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9回表1アウト1塁ショートゴロ なぜダブルプレーが成立しなかったのか。 2021/7/1 今日のワンプレー

1-1の同点で迎えた9回表ヤクルトの攻撃。1アウトのあと山田哲人がセンター前ヒットで出塁。打席には主砲村上を迎えた。

カウント1-2からの4球目、村上はスアレスが投じた外角のチェンジアップにタイミングが合わず、ショートほぼ正面ややセカンドベース寄りへのゴロとなる。

ショートからセカンドへトスし、ファーストランナーはセカンドでフォースアウト。しかしセカンドからファーストに転送されるも打者走者村上の足が一瞬早く、1塁はセーフ。2アウト1塁で次打者を迎えることとなった。

もしダブルプレーが成立していれば3アウトとなり、ヤクルトの勝ち・阪神の負け、いずれもが無い状態で9回裏を迎えることができた場面である。

しかし、ヤクルトはここから後続が連打。一挙5点を奪う猛攻でゲームを決定づけた。振り返ってみると試合を左右する大きな分岐点であったと言えるだろう。

村上の打球はそれほど速い当たりではないとはいえ、正面のゴロである。確実に2つのアウトをとりたい場面であったことは間違いない。


しかし、この場面のいわゆる「ゲッツー崩れ」だが、通常のダブルプレーシフトとは異なり、特にこのケースのような6-4-3のプレーには向かないシフトであったこともひとつの要因となった。


通常ダブルプレーを狙う際には内野手は通常よりもやや浅めにポジションをとる。コンマ1秒でも早く捕球し次の動作へと移行するためだ。そして同時にセカンドとショートはややセカンドベースよりに守備位置を変える。もちろんこれも素早くベースカバーに入るためである。

ただ、このケース。打者はヤクルトスワローズでも最も長打力のある、それも左打者の村上である。野手は引っ張っての右方向の強い打球にも備えなければいけない。


この状況を踏まえて、セカンドとショートはどのような守備位置であったか。

ショートはややベース寄り、かつ通常よりも気持ち浅めの守備位置であった。これは通常のダブルプレーを狙う体制に加え、村上の打球方向データを踏まえてさらにややセカンドベースに寄っていたのだろう。

リプレイを見ると、打球が飛んだ方向としてはセンターに抜けてもおかしくないような当たりではあるが、ショート中野がほぼ正面で捕球している。これは中野がセカンドベースよりに守備位置を変えていたからである。

ポイントはこのプレーでベースカバーに入ったセカンドである。ダブルプレーを狙うにはセカンドベース寄りに守備位置を変えるのが定石であるが、ここでは逆に村上の打球に備えるために1・2塁間寄りやや深めに守備位置を変えていた。

結果どうなったか。

ゴロを処理したショートがセカンドへトスして送球するも、セカンドベースから離れた位置にいたセカンドがベースカバーに走りながら送球を捕球した場所は、ベースの1歩手前となった。

リプレイを見ても、セカンドベースのかなり遠くから糸原がベースカバーに走り込んでくるのがわかる。

捕球したセカンド糸原は1歩進んでベースタッチした後に送球動作へと移行する。ここで合計2歩のロスが生まれた。糸原は1塁へ転送するも間一髪セーフ。その後の展開を考えると、まさに運命を分けた2歩である。

もしこの打球が村上の打撃特性を踏まえた守備体系にハマり、セカンドが処理できるゴロであれば結果はどうであっただろう。

いわゆる4-6-3のパターンであれば、セカンドからの送球を元々ベースの近い位置にいたショートが素早くベースカバーに入りセカンドからの送球を捕球、ファーストに転送し、ダブルプレーが成立していた確率は高かっただろう。


もちろん、だから仕方がないとまで擁護するつもりはない。しかし通常のダブルプレー体制とは微妙ではあるが異なる条件が揃っていたことも事実である。この微妙な違いが試合を左右することもあるのだ。だから野球はおもしろい。


本日逆転で広島を下した巨人と、ヤクルトに破れた首位阪神とのゲーム差は2.0となった。もはや独走ではない。春先の強い虎を、今いちど思い出し奮起を願う。


ヤ 0 0 0 0 0 0 1 0 5 6
神 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1
【ヤクルト】 奥川 ○清水(1勝3敗) 坂本
【阪神】 ガンケル 岩崎 ●スアレス(1勝1敗) 馬場
[本塁打] 梅野2号(神) 山田21号(ヤ)

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