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色んなことをやっていると思っていたら、色んなことができなくなっていた

今の職場でも、前の職場でも「営業組織に属するエンジニアっぽいことをする」という役割で雇われている。数年前、プログラマーとしては評価されないけれど、開発組織と別の組織を結ぶ役割として重宝されることに気づいた。私が両方の組織の機能と制約を理解したうえで、問題解決に必要な、あれやこれやを、なんとなくまとめることを評価されているのだと解釈している。

そんなわけで色んなことをやるようになった。ソフトウェア開発側として簡単なコードを書く、デバッグやテストをする、おおざっぱな設計を提案する。広告プランニング側なら、画面遷移をまとめる、ユーザーの態度変容の仮説を立てる、など。あるいは、要件と呼ばれる雑なウィッシュリストから、ユースケースを定義し直すこともある。

最近、自社製品の勉強を兼ねて久しぶりにコードを書こうとして、びっくりするぐらい書けなくなったことに気づいた。私はソフトウェア開発者と話すとき、「私はコード書けるんですよ」と自己紹介しないようにしてる。昔コード書いてたけど、今は別の仕事をしている人の「コードを書く」行為と、現在の開発現場における「コードを書く」には乖離があって、現場側から聞いていると、分かってないのに分かった風の態度を取られるのがムカつくんじゃないかなぁと思うからだ。それはさておき、あるいは、それにしてもと言うべきか、自分がコードを書けなくなっていてびっくりしている。カウントダウンタイマーに一時停止ボタンをつけるのに、数時間かかって、最初何が起こったのか分からなかった。

あるいは。

文章を書く趣味のグループで、新刊を出すことになり、宣伝のアイデアを出した。制作して実施したけれど、鳴かず飛ばずでびっくりしている。いや爆発的にバズるなんて思っていなかったけれど、それにしても、という反応のなさである。

この数年、色んなことを薄くやるようになった。いや、やる人は別にいて、私は彼らの間をとりもっていただけだった。組織で仕事をするときには、とても重要で価値ある役割だと思っているけれど、自分が個々のタスクをこなしていた気になっていたのだなぁと驚く。色んなことをやっていたつもりだけど、やってなかった。だから、長い時間の間に色んなことができなくなっている。

何かを得る代償に、何かを失っていくのは仕方ないけど、自覚的でありたい。引きこもり生活に文句を言われない、という環境を享受している2ヶ月間で、ゴミを出しただけで膝が痛くなるほど足腰が衰えていて、これまたびっくりしている。

(Photo by Sarah Kilian on Unsplash)

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