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マリオ&ルイージRPG4 RTA更新点(2022年9月分)まとめ

『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』のRTAにおいて、2022年9月にルートの更新が進み、それに伴ってAny%の記録も大きく縮みました。本記事では、筆者が国内外の走者と共同で取り組んだルート更新の概要とその影響について、備忘録を兼ねてまとめます。

更新1: マクラディア戦の最適化

本作のAny%では、多種多様なグリッチを駆使してストーリーの大部分をスキップするため、必要最小限の戦闘のみをこなします。チュートリアルパートを終えてからの戦闘は、レベル上げのためのブーメランブロス戦と3体のボス戦(マクラディア、ネムルーゴ、ドリームクッパ)のみです。これらの内、ネムルーゴ戦とドリームクッパ戦に関しては、既に最適なターン数で撃破するルートが確立されていると考えられており、タイム短縮の余地はほぼ残されていませんでした。一方、マクラディア戦に関しては、更新の余地が残っており、立ち回りを見直すことで2分程度の短縮を見込めることが新たに分かりました。ここで鍵になったのは、ブーメランブロス戦における1つの工夫でした。

これまでマクラディア戦における戦略の最適化を阻んできたのは、「ルイージのレベルのブレ」でした。レベル上げのために行うブーメランブロス戦では、「ブーメランブロス5体」か「ブーメランブロス2体とマクラノアイ2体」のユニットとエンカウントします。従来のルートでは、ルイージのレベルが前者だと7まで、後者だと8まで上がっていました。レベルとPOWの数値がダメージ計算に影響する本作において、この1レベルの差は大きいものです。以前採用されていたルートは、レベル7の火力でもマクラディアを倒せるようなマージンを含むものでした。

この状況を変えたのが、ブーメランブロスへの先制攻撃方法を変えるというref氏のアイデアでした。レベル上げにおいては、EXPブーツ(履いているキャラが敵にダメージを与える度に獲得経験値が増える)というアイテムの効果を活用するのですが、従来は、ルイージにEXPブーツを履かせてマリオで先制攻撃を行っていました。これを、EXPブーツを履いたキャラで先制攻撃するように変更したところ、EXPブーツの効果による経験値ボーナスが増え、ブーメランブロス5体のユニットとのエンカウントでもルイージをレベル8にできることが分かりました(必要経験値1039に対して1040+αが保証)。

これにより、ルイージのレベル8の火力を前提としたマクラディア戦の研究が一気に進みました。マクラディア戦では、1673あるHPを300以下まで削ると、マクラディアが自爆フェーズに移行し、一切攻撃をして来なくなります。従来はシロップによるBP回復を2回挟みつつ、バイバイ大砲とフラコプターを5回ずつ使用することで、7ターンかけてマクラディアを自爆フェーズに導いていました。これに筆者が最適化を加えたところ、シロップ1個、バイバイ大砲3回、フラコプター6回の使用により、6ターンでの自爆フェーズ移行が可能であることが判明しました。

以上のルートをSnodeca氏に共有したところ、その日のうちに更なるアイデアを提案してくれました。それは、マクラディアを支える両翼を破壊するというものです。マクラディアが備える左右の翼はそれぞれ172のHPを有しています。従来のルートではルイージのレベルが8であっても、一度のバイバイ大砲で与えられるダメージは165だったのですが、ステータス振りを今まで以上にPOWに寄せることによって、ダメージが174にまで伸び、1発で翼を破壊できることが分かりました。

両翼が落ちて弱体化したマクラディアは、POWやDEFが下がるだけでなく、通常時のような2回行動が出来ず、弱いレーザー攻撃しかして撃ってこなくなるために、より早く安全に撃破することができます。Snodeca氏、ref氏と共同で開発した最新ルートでは、5ターンでマクラディアを自爆フェーズに導きます。マクラディア戦は、複数の即死攻撃を6ターン以上に渡ってカウンターし続けなければならない本RTAの鬼門でしたが、マクラディアに強攻撃する隙を与えない新ルートでは、その脅威は大きく弱まりました。

以上のルート変更と共に、Any%の記録は以下のように短期間で大きく更新されました。
・7月12日 3:16:23 by Snodeca、マクラディア7ターン自爆
・9月10日 3:15:57 by Tonkotsu、マクラディア6ターン自爆
・9月14日 3:15:32 by Tonkotsu、以下マクラディア5ターン自爆
・9月14日 3:13:09 by Tonkotsu
・9月17日 3:11:23 by ref417

更新2: メザメタウンにおけるグリッチ安定化

本作のAny%では、バイバイ大砲のアタックピースを集めるために、中盤にメザメタウンを訪れます。メザメタウンの入り口は倒木で塞がれており、本来はマドロミ砂漠の夢世界を攻略することで木が取り除かれて町に入れるようになるのですが、ストーリーをスキップするRTAにおいては、「Walk-through-Objects (WtO)」と呼ばれるグリッチを利用して、倒木をスルーしてメザメタウンに出入りします。

メザメタウンでWtOを仕込むためには複雑な工程を経由する必要があるのですが、中でも最も難しかったのが、マッスフアニーの夢世界を利用する「Walk-through-Walls (WtW)」の仕込みでした。WtW状態を得るためには、マッスフアニーのカットシーンの最後で、夢世界に突入するタイミングにぴったり合わせてマリオを隣の部屋に移動させる必要があります。

夢世界に突入するタイミングは、最後のセリフを送ってから約5秒後です。従来は、隣の部屋に向かうまでのマリオの通り道を大まかに固定することでタイミングを調整していましたが、スライドパッドのみで移動を行う本作の性質上、100%安定する方法ではありませんでした。

そこで導入したのがメトロノームです。セリフ送りのためのA入力と隣の部屋に向かうジャンプのためのA入力を、特定のBPMのメトロノームの音に合わせることにより、マッスフアニーを利用したWtWがほぼ確実に成功するようになりました。このグリッチは失敗すれば約2分ロスという、開始1時間40分地点で迎える大きなリセットポイントであり、従来の筆者の成功率は7割程度だったため、メトロノームの導入は、Any%の完走タイムを大きく安定させました。

今後の展望

Any%の記録は、現行ルートでも3時間10分切りまでは可能と見られていますが、3時間切りを達成するためには何か新しい技術が必要です。今のところ有望なのは、オハパークに向かう前の序盤の段階でパジャマウンテンに侵入してしまう「スーパーアーリーパジャマウンテン」です。パジャマウンテンへの侵入方法自体は存在しているものの、現状ではあまりに難易度が高いため、RTAでの実用化には至っていません。

4時間切りを可能にしたのは、2021年10月に発見された「ボールジャンプスキップ」でした。3時間の壁はいつどのようにして破られるのか、個人的にとても楽しみにしています。

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