FKQ2SS 澄み渡る空 part6
※キャロライナ視点part1から順にお読み下さい。リンクはこちらから。
※この記事は「Fate/Killer Queen II」に登場するキャラクター、
余四朗とキャロライナに関する視点交換式のショートストーリーです。
上記村のネタバレを含みますのでご注意ください。
◆◆◆
目を合わせてきて、はっきりとそう云うたきゃろるは。
初めて会ったときとも、助けて、と泣きついてきたときの目とも違う、
この『特異点』が閉じた後の、
『先に見える光』を見据えている目に見えた。
決意を決めた目の色じゃ。
『ここ』から戻ることになっても、もうきっと大丈夫じゃと、そう思えた。
『所持品を含めた今の状態で、レイシフト前の場所に戻して欲しい』、
そのことを聞いて、気が付いたのはきゃろるの傷跡。
最初に会ったときにも同じことをしちょうたな、と思いながら、
きゃろるの左手をそっと取り、丁寧に布を巻いていく。
お互いに口にはしなかったが。
別れが辛くないか、と聞かれたら答えに詰まる。
それはきっと、きゃろるも同じことで。
いつまで『ここ』に居られるかも分からん以上、
少しでも、おんしのことを守ってくれるものを、と。
そこまで考えてふと、乞われていたものについて思い出す。
どのみちこれから死ぬほかない身じゃ。ちょうどええ。
「この刀に魔力を込めて、おんしに渡しちゃる。
世界でただ一振りの、わしの生きた証じゃ。
身体が持って行かれようが、魂が持って行かれようが。
志士の『心』っちゅうんは、刀に宿るがじゃ」
込める心は、唯一つ。『きゃろるを守って欲しい』という一念。
殺すための道具を、活かすためのものに変えるため。
刀に魔力を込めるのは初めてのことじゃったが、
工程を間違えさえしなければ、ほんの少しであっても、
そこらの数打ち刀とは一味違うものになるはずじゃきに。
そんなことを考えながら、一心不乱に刀に魔力を注ぎ込み終え。
一息吐いたところで、魔力切れ特有の眩暈が来よった。
「……ちくとばかり、疲れたの。
なあ、きゃろる。膝枕をしてもらっても、ええかの。
少しだけ、休むき。
なに、大丈夫じゃ。わしの心は、ずっと、おんしのものじゃき」
そう云って、『そふぁ』に腰を下ろし。
隣に来てくれたきゃろるに抱き留められ、そのまま膝に頭を落とす。
意識が途切れかけるのを感じながら、ゆっくりと目を閉じる。
◆◆◆
そろそろ、この『特異点』の消滅も近い気がする。
じゃが、こうやって好いちょうおんしと、最期を迎えられるっちゅうんは。
まっこと、幸せなものじゃな。
もうじき、お別れじゃ。
おんしに出会えて、良かったと思うちょる。
わしは天下一の果報者かも知れんのう。
じゃから、おんしにも。
幸せになって欲しいと、そう願っちょるよ、きゃろる。
◆◆◆
※キャロライナ視点part7へと続きます。リンクはこちらから。
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