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次男の待っていたもの

小雨が降る夕刻、私は次男の待つ保育園に自転車でお迎えに行った。
今年の冬は暑かったり寒かったり気温が極端だ。今日は朝からずっと暗い雲が立ち込めていたせいで、寒い1日だった。
次男のクラスの扉を開けると、室内の暖かい空気で、私の冷えて強張っていた指先が安心したように解けてゆく。
次男はちょうど保育士と一緒にトイレで着替えをしていたようで、目が合うと嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
明日の着替えなどをロッカーに準備し、保育士から日中にあったアクシデントの報告を受けている間、着替えの終わった次男は、大きな窓からじっと外を見つめていた。

「どうしたの?」
話を終え、そろそろ帰ろうかと声をかけた私に気をかけることもなく、次男はずっと外を見ている。
「おーい、帰るよー」
もう一度声をかけると、次男がポツリと言った。「まってるの」
「待ってる?何を?」
「こーんなやつ」
次男は大きく手を広げてると、左から右へと弧を描くように動かした。
「まだかな、まだかなぁ」
そして、今か今かと待ち侘びている。
その手の動きで、ピンと来た。

それは、先週のことだ。昼の短時間だけ雨が降った日があった。その日のお迎えの時、先生が教えてくれた。
「雨が上がった後、ここから大きな虹が見えたんですよー!」
私は全く気づかなかったので、どれくらいすごい虹だったのかはわからなかったのだが、それを見た次男はとても喜んでいたらしい。
「おかーさんもみた?」
「ごめん、見てなかったよ」
「また、みれるよー。いろんないろのやつ!」
次男はそう言って、帰り道の自転車でもずっと虹を探していた。

そう、虹だ。
「次男ちゃん。虹待ってるの?」
「うんうん。こーんなの!」
もう一度、同じような手振りをする。
「うーん、今日はまだ雨降ってるから虹は見えないね」
「まってればみれるよ!」
残念ながら、今日は暗い雲が晴れることがなさそうなので、虹が出る見込みはなさそうだ。まだ見ていたそうな我が子を抱き上げる。
「また今度、虹が見えたら教えてね」
「うん、わかった」

そして、私は今日も子供を乗せて自転車を走らせる。
自転車に乗る日はやはり晴れている方がいい。だけど、小雨くらいなら自転車でお迎えも悪くないだろう。そして、今度は小雨の後に晴れ間が見えたらいいなと思う。
今度は、こんな子どもの嬉しそうな声が聞きたいから。

「おかーさん、いろがたくさんあるよ!」


みんフォトより画像をお借りしました。88can88様ありがとうございました∧∧


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