見出し画像

その19 最近やっと読んだもの

 ずっと前から気になり続けていた『オーブランの少女』(深緑野分)をようやく読んだ。表題作は一日に一度思い出すくらい魅力的なイメージが鮮明に浮かんで、謎の真相部分も、始まり方も終わり方も凄く凄く好きだった。ただ、重要人物のキーになる行動がどんな精神状態でもそれはしないだろうと思われ、どうがんばっても理解できなくてそこだけがずっと引っかかり続けている。けど、それでも好き(でもやっぱりあそこはないでしょ……と気になってはいる。誰かとあのシーンについて話したい)。

 色々な場面で目にしながらも可愛らし過ぎてきっと肌に合わないなと勝手に遠のけていた『タンタンの冒険』シリーズ(エルジェ)に最近どっぷりのめりこんでいます。ページを開いたことすらなかったので、タンタンが1900年代前半にベルギーの若い新聞記者によって子ども向けの新聞に連載された漫画で、美しい絵とユーモアとエスプリがびっしり描きこまれた作品だとは露ほども知らなかった。
 特に「コンコンニャローのバーロー岬」とか「何とナントの難破船」とか昭和っぽい悪態がたまらないハドック船長とか、まったく頼りにならない間抜けな刑事コンビとかキャラクターたちがいきいきしていて、すごく元気が出る。タンタンの愛犬スノーウィも可愛いしもっと早く読めばよかった……。いつか手元に揃えたい。

 牡丹靖佳『おうさまのおひっこし』は何年もずっとiPhoneのメモ帳の奥の奥のほうに読みたい絵本の一つとして書いていたのに忘れていて、最近図書館で見つけてやっと読めた。絵がとにかく細かく美しくて隅々まで眺めたくなる。おうさまもおともたちも優しくてほっとした。
 でも、こうやって読みたいと思いながら一生思い出せず読めない本って大量にあるんだろうな。映画も音楽も。

 ネズミの冒険シリーズの4冊目、『アインシュタインー時をかけるネズミの大冒険』(トーベン・クールマン)は買って読んだ。文章はするっと読みやすくなってなんとなく前の良さが消えてしまった気もするけれど、精巧な絵は相変わらず素晴らしくて見ているだけでも満たされる。
 アインシュタインはドイツに暮らすユダヤ人で、ナチスの台頭によりアメリカに移住した。ドイツが原子爆弾を開発していることに危機感を抱き、アメリカにその先を越すよう進言するルーズベルト宛の”アインシュタイン=シラードの手紙”、この手紙に署名したことが原爆投下につながったと後悔し亡くなるまで核廃絶を訴えていた……という話は何度読んでも感動してしまう(ネトフリのドイツ発のドラマ『DARK』はつくられるべくしてつくられたのだなということも。ネズミの冒険シリーズ作者のトーベン・クールマンもドイツ人)。
 小6の頃、伝記フリークだったのだけどアインシュタインは読んだことがない気がするので今度読んでみたい。女性の伝記はなぜ少ないんだろう、と素朴な疑問を抱きつつ、一番好きだったのはアンネ・フランクでした。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?