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きずもの

皮膚科でおできを取った。最初に行ったクリニックでは「ああ、これほっといていいやつよ〜」と朗らかに言われたのでほっといたのだけど、段々痛みがでてきたので別のとこで再度診てもらった。

みせるなり「え。」と黙りこくるので何かとおもったら「これは…あの〜ほっといていいやつじゃないと思うよ…?」と血相を変えられて、そんなわかりやすく変えなくても…と可笑しかった。その日のうちにサクッと取ってもらい6針縫った。「万が一、悪性だったらまずいから」と病理検査にも出してくれた。去年、身の回りで癌の闘病をしている人が何人もいたので「取ってみないとわからない」というフレーズに慣れててよかった。先生より私のほうが動揺してなかったと思う。

結果が出るまではくよくよ考えてもしかたなくて、どうせ考えるならと医療費の工面の仕方を調べたり(医療費ローンという単語を初めて知った)久しぶりに大野更紗さんの「困ってるひと」を読んだりした。凄まじい症状に次から次へと見舞われる壮絶闘病記なのにめっちゃ笑える。けっこう元気になった。

皮膚を切ったり縫ったりするのが生まれて初めてだったので、怖さよりも好奇心のがまさって落ち込んだりはしなかったんだけど、抜糸するまでお湯に浸かれないのと、傷が塞がるにつれて糸が擦れて痛くなってきたのには辟易した。抜糸前の数日間は仰向けになれず寝不足が酷かった。

抜糸が済んでしばらくすると糸の通ってた穴も塞がって、何も気にせずゴロゴロしても平気になった。病理検査の結果は「皮膚繊維腫」というコラーゲンの塊だったとのことで、ほっといてもいい系のものらしい。なーんだ。

大事にはならなかったけど、いい経験になったし、縫いあとは親指の腹くらいのサイズの赤い痕になった。傷モノという概念を忌みきらうひともいるけど、一方で古来日本には「完璧なものには邪が寄ってくる」という考え方もあるらしい。私は少しくらい傷のあるほうが箔がついて好きかもしれない。