失礼な表現をすると浅草には大きな魅力がありません。仕事の都合で行く『東京』は八重洲に大手町に新橋に西新宿……と言った場所ですし、ショッピングのために行く『東京』は新宿に池袋に渋谷に銀座に原宿に表参道、はたまた電子工作が趣味の私の親父は休日になるたびに宇都宮からはるばる秋葉原の電子部品ショップに出向いていましたが、とにかくそういった場所です。いずれも浅草では無いですし、ここまで触れませんでしたが(デカいマルイがあるだけ浅草よりマシとは言え大宮で事足りるような気もする)北千住でもありません。”所用”のため大手町や池袋に行きたいのに浅草で放り出されても途方に暮れてしまうわけです。もちろん浅草にしろ北千住にしろ地下鉄に(あるいは都バスに)乗り換えれば良いだけの話ではありますが、乗換の難易度も(少なくとも東京の人に比べそこまで都内の電車に乗り慣れていない北関東の人からしたら)少々高いですし、時間帯によっては通勤ラッシュの人波に揉まれないと『東京』にたどり着けません。せっかく地元の街からの特急のチケットを買って乗っても、そのまま座って『東京』まで(あるいは『東京』から座って地元まで)たどり着くことができないのであれば、それだけで特急の『快適な空間を確保できる』『東京まで直通するので乗換で迷わない』と言った魅力は半減します。そういう意味で、”所用”を済ませるという観点に限ればある意味『東京』では無い浅草と言うターミナルは、特に”所用”のために東京に出向く北関東の人にとってあまりにも中途半端です。

2.栃木群馬からの対東京輸送を担う宇都宮高崎線に比べて利便性がいまいちかつ車社会なのでJRが遠い地域からでも自家用車でJRに逃げられる

先述の通り、浅草と言う半ば『東京』ではない場所を行先にしている故に、北関東の人にとって東武特急の利便性は芳しいものではありません。この利便性の低さは特にショッピングのために東京に出向く際に大きく作用します。


さて、北関東から『東京』に向かうルートには東武特急のほかJRの宇都宮・高崎線の(特別)快速、それに高速バスと言った選択肢が挙げられます。このほか新幹線も挙げられますがこちらは所要時間的にも運賃的にも別格過ぎるので(実際問題、宇都宮から東京行きの新幹線に乗る人はかなり多いのですが)いったん無視します。


まず東武特急のスペックを簡単におさらいすると、桐生・太田・足利・館林の各都市からの「りょうもう」、日光・今市・鹿沼・栃木(※栃木県栃木市、宇都宮市とは全く別の街)の各都市からの「けごん・きぬ」の2列車がそれぞれ1時間に1本、浅草に向けて出ています。


宇都宮・高崎線の各駅に停まる普通列車はあまり早くないため、宇都宮・高崎線の沿線から『東京』へ出向く人は湘南新宿ライン直通の快速(宇都宮線)や特別快速(高崎線)の時間を調べた上でそれに乗ることになります。これも1時間に1本ずつです。


そして、高速バスは色々ありますが、東武特急と直接需要を食い合う路線は伊勢崎・佐野の各都市からのバスタ新宿行き(佐野からは東京駅行きもあり)。佐野発のバスの本数はやはり1時間に1本程度で、伊勢崎からのバスはコロナの影響で減便していますが、それでも午前中は頑張って1時間に1本程度は出しているように見受けられます。


こうしてみると一見すれば東武特急・JR快速・高速バスが1時間に1本程度出ており、特別に東武特急が不便に見える要素はないですが、実のところ東武特急にはここには見えない課題があります。


まず、先述の通り、行先が『東京』から大きく外れた浅草であること。特にショッピングのために出向く『東京』(先述の通り池袋・新宿・渋谷などの場所)は(銀座や秋葉原を除けば)ほぼすべて東京の西側に位置しており、東京の東のはずれに位置する浅草からだと所要時間や混雑、あるいは東京の地理に少々不慣れな北関東の人に路線網がまるでスパゲッティのごとく複雑に絡まった東京都心を横断させなくてはならないと言った点を考慮するとアクセス面で不利であると言えます(ビジネス街は割と東京の東側の、それも乗換がかったるいとは言え浅草駅を経由している都営浅草線でカバーできる場所にも多いのでまだマシなのですが)

東京の西側から浅草方面にアクセスする不便さを考えるために、一例として池袋辺りの地図を見てみましょう(Windows付属のペイントで雑に編集したので見にくかったらごめんなさい)

画像1

池袋から出ている路線を赤線で書きましたが、見ての通り池袋から南、北、西、そして南東に向かう路線は多くあるものの、あれだけ多くの路線が乗り入れるターミナル駅である池袋から東に向かう路線はほぼなく、特に北東へ向かう路線は皆無です。そして東武特急が通る場所、そしてターミナルの浅草や北千住はまさに東京の北東部。東武沿線から池袋に出るのは、それこそ西新井からバスで4~50分がかなり現実的な選択肢になるぐらいには至難の業です。池袋からバスに揺られて埼玉目前の西新井までようやくたどり着いたころ、湘南新宿ラインの快速はすでに埼玉も半分を超え茨城県や栃木県の姿が見えてきた久喜辺りを走っているわけですから、この辺に向かうのに東武特急(そもそも西新井には特急が停まらないので特急利用の場合さらに遠回りな北千住経由になるわけですが)を使うのは難しいことがわかります。この辺に関しては完全に主観ですが、池袋から西新井方面に向かう地下鉄を渇望する東武沿線民(特に東武特急の話からは外れますが埼京線に逃げられない草加市民)はかなり多いと思います。
また、詳細は略しますが新宿に関してもある程度似たような傾向が見られます。こちらは大江戸線や中央線・総武線が真東に向かうため池袋ほど極端ではありません(同じく北千住をターミナルのひとつとするつくばエクスプレス線からのアクセスは池袋に比べて新宿の方がはるかに良好です)が、これらの路線も(かろうじて亀戸で東武亀戸線と言うローカル線との接続はあるものの)浅草や北千住は通らないので東武特急からの乗換に適していないことには変わりありません。健脚ならば大江戸線の蔵前から浅草まで歩いて乗り換えできなくも無いですが、天候や荷物の量次第ではしんどそうです。

もう少しマクロな視点で見てみましょう。これもまたかなり見にくい編集で毎々恐れ入りますがご容赦ください。今度は東武線から乗り換えられる地下鉄を赤線で示しています。

画像2

これを見てみると、東武線から直通、または直接乗り換えられる地下鉄(日比谷線・半蔵門線・銀座線・千代田線・都営浅草線の5路線)はすべて青で囲った都心部(だいたい千代田区・中央区・港区らへん)を通り、最終的に東京の南西部(渋谷/中目黒・恵比寿/原宿・代々木上原/五反田・西馬込)へ向かうことがわかります。また、先の池袋の項目でも触れた通り、東京の北西部(池袋・新宿)から北東部(浅草・北千住)へ向かう路線はびっくりするほど手薄(南西部にはゴチャゴチャといろいろ書きこんであるにも関わらず、北西部の池袋新宿辺りは見事なまでにまっさらですよね?)なのがわかるかと思われます。

これは元々郊外の住宅地から都心部(東京の中心部から見るとやや南東寄りに位置します)にあるオフィス街へ向かう通勤ラッシュをさばき切るために、郊外と都心のオフィス街を結ぶ路線———正確には郊外へ向かう路線が通るターミナル駅→都心部→別の路線のターミナル駅と言う経路の路線———を大量に作ったので、北東部→都心部→南西部、あるいは北西部→都心部の路線は手厚いルートになったものの、一方で結果的に都心部に関係ない―――もっと言うといくら作ったところで都心の通勤ラッシュの緩和につながらないので混雑の緩和と言う観点からすると優先順位が低く、また池袋は繁華街としては立派ですがオフィス街としての規模はそこまで大きくない……と言うことを考慮すると、通勤ラッシュをさばくために池袋に線路を引っ張る必要性は薄いと言う意味合いが大きいです―――北西部→北東部の路線網が手薄になった……と言う経緯があり、東武がどうこうと言うより繁華街とオフィス街の役割分担をきっかけとした(特に休日の)実需要と交通網のミスマッチに起因する部分が大きいのですが、歴史的な経緯がどうであれ、東武特急を使って東京の北西部に行くのは面倒であるということがおわかりいただけるかと思います。
いちおう都内でも神保町や赤坂、人形町に錦糸町、もっと言うと浅草や北千住……と言った地下鉄などの路線網の都合で東武側からアクセスした方が都合の良い場所もなきにしもあらずではありますが、こうした街はどちらかと言えば少数派であると言わざるを得ないですし、より頻繁に行く機会がありそうな街はだいたいJRに乗った方が便利です。


これらを見ると銀座線や半蔵門線で1本の渋谷、北千住から千代田線で1本の表参道や原宿はまだ良いとして、新宿に行くのであれば蔵前まで10分少々歩かされるか赤坂見附まで遠回りさせられますし、地下鉄が通っていない新大久保ならば亀戸(まず亀戸に行くのがすでに面倒)から総武線で30分か常磐線経由、池袋に至っては「浅草(か特急が止まらない西新井)から都バスで4~50分」が現実的な選択肢になるレベルで鉄道網が整っていません。

また、比較的浅草方面へのアクセスが良好な渋谷からの所要時間を計算しても、渋谷から地下鉄で浅草にたどり着く頃には湘南新宿ラインの快速は大宮まで、そこから東武特急に乗り北千住に着く頃(乗換時間は無視)には久喜までたどり着いているわけです。これではいくらその先で弾丸や光のような速さですっ飛ばしたとしても追いつけるわけがありませんし、そもそも東武特急はせいぜいJRの快速と速度比べをするのが精いっぱいで、そこまで早くありません。高速バスにしても新宿~佐野と渋谷~館林(特急利用)がほぼ同じ所要時間ですから、”高速バスは遅いけど安い”と言う世間的な常識を少なくともこの区間では覆しています。このように東京を横断するのには案外時間がかかると言うことを考慮しても、浅草と言う立地はどうしようもなく中途半端である……と言えるでしょう。


一方でJR快速、湘南新宿ラインは池袋・新宿・渋谷を串刺しにしているので乗換のことを考慮する必要がないですし、高速バスにしたってバスタ新宿発着なのでそこからぶらぶらと歩くか、もしくはさすがに北関東の人でもみんな知っている山手線に飛び乗ればショッピングのために出向く『東京』には難なくたどり着けるわけです。渋谷や新宿でショッピングを楽しんだ後に目の前にやってきた電車に飛び乗って地元へ帰るのと、地下鉄に3~40分揺られて東京を大横断した後に特急に乗り換えて地元へ帰るのと、心情的に、そして利便性的にどちらを選びたくなるでしょうか。


なお、どうせ8時になったら店が閉まるこのご時世だとあんまり意味がないような気がしますが、JRは東武特急に比べて終電が2時間ぐらい遅いことをここに追記いたします。


と言っても、東武特急とJR快速と高速バスでは行先が異なるので地元に何が通っているかによって使い分けられるのではないか……と言うご意見もあるかと思います。確かに駅まで徒歩やチャリで行く前提ならばおっしゃる通りです。

しかしながら、北関東においては『車社会特有の駅勢圏の広さ』と言う要素を考慮する必要があります。すなわち、地元を通る交通機関が不便な東武特急であれば、隣町にある便利なJRの駅(や高速バスのバス停)まで車でかっ飛ばして(駅前の駐車場に停めるか、家族の誰かが送り迎えするかはさておき)しまえば良い……と言う考えが日本有数の車社会でほとんどどの家庭も自家用車を保有している北関東では成立するのです。そもそも市内に東武特急が通っていても、その停車駅まで遠ければどっちにしろ車で行かざるを得ませんし、そう考えれば隣町の駅に行くって言ってもちょっと運転する距離が長くなるだけですからね。伊勢崎からは本庄へ、太田からは熊谷や籠原へ、栃木からは小山や小金井へ、壬生からは小金井や石橋へ、鹿沼からは宇都宮へ……東武沿線の人々も自家用車をスイスイと走らせJRに飛び乗ることができます。もちろん、スイスイと走らせた後に駅前の駐車場に停めるか(パークアンドライド)、はたまた助手席に座る家族を降ろして家まで戻るか(要するに送迎)によって許容される運転距離は大きく変わるわけですが。また、先の伊勢崎からのバスは郊外のバス停に無料駐車場を整備しており集客に努めているなど、家からターミナルまでは自家用車+ターミナルから(運転も駐車場探しもかったるい『東京』までは)公共交通……と言う組み合わせが当地に広く定着していることがわかります。ちなみに、伊勢崎~本庄、太田~熊谷間にはまとまった本数のバスが運行されており、遠くまで運転しなくても両都市からはJRの駅にたどり着けるようになっています。


なお、東武特急の話からは外れますが、伊勢崎行きに比べて佐野行きの方がバスの本数が多いのは、本庄から高崎線に乗れる伊勢崎に対して、佐野はJRの駅(両毛線は考慮しません)から遠く、ほかに交通手段がないから……と考えるのが自然じゃないかなと思っています。単純にアウトレット需要が大きいからと言うのも理由ではあると思いますが。

3.両毛地区に拡がる中都市に向けてタコ足みたいに線路を引いたせいでりょうもう号が主要都市をカバーできていない

画像3

これは1・2に比べるとおまけのような要素ですが、特急りょうもう号は浅草から北上していき館林→足利→太田→桐生……と言うルートをたどっていきますが、東武線が通っている都市の中でも佐野や伊勢崎は経由しません。これは東武線の路線図を見ながら考えるとすぐにわかるのですが、佐野行きは館林で、伊勢崎行きは太田でそれぞれ枝分かれするので、桐生までの1本道のルートではどう頑張っても経由できない……と言うことが理由です。まあ、今更伊勢崎や佐野まで特急を通してもさして利用者は見込めないような気がしますし、JRへのアクセスが悪い足利と桐生をまんべんなくカバーできると言う面で理にかなったルート設定ではあるのですが、なんだかちょっともったいない気がします。実のところ、「途中駅での切り離しができる新型特急車両リバティが誕生します!」と言う一報を聞いたときは、「浅草から佐野・桐生・伊勢崎(ひょっとしたら大泉)へ車両を切り離しながらそれぞれ直通する列車が安定して運行されるようになるのかな?」なんてちょっと期待したりもしたのですが、今のところそういう噂は全く耳にしません。


しかしながら

さて、こんなことを長々と書いてきましたが、実のところ私自身が(そして私の実家が)上述の通りだと明らかにJRの方が便利な宇都宮出身であるにも関わらず、敢えて東京から東武で宇都宮に乗り込むことが割と頻繁にありました。主に以下の理由です。

1.運賃が安い。

そうなんです。運賃がむちゃくちゃ安いんです。都内から宇都宮だとJRなら普通列車でも2000円近くかかりますが、東武線(特急未使用)ならば1200円程度で宇都宮までたどり着けるわけです。金欠学生の頃は特にありがたみが身に沁みました。また、”東武東京メトロパス”と言う宇都宮から浅草までの往復運賃に10円を追加するだけで地下鉄(東京メトロ)の乗り放題が付く実にぶっ壊れた切符があり、これも日帰り往復では度々お世話になりました。まあ、日帰りだと青春18きっぷをいい具合に消化できる自信があるならそっちのほうが安かったりもするのですが……。

2.電車がすいている。

前述の通り、何せ東武線はお世辞にもあまり利便性が高いとは言えませんが、その分全体的に空いています。また、通勤ラッシュも宇都宮線に比べると程度が知れていますし、浅草から乗る人が少ないためうまいこと浅草に滑り込めれば夕方でも快適です。どうしても座れなさそうなら特急に乗れば良いわけですし、宇都宮線のグリーン車と違って東武特急は指定席なので夕方に混み合う東京都心から栃木県内まで確実に座っていける手段が多い……と言う意味では貴重な交通手段でもありました。これでターミナルが浅草じゃなければなぁ。
なお、宇都宮→東京の向きだとJRの車両数が多い(15両編成)上にほとんどの列車が宇都宮始発なので、よほどのことがない限りJRでも不安なく座ることができます。土日のグリーン車なんかは案外混んでたりしますが……。

3.駅がすいている。

これも前述の通り、北関東では家族が自家用車で駅まで迎えに行く……と言う行動が日常的に見られますが、宇都宮から東京都内に向かう人の大半は新幹線か宇都宮線に利用し、それらはいずれもJR宇都宮駅を発着しています。東京行きの高速バス(各地発の高速バスは郊外のバス停から客を拾い集められますが、JRはそうもいきません)が無い故に市内の大半の人が宇都宮駅まで出向くこと、宇都宮線の隣駅の雀宮駅がやたらと遠く市内でも使える地域が限られることなどから当然誰も彼もJR宇都宮駅に出向きます。そのため、時間帯によっては駅前ロータリー(宇都宮駅は宇都宮都心に近いためこれ以上の拡張は難しいです)に車が折り重なり人を降ろすのにも苦労するようなすさまじい混雑に見舞われます。当然ですが電車が来るまで待たないといけない分”乗せる”方はもっと大変です。一方、東武宇都宮駅なら誰も使わないのでいつでも快適です。
個人的に都心のど真ん中にある駅に利用者と送迎車が集中する都市構造はちょっとどうかなと思いますが、郊外に送迎や駐車スペースを確保できる乗換拠点を作るにしろ郊外の住宅地から都心へ向かう市内交通を充実させるにしろそれなりに手間もかかるので悩ましいところです。

4.長時間の移動が苦にならない。

これはもう……そういう特異体質なので……大阪に住んでいた頃なんて青春18きっぷで12時間かけて帰省とか普通にやってましたし……。

以上、いったんここで筆を置きますが、また気が向いたら追記する……かもしれません。特に定量的な数値データだとか土地勘が無い人向けの地図情報だとかが明らかに不足しているため、やる気が出たらまた書きます。

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