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命が燃えている

「命が燃えている」お会いするたびにそう思う踊り子さんがいます。
 
おそらく私よりも年上であろう踊り子さん。
批判覚悟で言えば、初めてお会いした時にステージに出てこられた彼女を見て「これは期待できない」と思ってしまいました。「ちゃんと踊れるの?」とも思いました。
年齢を重ねるごとに肌や体型(もちろん体力等も)が変わっていくのはいくら身体を鍛えても、美容に気を使っても抗えない部分があって、それを実感しつつあった私は、初めてお会いした踊り子さんに対して「自分の方が若いだろう」と思ったというだけの理由でステージを見る前にずいぶんと失礼で勝手な評価をしてしまっていました。

だけど、彼女のステージが始まると最初に抱いた失礼な気持ちもあっというまに吹っ飛んでしまったのです。

一分のゆるみもなく美しく着付けられた浴衣姿。初めての彼氏と花火大会に行く女の子のように明るくはしゃいだその後で、浴衣の肩をはだけ、背中越しに客席に送った流し目。
砂漠の戦士のような衣装に睨みつけるような強い眼の光と踏み鳴らす脚から伝わる振動。
背景も小道具もない、彼女ひとりだけのステージ。
大きく腕を広げて抱きしめているのはきっと目の前にいる私達。
目が離せませんでした。

ステージを見るたびに、彼女の小さな体から劇場中に発散される「力」のようなものを全身に浴びているような、そんな気がするのです。
いつの間にか、劇場に行く日の香盤に彼女の名前があると楽しみにするようになっていました。
そして、彼女のステージを見ているとどうしようもなく涙があふれてしまうようになりました。
何故なのか考えても答えは出ず、でもある日のステージを見ながらふと思いました。

「これは命が燃えてるんだ」

私は今、一人の女性が命を燃やして踊る姿を見ている。

そう思った時、彼女のステージに魅かれる理由が分かった気がしました。

ポラでお話しした時に、痛そうにしていた脚を心配したら「大丈夫!踊るのが好きだからね!」と笑ってくれたひと。
かぶり席にいた私を見つけて、私の隣にいた男性に「この子ね、私の娘なの!」なんて冗談言ってくれたのが嬉しかった。私が彼女を好きだと思ってるのが少しでも伝わっている気がして。
(その後「本当に娘さん?」って隣の人に聞かれたけど、んなわけあるか!)

それこそ私の娘ほどの、若い踊り子さんの弾けるような肢体や目がくらむような眩しさも大好きだけど、長く踊り続けている踊り子さんは当たり前だけど若い踊り子さんにはないものを持っているわけで。
でもそれを「経験」や「人生の重み」と簡単に片づけてしまうのはなんだか違う気がする。うまく言葉にはできないけれど、長く踊っていらっしゃる方のステージを見ていると、一人の女性が「踊り子」として生きてきた人生にちょっとだけ関われたような気がするのです。

ステージで命を燃やすように踊るひと。
彼女だけではなく踊り子さんはみんなそうで、それは間違いなく私がストリップを好きな理由のひとつなんだと思う。
そのことに気づかせてくれた、ひとりの踊り子さんの話でした。

劇場とストリップを愛してやまないであろうあのひとが、いつまでも愛する場所に立てるように、そしてそのステージをいつまでも観ることができるようにと願っています。