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心躍らせる男

スピナーズとフィリップの中古CDを入手してライナーノーツに目を通した。何れも“スピナーズ愛”“フィリップ愛”溢れる言葉で綴られており目頭が熱くなる。

それでもフィリップの“不遇ぶり”にはひと言物申さずにいられない。ミリオン連発のスピナーズ時代にあっても彼を賞賛する言葉は殆ど無かったとか…。“スピナーズ”というグループ名はモータウン(キャメロン)時代のインパクトが強く、フィリップのリードシンガーとしての評価はいまひとつだったらしい。
でも、それこそがフィリーソウルのグループに生まれ変わったスピナーズの真骨頂なのでは!? シャウト系のリードシンガーが引っ張るのでなく、あくまでハーモニーで聴かせるスタイルを貫いていたのだから。フィリップを評価していないライターが節穴なのではなく、非常に精巧なスピナーズ(トム・ベル)の戦略を見破れなかったものと推察する。現に自分も聴き始めてから二十数年の時を経て漸く分かって来たので(遅過ぎ…

モータウンとの契約が切れて、元々モータウンに在籍していたキャメロンが抜け、スピナーズは一度“無”に還る。
そんな苦境にあって、従兄弟であるキャメロンの推薦を受け、オーディションでボビーが“ひと耳惚れ”したのが七色の表現力を持つフィリップ・ウィン(天才)。新生スピナーズの誕生に「よっしゃ」とプロデュースを買って出たのがフィリーソウルの生みの親であるトム・ベル。精力的にライヴ活動を展開する彼等をアトランタ・レコードへ誘ったのがアレサ・フランクリン。役者が揃ったところで快進撃は始まる。

「It's A Shame」に関してはオリジナル・シンガーであるキャメロン以上の表現者は居ない。
同様に'72〜'76年のフィリップのオリジナル・パートに関してはフィリップ以上の表現者は居ない。これに尽きる。

ライナーノーツの筆者はフィリップを三指に入る“心躍らせる”シンガーと絶賛。それは当時の映像からも伺える。マイクスタンドからマイクを外したフィリップがステージを縦横無尽に歌い歩くと、釣られて客席からステージへ上がる観客の多いこと。警備やメンバーの制止を振り払って一緒にステップを刻み続けるフィリップは、まるでハーメルンの笛吹きのようだ。若しくは“歌のおにいさん(おじさん)”w 心底リアルタイムでステージが観たかった!!!

尚、観客をステージへ上げたり自ら客席へ下りるスタイルは古今東西危険が伴うので、興行主やメンバーは常にハラハラしていたに違いない。フィリップはここでも(ある意味)心躍らせているw