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日常すらない日常

2月の中旬からリオナのリハビリ入院の付き添い入院を9週間し、その間に緊急事態宣言が出た。

緊急事態宣言があってもなくても、好きな時に、好きな場所に行けるわけではないリオナとの生活が5年。子育て家庭が子どもを遊ばせる場所や、在宅で子どもをどう見るかと試行錯誤しているのを私は傍観して過ごしてい

突然失った日常に戸惑い、みんなが大変であったであろうステイホーム期間。
遊びに行けない。 
人に会えない。
収入が減る。
休校中の子どもの3度の食事。
デイサービスに行けなくなった家族の介護の負担。
コロナ感染を避けて病院に行けない。

人それぞれ、困ったことは色々だろうけど、おそらく、困ったことのほとんどが、日常が日常じゃなくなったことだろう。
感染リスクの高い重度障害児の娘リオナの体調次第で、私は外出できない。入退院の多いリオナを育てながら働くことはできない。
保育所で感染症が流行ればリオナは保育所を休ませる。なので、3度の食事の用意は日常茶飯事。
お外で遊びたい7歳の長女は、小さい頃から私が長女の外遊びに付き添えないことを自然と理解しているので、外で遊べない、お友達と遊べないことも、それが我が家の当たり前となって育っている。


緊急事態宣言以降、訪問看護は日数を減らし、時短で利用。ヘルパー利用は一時的に止めた。もちろん保育所もデイサービスもお休み。
2月中旬から今日までずっと、全介助のリオナの介護をしている。
4月に退院してきてからは、休校中の長女とリオナと自宅で過ごしているが、そこまで苦しいことはなかった。理由は慣れているから。緊急事態宣言前と大きく変わったことがなかった。
物心つく前から家で過ごすことを強いられていた長女は、リオナの緊急の入院などで祖父母の家に預けられることもあり、学校に行けなくなる時もある。クラスでインフルエンザの子どもが出れば長女も学校を休ませる。そんな日常を当たり前に過ごしていた長女は、iPadの学習アプリで学習し、お友達と遊びたくなったら任天堂スイッチのオンラインで、オンラインになっているお友達と遊ぶ。

それに飽きたら1人マイクラで黙々とゲームをする。Youtubeを見ながらスライムの作り方を知り、材料を用意してほしいと頼んでくる。家には溢れる工作グッズがある。粘土、折り紙、画用紙、キラキラグルー、ダンボール、ラップの芯まで。
必死にリオナのケアをしている私の横で、長女はいつも自分の好きなことを家の中でしている。長女と家で過ごす時間が多いこともあり、一緒に学習ドリルをしたり、遊んだり、踊ったり、ゲームをしたり、ゴロゴロしたりと、私の親世代の人たちからは「考えられない。そんな生活をさせて。」と言われることも多かった。長女に申し訳ない気持ちがありながらも、リオナの命を守るためには仕方がない我が家の生活スタイル。

ステイホームと社会が言い始めた時にはすでにiPadで学習し、オンラインでゲームをし、zoomを繋げて人と話していた。オンラインで繋がっている友人たちはみんな、常に在宅生活をしている病気や障害のある当事者やその家族である。ご近所さんの子守りではなく、遠くに住んでいる友人たちが昼夜問わず長女の相手をしてくれていたのだ。リオナのケアや家事に追われてバタバタしている間も、長女はzoomやskypeで人に会って遊んでいたのだ。

学校もオンライン学習となり、私たち親子の生活は今の社会の「普通」になったのだ。外出できなくなった人々の生活が、私たち親子の「普通の生活」になったことで、初めてみんなと同じになれたような気にもなれた

緊急事態宣言が解除された今、当たり前だと思っていた日常を取り戻し始めた人も多いだろう。ステイホーム期間を苦しい、大変だと思った人も多かったであろう。けど、その苦しく、大変で外に出たくても出られない人がずっと昔から居ること。あなたの当たり前の日常ですら手に入らず生活している人もたくさんいること。今回のステイホーム期間をきっかけに知ってもらえたらと願うばかりである。

緊急事態宣言が解除され日常に戻ってからも、病気や障害など感染すると重症化しやすい人たちは、緊急事態宣言が出る前以上に外に出られない日常を送っているのだ。


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