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元気がなければ普通でいられたらいいのに

なにがつらいわけでもない。生活面で困ってることもないし。ただ、外に出なくなった。

ゴミ捨てがなければ玄関のドアを開けないこともザラだ。もともとない食欲もいよいよないから、買い物も週2回以下だ。今日は光熱費の支払いに行かなきゃだからこれからコンビニ行くんだけど行きたくない。

川沿いの公園の、遊べないようにテープを巻かれて封鎖された遊具とか。

にわかに増えた市民ランナーが軒並みマスクをしてる姿とか。

そういうものに少しずつ精神が削られてるんだとおもう。幸い、家のまわりの環境はよくて、庭木の若芽が一雨ごとに美しく伸びていくのや、野鳥がさえずってるのを見たり聞いたりしてると安らぐ。鳥があんなに色々な鳴き方をするのは知らなかった。お隣の藪にさえずり方がまだちょっとあやしい子がいて、

「ピィ~チョンチョン、
 ピィ~~チョンチョンチョンチョン。
 ピィ~っっ……ピィ~チョンチョンチョン!」

とか試行錯誤してるのを聞いて、わるいとは思うけど笑ってしまう。一生懸命でいいなぁ。

昔、こんなことになるずっと前だけど、友達に久しぶりに連絡をとった時に「元気?」と尋ねたら「普通かな」と即答してきた。YESもNOも言わない、やや人を食ったような態度に「ああ、そういえばこういう奴だった…」と懐かしく呆れて、でも「YES/NO」以外の答え方があるんだなと、妙に関心した。

なにがつらいわけでもない。生活面で困ってることもないし。この状況下ではかなり恵まれている。誰に何を恵まれたのかはよく分からないけれど。ただ、「元気?」と聞かれてYESと答える元気はない。

まあいいや。好きなだけ家にいよう。体力は落ちたらまたあとで拾えばいい。今は鳥の声を聴いてるのがいちばん愉しい。