【思索】人生においてセンスと付き合いはどちらを優先すべきか

いつも思うことではあるけれども、センスと付き合いはどちらが大切なのだろうか。

たとえ話をひとつ。

あるところにAさんという人がいた。

Aさんは、ある日、友人たちとキャンプに行くことにした。

当日、みんなでカレーを作ることになった。

で、カレーの辛さをどうしようということになった。

Aさんは辛いものが好きだったので、辛口にしようと提案したが、甘口の方がいいという人もいて、意見が分かれた。

話し合ったところ、結局、甘口のカレーを作ることになった。

何故なら、参加者の中に辛いものが食べられないという人がいたのである。

その後、何度か、キャンプに行ったが、その後も、毎回甘口のカレーを作ることになってしまった。

一般論として言うならば、キャンプにおいて作るカレーの辛さは、辛口と甘口のどちらが美味しいかで決まるのではなく、どちらが食べられないかで決まるのである。

辛口のカレーが食べられる人は甘口のカレーも食べられるが、その逆は必ずしも真ではないのである。

次に、例えば、こう考えてみよう。

Q1.今、あなたは一人で映画を見に行くとする。

あなたはどんな映画を見に行くだろうか。

Q2.今、あなたは仲のよい友人たちと一緒に映画を見に行くとする。

あなたはどんな映画を見に行こうと提案するだろうか。

最後に、

Q3.Q1.の映画とQ2.の映画は同じものだろうか、それとも違うものだろうか。

私の場合、Q3.の答えについて言えば、常にこの2つは異なる。

何故ならば、私にとってよいと思えるものは、常に周囲の知人らには勧めても仕方がないものなのだから。

それに対して、世の中には、この2つがいつも適当に一致している人たちもいるのだ。

常々思うことだが、人間とは価値を追い求めていく存在である。

そして、人間が価値を認識するためには、それを理解するための価値観が必要である。

ところが、この価値観には2種類あるのである。

一つは先天的な価値観であり、もう一つは後天的な価値観である。

先天的な価値観とは、人間ならば誰でも備わっているような価値観である。

具体的に言うならば、食欲や性欲に基づいた価値観である。

旨い食べ物や美しい人を見れば、だれでもそこに価値を見出す。

そこにはさしたる訓練はいらない。

(食べ物において、大人の味を覚えるのには多少時間がかかるかもしれない。)

それに対して、例えば、ある種の美術作品の価値が分かるためには、そのための価値観を後天的に得る必要がある。

例えば、ピカソの絵を見て、何の美術的な修練もなく、「これは素晴らしい」と思う人はそれほど多くないだろう。

我々凡人の場合、ピカソの絵の価値が分かるためには、それなりの価値観(審美眼)を養う必要がある。

逆にそれを養った人は、それを養っていない人たちと同じ価値観を共有することは出来なくなる。

ある価値観を得た人が、その価値観に基づいた価値を、その価値観を得ていない人に勧めても、相手は首を傾げるだけだろう。

かつては、ともに「こんなの、どこがいいんだろうね」と首を傾げあっていたはずなのだが。

人間の生き方は、突き詰めると、以下の2種類に分けられる。

1.自分にない価値観を捜し求める生き方。

(価値観は価値以上に価値がある。自分の眼球が他人が描いた絵画より価値があるように。)

2.自分にない価値観を捜し求めることはなく、他人とあり合わせの価値観で済ませてしまう生き方。

前者は、より多くの価値のあるものに出会うことが出来るだろうが、周りの人たちとの付き合いは難しくなるばかりだろう。

前者にとって、会話は、情報交換のためであって、コミュニケーションのためではない。

だから、顔見知りに、真の友人がいなくなるのだ。

後者は、人間関係には困らないのだろうが、常に大衆向けの流行り物(つまり、常に食欲や性欲に訴える手合いが作り出した大量生産品)しか理解出来ない鈍感な人生で終わってしまうだろう。

後者にとって、会話は、コミュニケーションのためであって、情報交換のためではない。

だから、顔見知り以外に、真の友人がいないのだ。

(我々は情報の中に真の友人を見出すことがある、その友人とは会ったこともないのだが。)

なお、人工的に養った価値観は、さらにその後の修養によって、かえってそれが否定されることもある。

しかし、それは決して最初の状態に戻るわけではないのだ。

十牛図の結論が「それなら最初から旅に出なければよかったのに」ではないように。

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