弟 エピソード16

 弟は今どこにいるのだろう。亡くなった時点ですべて終了なのか。死後の世界があって、それはどのようなものか。実家は禅宗なので、それに基づいていて6道のどこかにたどり着いたのか。生前の行いによって、行く道が決まるそうだけど、それは誰がどのように判断するのか。次から次へとわからないことが浮上してくる。

禅宗の6道とは1.地獄界 2.餓鬼界 3.畜生界 4.修羅界 5.人間界6.天上界のことだという。人は死んだり生きたりを繰り返する6道輪廻に生きているそうだ。ざらっとおさらいしてみたら、飲酒したら地獄界に行くのだそうだ。殺生をしても地獄界行きだそうなので、私を含めほとんどの人は地獄界に行くことになる。私は刺身で日本酒を何回も楽しんでいるから。

地獄界にもいろいろあるようだ。読んでいると、疲れてくる。解脱するには修行、それもたくさんの時間を必要とする。仏教でも宗派によって、宗派の中でも多様な教えがある。私自身は無宗派だけど、神の存在はあると思っている。私のお気に入りは、人には必ずガイドさんがついていて、死ぬ時も一人では死なない。しばらくは今生のやってきたこと、やれなかったことを一緒に検証して、生まれ変わるとしたらその生のテーマを設定する。あまりに深く傷ついて、弱っていたらしばらく療養する。同居動物たちが、人より早くなくなると、虹の橋の袂で、仲良しだった人が来るのを待っている。再会して喜び合い、手を取り合って虹の橋をわたる。この話には惹かれるし、安心する。仏教は愛の宗教だという人もいたが、地獄の描写をみると、私にはそう感じられなかった。恐怖は感じた。それが嫌なら5戒を守って生て行くが必要だとされる。逃避してお酒を飲みたくなる。酔っていれば、気持ちがいいし天国かもしれない。生前に積んだ功徳で、遺族が法要で死者へ追善供養を行い仏と成るのを手助けすることができる。これはそうだったらいいなとは思う。弟が功徳を積んだとすれば、弟が言っていたように

「俺は姉さんのためになった。自分がいろいろやらかしたから、姉さんがいろいろできるようになった」

これしかないかもしれない。供養は実家が存在していた時点で、法要はずっとやってきた。ご先祖様たちは大丈夫といってもいいかもしれない。最短でも3周忌までは供養が必要らしい。私一人でそこまでやれるだろうかと思ったら涙が止まらなくなった。

「姉さん泣くな」

弟の声が頭の中で響いた。


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