【望郷】三つの故郷

人間には三つの故郷があると聞いたことがあります。一つは自分の故郷で、残りの二つは両親の故郷です。
僕の故郷はどこかというと、一つは広島市です。僕は広島市で生まれ育ちました。
もう一つの故郷は呉でここは父の故郷です。実際に、父が生まれ育ったのは、山口の萩らしいんですけど、僕が小さい頃、祖母が住んでいたので、呉のイメージが強いのです。
三つめの故郷は母の故郷で、こちらも山口になります。母も父と同じく山口で生まれ育ちました。

僕の母は在日韓国人です。ですので、本来ならば、韓国に故郷があったはずです。では、その故郷とはどこかというと、慶尚北道金陵郡というところになります。何故なら、そこが母方の祖父の故郷だからです。それで、以前、こちらの故郷について調べてみたのですが、地図などを見ても見つけることが出来ませんでした。

ところで、去年の秋に、フジテレビが開局45周年を記念として「海峡を渡るバイオリン」という3時間のドラマを放送しました。ご覧になった方、いらっしゃるでしょうか。朝鮮から日本に渡って、世界有数のバイオリン制作者になった陳昌鉉さんという人のドラマで、SMAPの草彅君と菅野美穂さんが主演していました。

このドラマの冒頭で、陳さんの生まれ故郷の風景が出てきます。山吹色の銀杏などの紅葉が目がさめるほど美しいのです。フジテレビの製作日誌によれば、本当に原作者の陳さんを連れて、細かな検証を行って撮影をしたようです。僕はその景色を見て、何故かとても懐かしい気持ちになりました。どうしてだか分からないのですが。

その後、このドラマの原作になった彼の自伝を読んだのですが、陳さんの故郷は慶尚北道金泉市とのことでした。金泉市というのは、僕も地図で確認したことがあり、金陵郡と名前が似ているなあと思っていました。

その後、今年の春に、ネットの友達で慶尚北道に住む韓国人の女性に聞いてみたところ、彼女も金陵郡という郡は知らないということでした。しかし、彼女のお母さんがこのことを知っていました。何でも、昔そういう郡があったのだけど、今は金泉市に合併吸収されてしまったのだと。ああ、なるほど、と思いました。ようやく長年の疑問が解決しました。あのドラマで見た、あの美しい光景が僕の祖父の故郷だったんですね。そして、陳さんは僕の祖父の同郷の人なんですね。もしかしたら、知り合いかもしれません。梁さんも陳さんも中国系だしね。

僕はとても胸がいっぱいになりました。

あのドラマ、もう一度みたいなあと思っていたんですけど、さっき、調べてみたら、なんと、先月、DVDが発売されていたようです。おお、なんと言う幸運。しかも、その内容はディレクターズエディションらしい。あのドラマ、とても面白かったんですけど、強いて言うと、構成が中途半端だったんですよね。少年時代の話が長すぎたり、終わり方が唐突だったり。そう言う意味で、再編集されたのはうれしいなあ。唐十郎の冒頭のシーンを少し見逃したので、最初から見直したいです。

というわけで、明日買いに行きます。

皆さんもぜひ見てみてください。あと、原作もとても面白いですよ。話の内容は原作の方がずっと面白いです。お母さんの朝鮮戦争時のエピソードとか、陳さんが初めて帰省した際に北のスパイと誤解されて殺されかけた話など、テレビドラマでは省略された話もいろいろとあって興味深いです。文庫版が出ないかなと思っているのですが。見かけたら教えてください。

(別のブログからの再掲載)

補足:これは元々15年ぐらい前にmixiに書いたもの

https://ameblo.jp/toraji-com/entry-10037823617.html

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