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咲かせられるか、もう一花。

 流れる季節の真ん中でふと日の長さを感じる3月9日。タガノパッション、中山牝馬Sに出走。未勝利戦からの連勝でスイートピーSを制し、道を切り拓いたあの日から2年と10ヶ月。この間勝利こそ挙げられていないが、オークスでは10番人気ながら4着と健闘し、3勝クラスでは2着1回、3着は実に7回と実力は示してきた。そして、年明け初戦・格上挑戦で臨んだ愛知杯で2着と好走し念願のオープン入りを果たす。この愛知杯をテレビ観戦していた当時の私はインフルエンザに罹っていたが、タガノパッションが上がってくると「差せーー!!」と叫んでいた。正直、初ダートのトルマリンSで6着に敗れた際には「もう引退かもしれないな…」と思っていただけに愛知杯でタガノパッションらしい末脚を見れたことはなによりも嬉しかった。小倉大賞典を除外になり、次走が中山牝馬Sであることが分かると、急いでスケジュールを確認。奇しくも予定は入っていなかった。「これならタガノパッションを初めて現地で応援できる…!」よって幸運にも、私はタガノパッションと夢を描くために中山競馬場へ足を運ぶことができたのである。

パドック入場直後のタガノパッション

 パドックでのタガノパッションは適度に気合いが乗っていた。馬体のハリも悪くなく、状態は良さそうだ。人気はあまりなかったが、オークスで対戦した経験もあるククナや同じく同世代のフィアスプライドにも対抗できるはず…。確かな自信を持ってパドックを後にした。
 中山牝馬Sの観戦場所は指定席でも、ウイナーズサークル付近でもなくレースのスタート地点にすることに決めた。ここならレース直前の出走馬の様子がわかるからだ。タガノパッションは時折チャカつく仕草を見せていたが、このくらいなら問題なさそう。そして、いよいよ15時45分、発走時刻を迎えた。

輪乗りでのタガノパッション
最内枠から重賞獲りへ

 好スタートから中団につけたタガノパッション。欲をいえばもう一列前が理想だったが、ペースが流れれば問題ないだろうと思っていた。しかし、レースはスローペースで流れていく。1000mの通過タイムは61.5。思わず「遅すぎる…」と声が漏れると同時に、近年稀に見るスローペースで流れたあの根岸Sが脳をよぎった。その後4コーナーでは行き場を失くし、後方4番手で直線を迎えたタガノパッションは馬場の悪い最内から上がり最速の末脚を繰り出すも6着まで追い上げるので精一杯。今回は緩い流れながらも上がりがかかる(タガノパッションの上がり3ハロンが35.5)という特殊なレースで、この馬には向かなかった。展開や馬場の助けが求められるが、うまく噛み合えば愛知杯のように重賞でも好走する力はある馬。6歳春、現役生活もあと僅か。繁殖牝馬としての期待もかかるタガノパッションだが、競走馬として残された時間のなかでもう一花咲かせてほしいところである。


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