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虚構の中の真実

 雨が降って、カミナリがなっていた。

ゴロゴロゴロ……

確かに、カミナリの音なのだが、ぼくには、どうしても龍が空の上を飛んでいて

大丈夫だ、オレにまかせろ!

と言っているように思えた。
 一体、何が大丈夫なのかさっぱり説得力がない。根拠のない、証明のできない、けれど確信というものは、どう共有すればいいんだ?

 どう共有することもできない。ありていにいえば、
お話の中の真実というやつだ。

 龍の姿はみえない。けれども、その子も感じることはできたようで、思いの外、僕の顔をみて、ニヤリと笑った。

 知ってるよ、分かっているよ、の合図だと思った。

 そこからだ。その子の母親もその子も多重音声で僕に届いてくる。実際に耳を通って、あるいは直接脳に届いて。
 外の音と内の音はちょっと被ったりするので、聞き取りずらいこともあるのどけれど、
ああ!この子は、こんなにポップで明るくおしゃべりな子だったのだな、とおもった。
 外の音と内の音は、反することはなかった。
外の音で気づいてないことを内の音で補足しているような感じがした。それは、特に母親の方で。
 その子に関しては、内なる音の方が自然、流暢。
違うところにいる空間(世界)が、僕の中で重なっているような感じで、まあ、ちょっとズレてもいるのだろうけど。
 その点だけ気をつけて、要するに混ぜないで、僕が処すればいいことなのだな。

 助けてほしい

そう、その子の内なる音が言う。

どうしたものでしょうね

と母親の外なる音が言う。

ごめんなさい、判断つきかねるので相談しています。

と母親の内なる音が言う。

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