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フォースアウトとタッチアウトの違い

◆フォースアウト
ベースを踏むだけでそのベースに向かうランナーがアウトになるプレー。ランナー1塁内野ゴロのダブルプレーの際、野手が2塁ベースを踏むと1塁ランナーがアウトになる場面などが代表的。

◆タッチアウト
ボールを持った野手がランナーにタッチして初めてランナーがアウトになるプレー。盗塁の場面や2塁ランナーがシングルヒットで本塁突入する場面などでは、タッチの有無が判定を分ける。

上記のとおりである。しかし、どのようなケースではフォースアウトとなり、逆にどんな条件になるとタッチが必要なのか、野球観戦初心者の方には判断が難しいことがあるようだ。この記事を読んで2つのプレーの違いを明確に理解していただきたい。

簡単に言ってしまうと、
前の塁に戻る選択肢があるランナーにはタッチが必要。
先の塁に進むしか選択肢の無いランナーはフォースプレー。
である。

踏まえて、ケーススタディとして一緒に考えていただきたい。下記のケースはフォースプレーかタッチプレーか判断してほしい。

Q1.ランナー1・2塁 キャッチャー前のゴロで2塁ランナーを3塁で刺すことを目的に3塁へ送球。タッチは必要?

A.タッチは不要。三塁手がボールを持った状態で3塁ベースに触れることで2塁ランナーはアウト。フォースプレーとなる。
この場面の2塁ランナーは、1塁ランナーが2塁に走ってくるため2塁に戻ることはできない。さらに1塁ランナーも1塁には打者走者が走り込んでくるため同様に戻ることはできない。つまり「アウトになりそうなら自重して前の塁に戻る」ことができないランナーである。この状況のランナーは進塁先の塁でフォースプレーとなる。


Q2.ランナー2塁 キャッチャー前のゴロ(送りバントなど)で2塁ランナーを3塁で刺すことを目的に3塁へ送球。タッチは必要?

A.3塁へ向かう2塁ランナーにタッチしなければアウトとならない、タッチプレーとなる。
Q1の場合とは異なりこの2塁ランナーは1塁ランナーに押し出されることが無いため、2塁にとどまることもできる。3塁進塁を試みる際に自身がアウトになると判断すれば、2塁に戻ることも可能なのである。前の塁に戻ることができるランナーには追いかけてタッチをしないといけないというのが、基本的な考え方である。


Q3.1塁ランナーが2塁へ盗塁を試みた。このランナーをアウトにするためにはタッチが必要?

A.タッチプレーとなる。ボールを持った野手が2塁ベースに触れただけではアウトにできない。
よく見る盗塁の場面である。この場面のランナーは、このまま2塁へ向かうとアウトになると判断した場合に1塁へ戻ることが可能である。前の塁に戻ることができるランナーをアウトにするにはタッチが必要である。


あとは上記の応用である。少し複雑な場面で練習してみよう。

Q4.ランナー2・3塁。内野前進守備。ゴロを捌いた野手が3塁ランナーを刺すために本塁送球。3塁ランナーをアウトにするためにタッチが必要?

A.タッチが必要。3塁ランナーはホームに進塁する以外に、3塁に戻るという選択肢がある。
これが2・3塁ではなく満塁の場合、ホームはフォースプレーとなる。打者走者が1塁に向かうことによりすべてのランナーに進塁義務が発生し、前の塁に戻ることができなくなるからである。つまり、ピッチャーゴロ→ホームに送球しフォースアウト→1塁に送球し打者走者がアウト となるいわゆるホームゲッツーが完成するのは、満塁の場合のみである。


Q5.ランナー1・2塁。センター前ヒットで2塁ランナーが3塁を蹴って本塁突入。外野手から送球を受けた捕手はランナーにタッチが必要?

A.タッチが必要。2塁ランナーは3塁を踏むまでは前の塁に戻ることはできないが、3塁を回った段階で「3塁に戻るかホームに進むか」を選択できる。前の塁に戻ることができるランナーにはタッチをしなければアウトにできない。


Q6.1アウトランナー1塁。ファーストゴロで一塁手はファーストベースを踏んでまず打者走者をアウトにした。続いて2塁へ送球し2塁へ向かう1塁ランナーの刺殺を試みた。この1塁ランナーにタッチは必要?

A.タッチが必要。この1塁ランナーは打者走者がアウトになった段階で1塁に戻る権利が発生する。前の塁に戻る選択肢があるランナーにはタッチが無いとアウトにすることができない。


ゴロを打った打者走者が1塁に駆け込む際に、一塁手は打者にタッチなどしない。他の野手から送球を受けた一塁手がファーストベースに触れた時点で打者はアウトとなる。打者は本塁に戻るという選択肢が無いためにタッチが不要なのである。

打者の場合は例外なく1塁への進塁義務が生じるので、あえてフォースプレーと呼ぶことは無いが、あのプレーも広い意味ではフォースプレーなのである。


以下、Twitterで頂いたご質問に回答する。

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https://twitter.com/MAYUMON76/status/1418415677279408129

はい。ではランナー2塁、三遊間へゴロが転がりサードが捕球、2塁ランナーが飛び出しており2・3塁間で挟殺プレーとなった場面を想像していただきたい。

挟殺プレーが始まった段階では2塁ランナーは3塁へすすむことも2塁へ戻ることも選択できる、つまりタッチが必要なランナーであることは、ここまでお読みいただいた方には容易にご想像いただけることであろう。

しかしご質問のケースは、挟殺プレーの間に打者走者が1塁を蹴って2塁へ到達したそのあとにも2・3塁間で挟殺プレーが継続していた場合、2塁ランナーは3塁に進むしかなくフォースプレーになるのではないか?である。

結論はそれでもタッチプレーである。

まず、この場面での2塁ランナーは打者走者が2塁に到達していても2塁に戻ることができる。かつ2塁に到達している打者走者も1塁に戻るという選択肢がある。従っていずれのランナーもフォースプレーではなくタッチプレーの対象となる。

ここでおそらく多くの方が疑問に思われるであろう点は、「2塁ランナーが挟殺プレーをくぐり抜けて無事2塁に戻ったとしても、2塁にふたりのランナーが重なった場合はどうなるのか」である。

この場合、優先権は先のランナーが持つことになる。このケースでは2塁ランナーが2塁に戻った時点で打者走者が2塁を占有する権利が消滅する。打者走者は2塁ベースに触れていてもボールを持った野手にタッチされればアウトとなる。アウトになることを避けるためには1塁に戻らなければならない。

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