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「サウンド・オブ・メタル」あまり注目されていないアカデミー賞作品賞候補作に注目してほしい

とんでもない映画に出会ってしまったと余韻に浸りつつ、この映画を劇場で見られなかったことに悔しさが滲んだ。

聴力を失ったメタルドラマーのルーベンが、施設での生活を経て、新しい人生を生きていく為に更生していく人間ドラマ。

Amazonオリジナル配信ということで、配給を
Amazon社が担っているが、他の映画会社が配給を担当していれば劇場で上映されていただろう。
アカデミー賞作品賞を含む6部門でノミネートされているのにあまり注目されていないのはこれが理由。


なぜ劇場が好ましいのか、それは劇中で音響効果を駆使した3つの世界が登場するからだ。
聴力が一般的な世界、聴力が失われている世界、
インプラント手術で聴力が少し回復した世界が所々で織り交ぜられ比較しているかのように物語は進む。(耳障りなノイズ音や周囲の声をゴニョゴニョさせた映像が織り込まれます。)劇中で聴力障害を疑似体験できるという宣伝文句の通り、聴力を失った時の怖さを作品を通して体感できるのが、この映画のポイント。

〜〜〜以下、ネタバレ含む〜〜〜〜

自暴自棄になり始め、4年前に断ち切ったドラッグがちらつくルーベン。そして同じバンドで恋人のルーは、新しい世界を生き抜いてもらう為に彼を施設に入れるが、事実上、彼女自身も障害に耐えられなくなり、愛する者を見捨てた形になる。ルーベンもルーも全く悪くない。その行動に否定は一切できない。そんな2人の別れ際は、ただただ悲しい、というか泣いた。

また施設の理念でもあり、"治すのは耳ではなく頭"ということは物語の重要なテーマになっている。最終的にはルーベンは、お金を使って耳を治すことに決めるのだが、手術後に広がる世界は想像とはかけ離れたもの。そして再びタバコに手を出し、不穏な空気が漂う展開の中で彼女とも再会を果たすが、何かがちがう。かなりドキドキさせられたが、ルーベンの一言に全てが救われた。あの場面であの一言を発することができる人はいるのだろうか、それだけルーベンにとって施設での生活が財産になっているという証拠なのだろう。

あー、なんでスマホで見ちゃったんだろう、せめてテレビで見たかった。
名前は存じ上げていなかったけどルーベン役のリズ・アーメッドの演技は最高です。
これを機に売れて欲しい、主演男優賞受賞を心より願います。あわよくば作品賞も。

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