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なぜ洋服は売れないのか、問題

(2019.9.10加筆修正)
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洋服買ってますか?ぼくはそこそこ買ってます。巷で言われる、洋服は売れない問題、本当なのでしょうか。ちょっと考察してみようかな。

1)市場はどうなっているか?

データ(の正確さには一旦片目を瞑りまして)を見ますと、緩やかに縮小しているみたいですね。アクセサリ、美容品、靴、衣類で見ると衣類の落ち込みが激しいのか?激減している印象はそれほど受けません。だがしかし、好調な感じもしません。身近なところで幾つか考察してみようかな。

2)市場参加者のうちの買い手状況

そもそもなのですが、消費者、以下のように分かれるのかな。

A)【洋服を買う余裕があり、洋服が欲しいセグメント】
B)【洋服を買う余裕はあるが、洋服はいらないセグメント】
C)【洋服を買う余裕はないが、洋服が欲しいセグメント】
D)【洋服を買う余裕はなく、洋服はいらないセグメント】

ではそれぞれどんな構成なのでしょう。なんとなくペルソナお絵かき。

AとB)月々の可処分所得が10万円以上。若者であれば、実家暮らしの独身男女。30overであれば、年収で1,000万円超で、結婚していれば共働き。40overであれば年収2,000万円超、実家が裕福で子弟の教育費には実家から支援あり、みたいな感じですかね。30超えてる人たちは世間で言われるところの勝ち組、って人々。

CとD)月々の可処分所得はあるものの、BS的にはギリギリ、あるいは債務超過。C)はまだ洋服が欲しくなる程度には社会性がある。若く社交性のあるタイプ。中高年では高年収もいるが、生活に余裕はない。家族の付き合い、学費等で汲々としている。D)は社会性を保てるギリギリのライン。場合によっては生活保護もありえるし、パラサイトのケースも。

3)ではabcd、それぞれ何人位いるのか、せめてaは何人いるのか

ではどんな人口構成か。まずはa)はどんなもんですかね?

https://okane-answer.jp/articles/58853fffde2768d86d9d23d969da9b54

なるほど。正確かどうかはまたさておいて、年収2,000万円あれば、税引後の手取りは大凡1,000万円になります。月でならして85万円くらい使えます。これでどういう生活ができるか。試しに下に書いてみましょう。

・都心在住の経営者、専業主婦、子二人のケース。
家賃20万円、仕事絡みの移動費用や交際費は会社持ち、残りの65万円は、家主の小遣いが10-15万円、食費等が10-15万円、遊興費が10万円(年間120万円、年2回、普通に海外旅行ができるレベル感)毎月の車のローンが5-10万円、教育に力をいれているようであれば習い事等で10万円、ってところでしょうか。残りは貯金、と。ざっくりこんなもんでしょうかね。
六本木近辺で80平米くらいの古めのマンションで、車はメルセデス、アウディ、BMWあたりの中くらいのやつ。ぱっと見、とても幸せそうですね。こっから車がなくなり、旅行が減り、等々、ランニングコストをダイエットできると、毎月20-40万円くらい溜まっていく感じでしょうか。

ではこうした人、何人いるのでしょうか?
20代0%、30代0.1%、40代0.5%、50代1.2%、らしい。なるほど。

ちょっと古いですが、20代は1,200万人、30代は1,400万人、40代は1,800万人、50代は1,400万人、くらいでしょうか。このうち、労働者が70%程度と考えて、そこから年収2,000万円以上の人数を考えますと、20代0人(多少はいるでしょう)30代0.98万人、40代6.3万人、50代11.76万人、と。
日本の労働者で、年収2,000万人以上の人は19万人強みたいです。東京都の小平市くらいの規模感ですね。住んだこと無いのでわかりません。
日本国の全人口の対比で言うと0.16%くらい。確率論的に正しくはありませんけれど、1,000人とすれ違って1.6人いるかどうか、レベル。新宿駅の1日の乗降者数は20万人と聞いたことがあります。大凡、1時間新宿駅にいて、16人いるかどうか。そんなもんみたいですね。

4)類推した数字は合っているか?

この19万人、多いのか少ないのか、わかりません。仮になのですが、この19万人が年間50万円洋服買うとなると、950億円。なんか少ない感じもしますけど、アパレル産業が9兆円程度の規模で、12,500万人いるであろう日本人から上記を減じた12,481万人が年間7万円程度(月に6,000円、ユニクロでTシャツ3枚くらい?)洋服を買っているとすると、8.4兆+0.95兆の合わせて9.35兆と、ふわっと整合性は取れますね。ちなみにユニクロの国内売上高は8,600億円くらい、らしい。加えて、セグメントごとの消費支出のデータなんかがあれば、類推はより強固になりそう。

5)では本当に売れなくなってきている、のか?それはいつに比べて?

と、つらつら書いたけど、「売れない」って何?いつに比べて、何と比べて売れなくなっているのか、あるいは買わなくなってきているのか、ここの考察次第で論は様々に変わると思います。例えば社会構造と経済構造って10年スパンではそんなに変わらん気がします。より壮大な話をしますと、まぁ聞いた話でちゃんと調べておりませんが、世界中のGDPを合算した数値に対する日本のインパクトは3%程度、と聞いたことがあります。20年ほど前はもっと高かったらしく、対世界比で3%というのは8世紀頃の水準らしいのです。一方、中国ですが、ようやく5%とかに上がってきたようですが、低い水準にあったのはアヘン戦争以降のここ100年ほどだけ、らしい。何が正常なのか、という話もあると思いますが、中国の成長は昔への揺り戻しというか、日本が先進国であったのは時代の綾というか、長いスパンで物をみるといろんな言い訳ができますね。

で、調べるのダルくなってきたので、必殺、ロジックリープというか、むりくり仮説出します。

ここまでの数字とか類推とか調べる過程において思いついたことをミキサーにかけるかのようにして仮説を導き出してみますと下記ですかね。
1)昔は無い金を絞って洋服を買っていた
2)昔は洋服の選択肢が少なく単価が高かった
3)今ではかつての服飾費が何かに食われた
4)今では洋服を買うという行為に魅力がなくなった
あたりがパッと思い浮かびます。ちょっと調べてみます。

ありました。いつに比べて売れなくなっているのか?あるいは買わなくなっているのか

 6)1と2の検証

では1)から行きます。なるほど。家計の消費支出に対する衣類・履物の割合は、1951年(昭和26年)から1965年(昭和40年)までは10%を超えています。一方、金額ベースでは1987年(昭和62年)から1995年(平成7年)まで2万円を超えています。では足元、平成30年では割合で3.76%、金額ベースでは10,839円。1951年当時と比べるのはちょっと難しい気もしますが、1987-1995と比べると、割合も金額も半分になっていますね。事実として、最近は売れて無いのは間違いなさそうですね。加えて、購入点数もあるといいのですが、ちょっと時間かかりそうなのでパスします。

以上より、

1)昔は無い金を絞って洋服を買っていた
→1951年(昭和26年)から1965年(昭和40年)ではワークしそうな仮説。物量も少なく、作れば売れる、って時代だったのかもですね
2)昔は洋服の選択肢が少なく単価が高かった
→こう思ったのは、販売チャネルについての思いつきでした。百貨店優位というか、百貨店が衣類の消費拠点だった時期は2000年ころまでだったように記憶しており、これも外れてはいなそう。でも、両方とも人口の問題で解決出来そうな気もします。1951-65の14年間は団塊の世代が小学校から大学に行くあたりで消費が盛んだった、1987-95の8年間も団塊ジュニアの成長期、と。

古き良き、いい時代なんでしょうかね、関係者の方からすると。目を細めて昔を懐かしみながら説教するおっさんの姿が想像できます。

7)3と4の検証

3)今ではかつての服飾費が何かに食われた
4)今では洋服を買うという行為に魅力がなくなった

ですが、これまた年代別でも調べ無いといけないとは思いますが、ぱっと思いつくのは下記。まず3)について、スマホ関係の出費に食われているのでしょうか。ゲーム、ラインスタンプ、漫画、等々。ぼくはいいおじさんなので、ゲームとかスタンプはやりませんけども、Amazonで漫画はよく買います。物理的に問題にならないのが、購入障壁を下げている気がします。他の方はどうなんでしょうね。スマホ、格安とは言っても、数千円-数万円のランニングコストはかかるでしょうから、これは結構致命的なのかもしれませんね。

次に4)ですが、最近では、消費者に購入を強制するような外的圧力って少ないように思えます。90年代-2000年初頭くらいまでは例えばSMAPの木村拓哉さんとか、浜崎あゆみさんとか、安室奈美恵さんとか、一部のセグメントの人の消費を刺激する存在と情報があったように思えます。最近ないですね。同調心理というか、カリスマへの同質化という意識はアパレル消費において大事な要素の一つだと思います。10,000人の中の1人になるのは大変だけれど、洋服買うだけで100人の中の1人になれそう、と思ったら買うんじゃないでしょうかね。自分の存在を変容させてくれるかもしれないツールとしての機能が昔は洋服にはあったけれど、今ではなくなっている?必要とされなくなっている?のかな、と思います。若い人と話していて、誰かに憧れるとか、上記で言うカリスマへの同質化といった心理を感じることはあまりありません。加えて、いわゆるミレニアル世代の皆様のいわゆるミニマリストっていう皆様、手持ちのものは少なく、殺し屋みたいな部屋に住まわれている人々もクローズアップされていましたね。社会全体が消費に飽きてきたという側面と、将来への不安からくる消費への恐怖という二重の枷も発生しているようにも感じます。結果、洋服なんていらん、と。

8)ちょっとまとめ

1)は古い話な感じがするので、2)と3)が有力説足り得る気がします。2)では、かつての洋品店や百貨店で買う、というかそこでしか買えないスタイルが変容し、今では選択肢として、ユニクロ始め安価な商材、中古、個人間売買が出てきて、既存のアパレルメーカーが苦戦してるんじゃないのかな、と。3)は携帯料金やモバイルサービスに食われている、という気がします。

2)はいいとして、3)が正しいとなり、4)も真だとすると、どうしようもないですよね。なかなかキツいな。

3)、洋服を買うことと、その他の支出をすること、どっちに魅力があるかというと、後者な人が増えているんじゃないですかね。

若い頃って共通の話題でよく盛り上がっていて、昔は洋服の話をしていた仲間とも、今では健康の話とか、趣味の話とかになっています。個人的に、今のところはそんなに貧窮しておりませんで、洋服もたんまりあり、同じような境遇の仲間は、いまではもう同じような服しか着ておらず、すこしづつ入れ替わっている印象です。毎年新しいジーンズにする、とか、これまでループウィラーだったパーカーをトムフォードにしてみた、とか、そういうレベル。上記のA)とB)の中間くらいにプロットされる人々でしょうかね。

翻って若い人、何に金使ってるんでしょうかね。ネットゲームとか?またも個人的な話で恐縮ですが、アパレルメーカーで働いている人とはそもそも知り合う機会もありませんけれど、周辺の優秀な若者は大抵ウェブやネットの仕事についている気がします。昔は違った気もしますが。。。また、テレビCMの出稿量、いまだとyoutubeとかでいいと思うのですが、以前ほどアパレルが出稿していない気がしますね。店舗があるから出稿しなくてよい、説がメーカーには有力説だったと思いますが、それにしても購買訴求ではなく、ブランディング系の出稿すら見なくなっている気がします。

で、またもだらだら書いちゃいましたが、結局のところ、日本が(海外諸国と比べ)貧しくなり、オールドエコノミーは同調、一方新たな産業は潤っている、という状況だと、職業選択の候補にアパレルは上がらず、というか取り残されているようにも思えます、経済合理性的に。ゆえに求職者もおらず先細り業界、って感じがします。アプリゲームやNetflixよりも知恵を使っているアパレルメーカーって、ぼくは知りません。寡聞なだけなんでしょうけども。これが5年続けば、そりゃプロダクトもいいのできなくなりますわな。いっとき、アパレルやってましたが、業界関係者のクズっぷりにはびっくりでした。結果的にそれ以上のクズっぷりを発揮してやめちゃいましたけどw

9)自分に対する暫定的な結論として
・統計を見ると売れなく(≒買わなく?)なっているのは確からしい
・【時代の変化】でもかつて売れていたモノ≒みんなが買っていたモノ、買うという行為が重要だと考えられていたモノが売れていないだけな気がする。代表が百貨店ブランド等の中間層向け。機能性衣類、ハイエンドは影響なさそう
・【可処分所得との兼ね合い】消費に疲れているのと、消費を躊躇わせる社会構造にも一因はありそう
・【洋服の魅力の低下】インターネットの普及により、ゲーム等、買い物の強敵が出現したが、それに比して
売れる(買いたくなる)ものを作れない業界構造にも一因はありそう。モノだけでなく買いたくなるストーリやムーブメントも作れていない。結果、生活の中の洋服の優先順位は低下している
・洋服を買う余裕がある人は事実としている。潜在的なマーケット規模は数千億の半ばはありそう

蛇足ながら、嫌味に取られるのを承知で書きますと、ぼくは結構洋服買ってます。2019に入ってからでも、1)モンクレーのブルゾン、2)ナイキのスウェット上下(アンダーカバーコラボなので高い)、3)ロンハーマンのパーカー、4)トムフォードのパーカー、5)アンダーカバーのニット(ダウンのコンビなので高い)、6)釣り関係の機能性衣類(ノースフェイス、パタゴニア等々)は毎月何かしら、7)ルブタンのスニーカー、と。趣味の良し悪しは兎も角として、上記A)の中でもだいぶ頑張っている方だと思います。上記、好調な会社ばかりな気がします。なんていうか、貧すれば鈍すというか、知恵を使っていない製品には興味がありませんし、欲しくなったら値札みないで買いますもの。で、「え?うそでしょ?そんなするの?」と思いながら、引っ込みつかなくなったりw

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