【寓話】銀杏の話

あるところに原始社会があった。

高地には金持ちが住み、低地には貧乏人が住んでいた。

ある日、外国から旅行者が来た。

そして、帰りに、食料として持ち込んだ銀杏の種を落としていった。

すると、その種は低地の転がり、人知れず芽を吹いてぐんぐん育っていった。

やがて、銀杏の木が大きくなると、実をつけた。

その実は今までに嗅いだこともないほど臭かった。

それで人々は急いでその実を拾い、村の端に捨てた。

さて、その村には一人の貧乏な若者が住んでいた。

彼は腹が減って今にも死にそうになっていた。

そして、ある日、空腹のあまり、その実を食べようとした。

皆がかき集めて捨てた実を拾って、河原で焼いてみた。

そして、一口食べてみたが、食べられないほど不味かった。

彼が思わず噴出すと、そこから殻に包まれた種子が飛び出した。

彼は気になり、その殻を割ってみた。

すると、そこからは翡翠色の美しい種子が現れた。

そして、彼がそれを食べてみると、なんとも言えない美味しさであった。

そこで、彼は急いで地に落ちた実をかき集めて、すべての果肉を洗い流して、種子だけを取り出した。

そして、彼はそれを一人でおいしそうに食べていた。

やがて、それを見ていた貧しい人たちも、それを真似て、その実を食べ始めた。

しかし、それを見ていた高地の金持ちたちはさも厭わしそうに眼を背けた。

そして、自分たちの子供たちに教えた。

「あんな臭いものを食べてはいけませんよ」と。

その後、低地に住む貧しい人たちは、この銀杏を大事にし、やがて、栽培するようになった。

そして、品質改良を進め、臭い果肉を取り除いて、他の村に輸出するまでになった。

低地の貧しい人たちは臭い果肉を我慢して剥いたことにより銀杏の美味しさを知ったが、高地の金持ちの人たちは最後まで銀杏の美味しい味を知ることがなかった。

素人による涙ぐましい話は銀杏(ぎんなん)に似ている。

それを食するためには、外皮を剥かなければならない。

銀杏において、食するのは種子であって、臭い外皮ではない。

そこを、自称「ドライ派」のあなたは勘違いしていないだろうか。

あの臭いやつを食べるわけではないのだよ。

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