見出し画像

ソバコニアン・ラプソディ

蕎麦屋の出前がフラフラ走ってきたので、おれは反射的に頭を撃ち抜いた。純白の作務衣がもんどり打って倒れ、人混みから悲鳴が上がる。

「落ち着いて!警察です!」嘘だ。倒れた蕎麦屋に近付く。「危険ですから近寄らないで!」これは本当。

岡持にはざる蕎麦が二枚。見るだけで肌がざわつく。おれの顔に飛び散った顔の欠片もZGZGと熱を持って痒い。

近くに居たヅヂが駆け寄り、岡持に速乾セメントを流し込んだ。手際が良い。
「ねえ、顔に付いてる」
ヅヂが顔を寄せて、おれの顔の付着物を無造作に舐めとった。
「赤くなってるじゃない」

「親方に怒られるゥ」
頭を破壊された〈ソバコニアン〉がなおもおれの腕を掴む。こいつらは全身が蕎麦粉だ。おれの肌は瞬く間にアレルギー反応を起こし、ZGZGと赤く腫れていく。
「活きがいいね。新粉かな」ヅヂがすぐさま蹴り飛ばした。
ZGZGZG…疼痛におれは顔をしかめた。
「ヅヂ、テルミットを」

【続く】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?