星をみるひと発売日問題と仮説にいきつくひと の進捗

あれからそろそろ三か月。

はじめに申し上げると前回以上の決定的なエビデンスは出てきておりません。有志からの協力もあり、相当数な情報が揃いつつありますが、現在でも11/18表記の資料はゲーム年鑑ただ一冊のみです。

では何が目的で今回の記事を書くのかというと、推論に一点誤りと言いますか、訂正すべき点が見つかったからです。
以前の記事でゲーム年鑑のみが公式資料とデータが共通しているのは「発売本数の調査で10/27説ではつじつまが合わなくなり調べ直したのでは」と推論を立てました。
しかしこの時大事な点を見逃していまして、発売日問題を抱えているタイトルは【星をみるひと】だけでなかったわけです。そのほかのタイトルの洗い出しを行っておりませんでした。

代表例として【ファンタジーゾーン】を挙げます。
僕自身先の発売日問題提議へのリアクションとして、同作がアナウンスされていた発売予定日と実際発売した日に数日のずれがあったことを教えてくださった方々がいらっしゃいました。

申し訳ないことに【ファンタジーゾーン】の発売日がどのタイミングでメディア媒体にて訂正されたかは追い切れていないのですが、少なくとも件のゲーム年鑑では正しい発売日である7/20の記述になっています。
この他にも発売日問題を抱えたタイトルの存在を伺い、それも現状正しいだろうとみられている日付がゲーム年鑑に記されていました。
(該当のタイトルは現在研究されている方々がおり、その研究が形となりましたらこちらでもご紹介したいと思います!)

これらの事実を組み合わせると、「ゲーム年鑑は発売日などの情報を各メーカーから取得し直して校正したのではないか(ファミ通掲載時の情報のみを頼りにしない方針だったのではないか)」という新たな推論が組みあがります。
「いやいやそんな面倒な事するか?」と思う気持ちも最初自分の中に沸きましたが、よくよく考えてみるとメーカーが保管している情報=正確な情報と見なすのは明快であり、アスキー内でアーカイブしていただろう情報で組み立ててから各メーカーに正誤の校正を依頼するよりも、最初からデータを貰っていた方が作業が簡便になります。
この点はゲーム年鑑が他の資料とは一線を画する情報強度である裏付けともなり、年鑑と謳うだけあって相応の意識の下で制作されていたことが伺えます。

ここで新たな疑問として「任天堂監修などと書かれている資料本で訂正されていないのは何故だ」という点が湧いてきますが、そこは監修の体制や監修元がソースとしている情報の確度が分からない以上、何とも言えない所です。
しかしお話を伺う限りでは告知した発売日にゲームが出せないと何らかのペナルティが発生したようで、それをかわすためか単純に申告が漏れていたか、任天堂側にホット・ビィが正しい発売日情報をあげずにいた可能性もあります。
(ちなみに関係者証言では「発売延期が決まっても当時の入稿体制では先に提出していた広告の修正が利かず、訂正する前に発売日を迎えてしまった可能性が高い」との見解でした。)

任天堂の資料で10/27発売と表記されているとすれば、そう表記しない文献の方が稀でしょう。
こうしたゲームのアーカイブが盛んになったのは、雑誌記事のまとめ以外ですと少なくともホット・ビィが倒産した93年よりも後の流れで、公式に問い合わせることが困難でした。
一応同じ代表者名義で設立されたスターフィッシュ・エスデイに問い合わせれば食い違いが判明したかもしれませんが、そもそも周知されきった発売日を疑う方が難しいと思います。
自分自身、内部資料を拝見するまではここまで発売日が食い違うとは夢にも思いませんでしたし……。


進捗記事ではありますが、今回の結論としましては「ゲーム年鑑の情報は他の書籍と比較しても精度が高く、資料として一級品」であると締めくくりたいと思います。
仮に10/27が正しかったとしても、各メーカーに情報を問い合わせて組み立てるという工程を踏んでいたことは間違いなさそうなので、書籍を作る体制として一線を画していたといえます。
もしかすると、まだまだ一般に流布されている情報とゲーム年鑑で洗い直された情報とで、食い違う点がどこかに埋もれているかもしれませんね。ゲーム研究好きとしては欠かせない存在として再評価されることを願います。

次回はホット・ビィという会社についてちょっと詳しく掘り下げたいと思います。どこまで詳細化するかはまだ決めていませんが、結構カロリーの高そうな内容になる予感ですので、間で別の記事が挟まる可能性が高いです。のんびりお待ちいただければ……。

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