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ウィリン・ロサリオとシェルドン・ノイジーが映す「超変革」の軌跡

「これまでのチームでは一番強い」

2018年。春季キャンプを打ち上げた「超変革」の"始動者"金本知憲監督は、当時のチーム状態をそう評した。

2016年の就任以来、4位、2位と順位を上げてきた金本阪神。生え抜きの若手を積極起用し、最小限の補強を貫く「超変革」。その3年目の集大成となるシーズンを前に、指揮官から発せられたこの言葉の中心にいたのは、新助っ人であるウィリン・ロサリオであった。

「メジャー通算71本塁打、韓国リーグ2年連続3割30発100打点」の実績違わず、春季キャンプのロサリオは6試合で打率.667の3発10打点と爆発していた。OBからコーチ、指揮官までもが絶賛し、各誌面は連日狂ったようにロサリオを追いかけていた。

しかし、その期待は外れた。

ロサリオとともに、チームも沈んだのである。

2018年シーズン「これまでのチームでは一番強い」はずだった金本阪神の集大成は、最下位という結果に終わった。

チームの主軸として3割30発を期待されたロサリオも、75試合で打率.242、8本40打点。到底期待には及ばない成績に終わり、たった一年でチームを去った。

続投が決定的だったはずの「超変革」の"始動者"金本知憲も、最下位という結果に加えファンとの騒動もあり、退任に追い込まれてしまう。

後任には当時二軍監督を務めていた矢野輝弘が就任することとなった。

それまでの「超変革」路線を継承し、持ち前の投手力に加え、徹底的な走塁意識の向上と巧みなドラフト戦略で戦力を蓄えた矢野政権だったが、4シーズン戦って優勝を果たすことは出来ず。
2022年シーズン限りで、矢野輝弘も退任した。

そして、2023年シーズン。
矢野輝弘の後任として就任したのは、なんと岡田彰布だった。

矢野政権中はその采配や選手起用に対し批判を繰り返しており、とても現路線の継承者とは思えない人選に悲鳴をあげたファンも多くいた。
かくいう私も、その一人であった。

しかし、私は、私たちは、"信じきれていない"だけだったのだ。

岡田彰布を、ではない。

超変革」開始から8年。
その間に耕され、植えられ、育てられた、
手塩にかけた選手たちを、だ。

2023年シーズン開幕後、岡田彰布率いる阪神タイガースは快進撃を続けている。
前政権の批判言動からは想像し得ない指揮官のマネジメント力は、手のひらを返さざるを得ない部分が多くある。

しかし、やはり、それ以上に素晴らしいのは、
このチームで育てられた選手たちだ。

ここ最近のベストメンバーは、だいたい以下だ。
1 8 近本光司
2 4 中野拓夢
3 7 ノイジー
4 3 大山悠輔
5 5 佐藤輝明
6 9 森下翔太
7 2 梅野隆太郎
8 6 木浪聖也
9 1 投手

9人中8人が生え抜き。
その例外すら自前の助っ人。
そして極めつけは「野手8人中4名が超変革以降のドラフト1位」。

このスタメンでタイガースは今、2位DeNAに5ゲーム差をつけて首位である。

さて、ようやく本題だが、ここでそのスタメンで3番を張っているシェルドン・ノイジーの成績をみてみよう

50試合で打率.246、4本24打点、である。
OPSは.614。三振率は約17.0%。

ここで、ウィリン・ロサリオの成績を振り返ってみよう。
75試合で打率.242、8本40打点
、である。
OPSは.658。三振率は約23.5%。

もちろん、ポジションも違う。求められている役割も違う。それに何より、年俸が違う。

しかし、打線の中に入れば8人いる野手のうちの1人であることは変わらない。それも、中軸である3番に、ノイジーは置かれているのだ。

つまり。

超変革から苦節7年。8年目を迎え、ひたすら頂を目指して積み上げてきた生え抜きの力は、"3番にロサリオを置いても勝てるチーム"を創り上げたのだ。

大袈裟かもしれないが、言い過ぎでもないと思う。

では、改めて言わせていただこう。

「これまでのチームでは一番強い」
当時は、新助っ人でありまだまだ未知数なウィリン・ロサリオが、その言葉の根拠だった。

今は違う。

金本が育てた大山悠輔が、
矢野が育てた湯浅京己が、
チームの中心にいる。

だから。

「これまでのチームでは一番強い」

超変革のフィナーレを、みせてくれ。

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