【Meta Quest 2】充電の減らない有線Quest Linkの環境構築

[23/08/27追記] 本記事で紹介したUSBケーブルは半年程度で破損した。本ケーブルは現在Amazonではアクセスできなくなっている。

1. 要旨

Meta Quest 2は現在最も入手しやすいVR機器の1つである。
Quest 2をQuest Linkで長時間利用するプレイヤーにとって、Quest Linkを使用しながら本体の充電が間に合うかどうかは極めて重要である。
今回、PC初心者である筆者がPCにtype-C端子を増設し、充電の減らない有線Quest Link環境の構築に成功した。
よって、使用した環境や機器、使用感、環境構築までの経緯についてこの記事に記す。

2. 使用環境

  • Quest 2: Meta Quest 2 (128GB) 1年半ほど使用

  • type-C増設: 玄人志向 ASMedia社製 ASM3142搭載 USB3.2 Type-C×2 インターフェース PCI-Express×4接続 USB3.2C-P2-PCIE3

  • CtoCケーブル: 【3M】CHASEYUAN Quest Link 対応用 ケーブル USB C Type C

3. 使用感

データは記録していないものの、12時間程度使用してもQuest 2本体の充電残量は85%-90%程度を維持している。

ケーブルはかなり硬く、ケーブルを身体の後ろに回して使用すると右を向くときに首に抵抗を感じる。
座って使用する場合は、ケーブルを首の辺りで余らせるように身体の上に乗せておくと抵抗を感じない。
遅延などは特に感じない。

総評としては満足な環境であり、アクションゲームをしない人にとっては問題ないと考えられる。
身体を動かすアクションゲームを長時間プレイする人にとっては硬めのケーブルが煩雑に感じるかもしれない。
ただし、短時間であればAir Linkを使用すればいいので、多くの場合は問題ないだろう。

[23/08/27追記] 冒頭で述べた通り、本ケーブルは半年程度で破損した。症状としては頻繁にQuest Linkが切断されるようになった。おそらく接触の問題であるが、接点復活剤を使用しても改善しなかった。

これを受け、新たに同メーカーのこちらのケーブルを購入した。

こちらのケーブルはQuest Linkに使用はできるものの、PC側にUSB3.0として認識されなかった。おそらくケーブル側がUSB3.0対応していないと思われる(5Gbpsデータ通信って書いてあるのに……)。充電速度は充分なため、ちょくちょく出る画面の下側が異常に明るくなる不具合に目を瞑れば使用はできる、といった感じである。

4. 動機

そもそもなぜ充電の減らない有線Quest Link環境が欲しかったかをここに記す。

筆者はメタバースの住民であり、多くの生活時間をVRSNSの空間で過ごしている。
そのため、VR睡眠などをしてプレイ時間が非常に長くなることも少なくない。

そこで一つ問題があった。
筆者の利用しているVR機器はMeta Quest 2(旧Oculus Quest 2)である。
Quest 2はスタンドアロンで使用可能なVR機器である。
その一方で、有線または無線でゲーミングPCと接続することでPCVRのHMDとして利用(Quest Link)することも可能である。
Quest 2のHMDは充電式バッテリーを搭載しており、スタンドアロンとPCVRのいずれの場合も、充電が減らずに使用し続けるためには充分な給電能力が必要である。
筆者のPCにはUSB3.0 Standard Aの端子があるので、有線Quest Link自体は可能だった。
しかし、PCの端子側に充分な給電能力が無く、有線で使用していると充電が減ってしまい、長時間の使用ができなかった。
それゆえ以前まではQuest 2をAir Link(無線)で使用して、HMDを別途コンセントから給電していた。
多くの利用者に関してはおそらくAir Linkでも問題ないのだが、筆者の環境ではその利用に不満があった。
というのも、Air Linkの使用時にそれなりの頻度で重篤な遅延が発生していたのだ。
遅延と言ってもアクションゲームが不利になる程度のレベルではなく、1分以上前の視界がようやくHMDに表示されるという一般の使用が困難なレベルの異常な遅延が発生するのだ。
おそらくルーターの問題なので、ルーターを交換すれば解決する可能性はある。
また、このような異常はQuest LinkではなくVirtual Desktopを使用することで解決するという話も聞いた(未検証)。
Virtual Desktopは有料だが、今回有線化に掛かった総額より安いため、同様の異常遅延が発生しているユーザーは試してみる価値があるかもしれない。
しかし、筆者は宗教上の理由で可能な限り有線を使いたかったため、せっかくなら有線環境にしたいということで、充電の減らない有線Quest Linkの構築に踏み切った。

5. 要件

Quest Linkの接続およびQuest 2本体の充電にはUSBを用いる。
Quest 2側の端子はUSB type-Cである。
Quest Link接続はUSB3.0以上が推奨である。
一応2.0でも接続可能ではあるようだが、カクつきの原因となるので避けたほうが良い。

Questの給電に関してはこちらの記事が有用である。

充電が減らずにQuest Linkを使用するためには、3A(5V)=15Wがあれば充分である。

これらUSB3.xと給電規格の要件はPC側の端子および接続するケーブルの両方に適用されることに注意する。
また、環境とプレイスタイルにも依るが、ケーブルはPCの裏側と接続する場合は最低でも3mは欲しい。
一方で規格上ではUSB3.xは3mが上限らしい。それより長いものは規格外ということなので一応注意したほうが良い。

6. 製品の選択

上記の要件を満たすものであれば何でも良いはずなのだが、いかんせんUSB周りは規格が乱立していて罠が多い。
また、規格は満たしているはずなのになぜかその性能が出ないなどもよく聞く話である。
結局このようなものは上手く行った例を完全に真似するのが一番である(それがこの記事を書いている意義でもある)。

筆者はまずこちらの記事を参考にUSB CtoC接続を検討した。

筆者の環境ではマザボ、グラボ、モニターのいずれにもtype-C端子が無かったため、同記事記載のtype-C端子増設のインターフェースを選択した。
また、こちらの記事を参考にAnker製のCtoCケーブルを使用する予定だった。

しかし、環境構築時点でこの製品はAmazonで在庫切れであり、入手が難しい状態であった。

ここで選択肢がいくつかあった。

1つはCtoCを諦めてAtoCでの接続を試みることである。
AtoCのケーブルは比較的潤沢であり、要件を満たす長いものでも比較的簡単に入手できる。
以下の記事によればQuest 2はPowerIQによる高速充電に対応しているらしく、これを用いればAtoCでも充分な充電能力を確保できるはずである(未検証)。

ただ、個人的にはせっかく今のPCに増設するならtype-Cが良いという個人的な心情により見送り。

2つ目は公式のQuest Linkケーブルを使用することである。
安心と信頼のMeta公式CtoCケーブルである。お値段1万越え。

なんでも光ファイバーを使用することによって3mより長くても遅延の影響を受けないとか。
性能もさることながら何より絶対に公式規格内であるという安心があるため、検討の価値はあった。
しかし、これにも不安点があった。
最近筆者のTwitterフォロワーによる公式ケーブルの破損報告を聞いたばかりだったのだ。
公式ケーブルは光ファイバーを使用しているためか曲げに弱く、最小曲げ半径が設定されている(20mm)。
筆者はVR睡眠をすることがあり、意図せずケーブルに負荷を掛けるリスクがあった。
筆者は性能より耐久性を重視しているため、耐久性の低い高額商品は極めて嫌いである。
そのため、公式ケーブルはあまり取りたくない選択肢であった。

最後の手段は別のCtoCケーブルを試すことである。
いろいろな記事を探してみたが、Quest Link接続が報告されているケーブルはどれもこれもAmazonで在庫切れである。
仕方ないので、ここは冒険することにした。
今回選んだのは上記のCHASEYUAN製のケーブルである。
上記の要件を満たして長さも3m、表記スペック上は問題ないはずである。
何より価格が2000アンダー。ダメだったとしてもまだやり直しが効く水準である。

そんな訳で、ダメだったら諦めて公式買うかの精神で、このケーブルを試してみることにした。

7. 増設時の注意点

筆者はPC初心者であるため今回めちゃくちゃ勉強したのだが、上記のtype-C増設インターフェースにはいくつかの注意点がある。

まず1つに、PCIe x4スロットが必要である。
マザボにはPCIeスロットなるものがあり、ここにグラボ等を接続するのだが、このカードはそのスロットを1つ占有することになる。
筆者の使用しているマザボにはPCIe x16スロットが2つとPCIe x1スロットが1つある。
そのうちPCIe x16スロットの1つは既にグラボの接続に使用している。
x16スロットはx1、x4、x8と下位互換があるため、今回は余っているPCIe x16スロットを使用してこのカードを接続した。
また、筆者はPC初心者であるため混乱したが、PCIeスロットとPCIe補助電源は異なる概念なので注意。

もう1つに、このカードはPCIe補助電源ではなくSATA電源が必要である。
SATA電源とはSSDやHDDを動かすために必要な規格の電源である。
PC電源ユニットから伸びるケーブルのうち、先にL字型の溝があるコネクタが付いているものがこれである。
筆者の使用している電源ユニットには2本のSATA電源ケーブルが伸びていて、それぞれ3つのSATA電源コネクタが数珠繋ぎになっている。
そのうち1つはSSDとHDDに、もう1つは光学ディスクドライブに接続されていた。
いずれもPCIeスロットと距離があり、余っているどのSATA電源コネクタを使用するにも接続には工夫が必要であった。
そのため、筆者は上記のものと一緒にこちらのSATA延長ケーブルを購入した。

買ってから気付いたのだが、こちらの延長ケーブルは距離が20cmしか無い。
今余っているSATA電源コネクタから増設カードまで20cmでは足りなかったが、この商品は3本セットだったため、2本経由して接続することにした。
情報をやりとりするケーブルならリレー接続は不安だが、ただ電力を供給するだけのケーブルなら特に問題無い……と思う……。
あとPC初心者にはこれも注意なのだが、SSD等をマザボと繋ぐSATAケーブルはSATA電源ケーブルと異なる概念である。またこのパターンか。

8. あとがき

そんなこんなでAmazonから商品が届き、PC初心者が初めてtype-C増設をした。
ついでに壊れたケースファンも交換した。実は時期的なきっかけはケースファンの故障だった。ずっと遅延の中Air Linkでプレイしていたが、ファンも故障したことだし修理ついでにずっとやりたかったCtoCにするかという流れである。
そして使用感については上記の通りである。個人的には満足である。
この記事が同じくAir Linkの不調や有線Quest Linkの充電能力不足に悩む人の助けになれば幸いである。

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