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失敗しないピンチランナー 植田海 2021/6/25 今日のワンプレー

熊谷敬宥 江越大賀 植田海。。。阪神タイガースの首位快走を支えるピンチランナーたちである。終盤に颯爽と登場し、早いカウントでいとも簡単に盗塁を決めてチャンスを拡大する。今日6/25のベイスターズ戦でもプロの技で我々を魅了した。

チャンスは作るもあと1本が出ず、0-3で迎えた8回裏であった。1アウトランナー無しから代打糸井がレフトへクリーンヒット。糸井が1塁に到達するやいなや、ベンチから代走の植田海が、後ろから何かに弾かれたかのようにグランドに姿を表した。

さすがに、1人のランナーも無駄にできない3点ビハインドの場面で、いかに俊足の植田とはいえリスクの高い盗塁を仕掛けることは難しい場面である。積極的に動くことが困難なこの場面、どのようにそのスピードを活かすのか注目していた。

1アウト1塁、打席には1番の近本。2球目のあまいツーシームをコンタクト、セカンドベースやや右へゴロを放った。セカンドがダイビングキャッチを試みるも打球はグラブの先をかすめ、勢いはそのままセンターの正面へ転がった。


ヒットエンドランという作戦がある。一言でヒットエンドランと言ってもそのパターンは様々であるが、最も一般的なものは
・ノーアウトもしくは1アウトでランナー1塁
・1塁ランナーは投球と同時にスタートを切りバッターは右方向へヒッティング
・あわよくばライト前ヒットで1・3塁にチャンスを拡大
・最悪でもアウトカウントを増やしながらもランナーを2塁に進める
というものである。


なぜ、私がここで突如ヒットエンドランの話題を持ってきたか。

この場面。ヒットエンドランのサインは出ておらず、1塁ランナー植田はピッチャーが投球時にスタートは切っていないかった。それにもかかわらず、外野手が守備位置の前で処理するシングルヒットで1塁ランナーが3塁に到達するという、極めて珍しいプレーであったからである。

ヒットエンドランでは本来打者が打つ前にランナーがスタートを切り、ライト前ヒットが生まれることで初めて3塁を狙える状態・タイミングとなる。

だが、この場面は
・ヒットエンドランではなく打者が打つ前に1塁ランナーはスタートを切っていない
・打球を処理したのは3塁から距離的に遠いライトではなく、より3塁に近いセンターがそれも定位置の前で処理する打球であった
という状況、すなわち常識(私の固い頭の中にある野球の常識)では1塁ランナーが3塁になど進塁するはずがない状況なのだ。

しかもこの打球、確実に外野に抜けることが判断できる前の段階では、セカンドが捕球することも考えながら1塁ランナーは2塁に向かわなければならない。

つまり打者のバットに打球が当たってから内野を抜けるまでは1塁と2塁を結ぶ最短距離である直線上を走り、打球が外野に抜けることが確実であると判断した時点で外野方向にやや膨らむように走路を変え、2塁ベースを蹴る時には3塁に向かいやすい体制に立て直す走塁テクニックを要する。

しかし、ここは我らが無敵の代走陣1号車植田海である。これらの障害を何事もなかったようにクリア。まったく躊躇なく、目の前に転がる打球を見て自身の判断で2塁を蹴りスピードを落とさず3塁に向かった。

センターは捕球したあと3塁へ送球することもできず、植田海はラクラクと3塁を陥れる。これこそまさに2021年盤虎の代走の真骨頂である。一見「代走植田の好走塁」で片付けられてしまいそうなプレーであるが、これだけの要素を含んでいる著しく難易度の高い走塁だったのである。


23日バンテリンドームでの中日戦、一部では「暴走」と報じられた走塁で何度か貴重な得点の機会を失った。しかし、今日の植田海のような走塁を生むためには、多少の「暴走」はよしとする矢野監督の方針はシーズン最後まで継続するべきであろう。


De 2 0 0 0 0 1 0 0 0 3
神 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
【DeNA】 ○浜口(5勝5敗) 砂田 エスコバー 山崎 S三嶋(12セーブ)
【阪神】 ●西勇(4勝4敗) 藤浪
[本塁打] オースティン16号(D)

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