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34戦目、激闘の果て…

この1週間はふとした瞬間にタガノビューティーのことが思い浮かび、空いている時間はフェブラリーS出走馬の最新情報を調べていた。今年最初のGIレース、それもタガノビューティーが出走となってはかかり気味になってしまうのも仕方がなかったのである。そしてフェブラリーS当日、足早に準備を済ませて東京競馬場に向かった。競馬場に到着すると、すぐさまCoCo壱番屋に足を運んでチキンカツカレーを注文。いわゆる「ゲン担ぎ」だ。その後は耕一路で名物のモカソフトを食べ、パドックへと向かった。

CoCo壱のチキンカツカレー
耕一路のモカソフト

パドックに到着したのは12時20分過ぎ。さすがに最前列とまではいかなかったが、2列目は確保できた。ここから3時間弱パドックで待機。しかしながらこの間、退屈だと思うことはなく、競馬が、馬をみることが生きがいになっているのだと再認識した。そして15時10分過ぎ、ついにフェブラリーS出走馬がパドックに姿を現した。パドックの表示板では10R・コパノリッキーCの映像が流れていたが、出走馬が入場するや否や多くの人がカメラやスマホを構えだし、シャッター音が一斉に鳴り出した。「イグナイター、シャンパンカラー、ミックファイア、ドゥラエレーデ。1枠、2枠だけを切り取っても凄い顔触れだなぁ」と改めて思っていると、ゼッケン番号10番が私の視界に入ってきた。

7歳にして初めてのフェブラリーS

タガノビューティーを現地で応援するのはこれで5回目だ。2022・2023年武蔵野S、2023年かしわ記念2024年根岸S。私が現地観戦したこの4レースにおけるタガノビューティーの最高着順は2着(2回)と一度も勝てていない。しかし「今日はきっと勝てるはずだ…!」といつも現地に足を運んでいる。もちろん、この日も同じ気持ちであった。そして、タガノビューティーが関東圏のレースに出走する際には、スケジュールを合わせて今後も現地観戦するだろう。7歳にして初めてのフェブラリーS出走となるタガノビューティーの様子はというと、時折チャカつく仕草を見せながらもしっかりと周回できていた。「前走の根岸Sと比べて毛ヅヤが良化、前肢の歩様は根岸Sよりも若干硬いかもしれないが、武蔵野Sやかしわ記念はこれで好走しており、心配ないだろう」という印象を持った。そして、騎乗合図がかかり、石橋脩がタガノビューティーに跨る。

石橋脩&タガノビューティー、25回目のコンビ結成

テン乗りとなる騎手もいるなか、石橋脩がタガノビューティーにレースで跨るのは今回で25回目。騎手のなかの誰よりもタガノビューティーを知り尽くしている男だ。頼れる鞍上を背にタガノビューティーは地下馬道へと向かう。出走馬がパドックを後にすると、パドックに詰めかけていたファンも移動を開始。私はウイナーズサークル付近へ移動した。本馬場入場では出走馬に対して大きな拍手が起こった。フェブラリーSの前に行われた京都メイン・大和Sでは、競馬場に大きな歓声が響き渡るなど、ファンのボルテージも高まっていく。そして15時40分、スターターが台上に立ち、今年最初のGIファンファーレが鳴り響いた。ファンファーレが終わるとこれまた大きな大歓声が巻き起こる。ゲート入りはスムーズに行われ、大外16番アルファマムが収まり、体制完了。スタートで出遅れ、後方からの競馬となった根岸Sのワンシーンが脳をよぎる。「頼む、スタート決まってくれ…」その願いは届くか、否か。第41回フェブラリーSのゲートが開いた。他馬の頭が見えたのと同時に西園厩舎のメンコが見えた。2歩目、3歩目で躓くこともない。これには思わず小さくガッツポーズをした。大一番で最高のスタートを決めたタガノビューティーと石橋脩は少し位置を取りに行き、後方4、5番手でレースを進める。そして、前半600mの通過タイムが表示されると東京競馬場にどよめきが起こった。ターフビジョンに表示されたそのタイムは「33.9」これはフェブラリーS史上2番目に速い600mの通過だ。こうなると差し・追い込み馬の台頭が十分にありうる。タガノビューティーにとっては願ってもない展開であった。勝負所の3・4コーナー、鞍上は内をうまく通してポジションを押し上げていく。4コーナーの通過時点で9番手。前を射程圏に捉えて直線を迎えた。残り400m手前で進路の確保に成功すると、タガノビューティーは鞍上のアクションに応えて末脚を伸ばしていく。残り200mで2番手に浮上。このときの私はというと、形振り構わず「ビューティー!!」と叫んでいた。その後も粘るペプチドナイルを懸命に追ったタガノビューティーであったが、ゴールを目前にして脚が鈍り、ガイアフォース、セキフウの追撃を食い止めることはできず4着でレースを終えた。

レースを制したペプチドナイルと藤岡佑介

もし、スタート後に位置を取りにいかなければ、はたまた追い出しのタイミングを少し遅らせていたら結果は変わっていたかもしれない。しかし、これは結果論に過ぎない。「勝利」を意識して積極果敢なレースを展開し、愛馬・タガノビューティーとともに死力を尽くした石橋脩は文句のつけようがない最高の騎乗を見せてくれた。このハイペースを外の4番手追走から押し切ったペプチドナイル、初ダートもなんのその2着に食い込んだガイアフォース、上がり最速の末脚を繰り出したセキフウは強かった。悔しさが全くないといえば嘘になるが、今年に入ってから最も感動したレースであったこともまた事実である。タガノビューティーと関係者の方には「お疲れ様でした、ありがとうございました。」と一言声を掛けたい。人馬が一丸となって挑んだ初めてのフェブラリーS。この経験はタガノビューティーを一回り大きくさせてくれるに違いない。

激闘が繰り広げられた東京競馬場

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