星をみるひと発売日問題と仮説にいきつくひと

「【星をみるひと】の発売日が違う!」

そう判明してからしばらくは裏で探し回りましたが、結局成果が出せず最後の手段としてとっておいた「SNSで拡散を呼びかける」を採用しました。
その反響はついたRTといいねが示すところですが、実際のところどれほど核心に迫れたかをまとめます。

そもそもなぜ1987年10月27日表記が広まったのか。
これは理由としては簡単で、そうホット・ビィ自身がゲーム雑誌を始めとするあらゆる媒体に宣伝を流していたからです。
【星をみるひと】は発売日が何度も延期された痕跡があり、現状辿れている最古の情報が載っているファミコン通信1987年8号(4月17日号)では、7月予定と表記されていました。ちなみにこの頃は【サイキック】という仮題が与えられており、まだ【星をみるひと】というタイトルすら決まっていなかったようです。

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そこからおおよそ一か月刻みで延期を繰り返し、発売前に配布された公式のチラシでは10月初旬予定と記載されています。(画像はチラシの拡大図です)
余談ですがホット・ビィは自社タイトルの多くに専用のチラシを用意しており、デザインの妙や宣伝文句の巧みさに広告代理店としての手腕が存分に発揮されていると感じられます。

そんな中で、とうとう発売日がばちっと告知されるタイミングがやってきます。

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ファミリーコンピュータマガジン1987No.17(10月2日号)を筆頭に、ファミコン通信などのゲーム誌、果ては問屋向け情報誌の玩具商報にも10月27日予定と告知が載りました。どれも10月初旬発行の雑誌です。
「発売開始決定」という文言に、何が何でもだすぞ!!! という確固たる意気込みを感じます。

しかし現実はどうだったのでしょうか。

発売日

社内資料として保管されていた情報では、1987年11月18日という全く見覚えのない日付が刻まれています。
他にもずれている記述がないか探しましたが、コンシューマタイトルでは【星をみるひと】以外は周知された発売日に違いはありませんでした。
ともすれば、11月18日を裏付ける為に社外でホット・ビィ以外が発信した情報の中に同様の表記がないかを探すほかありません。
それを突き止めるためのSNS拡散でした。

そしてその表記は実在したのです。

すぐさま現状唯一確認できている11月18日表記の資料「ゲーム年鑑1987」を手配し、現物を確認。
間違いない。外部でも確かに11月18日を裏付ける資料はあったのだ。

いや、待てよ。
いったいどのタイミングで気付いて修正をかけたんだ?

ファミ通のバックナンバーは複数の方から情報を頂き、こちらでもいくつかは調べてみたのですが、少なくとも雑誌掲載分では10月27日発売予定で表記が続き、クロスレビューが掲載された号以降は発売日の表記すらなくなります。これも理由は明確で、その頃には発売済みのタイトルという扱いに変わったからです。

ではゲーム年鑑以前の、発売以降のタイトルが収録されたカタログではどうだったのでしょうか。

そこをたどる有力な情報がこちらです。
オールゲームカタログが1991年4月30日発売に対して、ゲーム年鑑1987は1992年の9月7日です。少なくとも1年半前まではそれまで周知されていた10月27日で通しています。
このゲーム年鑑が作成できるほど膨大な情報を蓄えていたファミ通です。データ作成においても編集部内でアーカイブした資料を元手に構築をするはず。
しかも他の有名タイトルならばともかく(ある意味有名だった?)「星をみるひと」をわざわざ調べ直してゲーム年鑑に反映させたとなると、相応の動機付けがないと不自然ではないでしょうか。
この約1年半の間に情報が書き換わっていたということは、ゲーム年鑑にあってオールゲームカタログにない情報がカギではないかと考えました。

そして考えた結果、一つの仮説にたどり着きました。
ここからは想像がこもった仮説ですので、その点をご了承の上で読んで頂ければと思います。

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ゲーム年鑑シリーズは他の資料と一線を画する情報として、ファミ通編集部が独自に集計を続けていた各ランキングのデータが記載されています。
これはオールゲームカタログに載っていない情報がいくつも入っているのですが、その中で僕が注目したのは①売上ランキングの項目です。
このゲーム年鑑の情報をまとめる際に、当時ファミ通で取った記録を再度辿り直して数字を入れていったのではないでしょうか。
そして発売日と告知されていた10月27日からおよそ三週間、一本も売れていないデータが出て来たのではないか。
どんなマイナータイトルであろうが、いくらなんでも一本も売れてないことはないはずです。特に当時はRPGブームの真っただ中で、旬のジャンルが売れなかったとは思い難いところです。(そのゲームがどんな内容であっても……)
一本も売れていないのは流石におかしいと、この時の編集者がホット・ビィか集計を取っていたショップに確認をしたところ、実際に店頭に並んだのは11月18日だったと判明したのではないか……と仮説を立てました。
これが正しいのかどうかはもはや当事者でしか知りえないと思いますが、動機としては妥当かなと思います。
なんにせよ、ゲーム年鑑シリーズを作成するにあたって既存情報のコピペなどでなく、本気で諸情報と向き合った当時のファミ通編集部には頭が上がりません。

最大の裏付けとなるであろう「なぜ二十日も発売日がずれたのか」に関しては現在も調査中です。
その経緯については最終的に、今後のまんだらけ大オークション目録ZENBU内の連載「RESTART」で可能な限り詳細にまとめる予定ですが、情報拡散にご協力いただいたすべての方への返礼として、ひとまず成果発表とさせて頂きました。
隔月誌である都合上、反映に暫くお時間がかかります。掲載号が決まりましたらこのnote及びTwitterにて告知いたしますので、その宣伝が目に留まりましたら、本件の事を思い出して頂ければなと思います。

貴重な情報の多数を寄せてくださいましたゲーム団塊198X(仮)さん(TwitterID:@gt198X)をはじめとした、本件にご協力くださいました皆様。
本当にありがとうございました。


追記
本件は2020年4月14日現在でも真実と言える核心にたどり着いていません。
「いいや、確かに10月27日発売だった」という証言も含めて、現在も情報を求めて調査中です。
本件でお気づきの点がございましたらご意見を頂ければ幸いです。

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