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狩られる側の電撃戦 #高松宮記念 予想

 今年の高松宮記念は2018年のブリザード以来6年ぶりに外国馬が出走します。日本競馬は通常であれば、国内GⅠレースに外国馬が1頭出走した程度で、おいそれとタイトルを開け渡すようなレベルにありませんが、今年は様相が違うと感じます。

 当時のチャンピオンはレッドファルクスやレッツゴードンキ、ファインニードル辺りでしたが、今年はナムラクレアやママコチャ辺りが担うという印象でしょうか。当時と比較すれば、今年は数字として役者として物足りないのは否めずですが、平均的な追走力の低さも目立ちます

 香港のスプリント路線は日本とは比べ物にならないレベルの追走力が要求されます。スプリンターズSでマッドクールが逃げたジャスパークローネを捕まえ、香港スプリントではその逆となりましたが、ジャスパークローネの追走に対して負荷が上がったからというのが妥当な見方でしょう。

 それを当たり前のように追走して走るのがラッキースワイネスやウェリントンのトップスプリンターです。この2頭が出るなら最早日本馬を買う価値は無いまでありますが、ビクターザウィナーはそこには劣るかなという印象です。とはいえ、テンも速く追走力も高いため、レースの中心となるのは明らかでしょう。

 香港のレースは20年以上日本馬の狩場として用いられている側面がありますが、10F以下の競走においては、日本よりレース体系がシンプルなため、逆に香港馬に狩られたい放題になっていると感じます。香港はスプリントでデビューして鍛えますからね。基本的な追走力の次元が違います

 高松宮記念は狩られる側の立場なのか、今回は有力とされる10頭に絞って分析していこうと思います。例によって、評価は上から順に。今回のみギアチェンジ力を指標に加えています。ゼロ発進のスタート能力や瞬発力を示していると思っていただければ。

各馬見解

🇭🇰ビクターザウィナー

余力:10
トップスピード:9
ギアチェンジ力:12
持続性能:7
追走力:14
機動力:5

総合力評価:95点(SS+)
末脚評価:A+

 日本馬での追走力トップを迷いましたが、アサカラキングとジャスパークローネを9と設定した際にこの数字にしています。額面通りのレベル差です。香港馬はそもそも追走力が高いという話でもありますが、その香港で逃げ馬でもありますから、マトモに先行するなら圧勝まであると思います。

 香港は右回りのみのため、機動力に関してはかなり抑えていますが、中京コースであればシャティン競馬場よりRが緩やかなため、そこまで対応できないという印象は受けません。ゲートボーイが居ないスタートではありますので、出遅れ自体は念頭に入れる必要こそありますが、これまでのレースを見る限りではゼロ発進力も高いため、状態が悪くない限り労せず先行できるでしょう。

 ゼロ発進力が高いということは瞬発力が高いという事でもあり、香港スプリントやジョッキークラブスプリントでは、騎手の追い出しにかなり機敏に反応している姿が見受けられます。中京コースで追い出しが早いと捕まるリスクが上がるため追い出すタイミングには懸念があります。鞍上もこの1鞍だけのようですし。

 とはいえ、香港の一線級スプリンターをそこまで下げる要素は少なく、普段と同じレースが出来るなら最上位の位置付けになると思います。

ルガル

余力:10
トップスピード:8
ギアチェンジ力:7
持続性能:9
追走力:7
機動力:7

総合力評価:90点(S)
末脚評価:A+

 今後のスプリント界を背負って立つ馬だと思っており、前走のシルクロードSはかなり弾けました。1戦ごとに着実に成長しており、今年の高松宮記念は4歳馬を厚めに見ようかなと思います。

 末脚はそこまでですが高い余力を有しており、芝スプリントで勝利した2戦はいずれも苦しい流れを先行して勝ち切っている点からも、追走力はかなり高い馬だと思われます。時計勝負でもそれなりに戦えますが、道悪にも強いと思います。

 ゼロ発進力はそこまでなのでゲートが安定しませんが、外に逃げ馬と自分より後ろに付けそうな差し馬が居るのはプラスかと。リカバリはしやすい並びですし期待も込めて高い評価を下します。

ウインマーベル

余力:8
トップスピード:7
ギアチェンジ力:6
持続性能:9
追走力:8
機動力:8

総合力評価:85点(A++)
末脚評価:A

 3歳からそれなりのレンジでずっと走れていますが、昨冬から一皮剥けてより強くなって帰ってきました。末脚の威力は弱いですが、今回のメンバーでは(ビクターザウィナーを除き)抜けた追走力を有しています。

 阪神C、阪急杯と急坂小回りコースで連勝しており、その数字も悪くないことからも、今が充実期に入っていると感じますし、強気に乗っても大崩れが無くなりました。GⅠだと歯痒い結果は続いていますが、ここは待ち望んだビッグチャンスになると思います。

 懸念点は外枠ですね。連勝の内容は内で立ち回ってのものですし、外枠から力で押し切るまではイメージがしづらいのが難点です。道悪は苦手な可能性もありますね。とはいえ、勢いと出来の良さで帳消しにできそうな範囲にも感じますし、高く評価したい1頭です。

トウシンマカオ

余力:10
トップスピード:11
ギアチェンジ力:9
持続性能:7
追走力:6
機動力:6

総合力評価:85点(A++)
末脚評価:S+

 こちらも充実一途の連勝馬で、見た目以上に強くなったと感じます。レースの型が決まってからは堅実な内容が続いていますし、末脚の火力はこのメンバーでは最高級。乗り替わりが続いていましたが、満を持してのルメール投入も期待感の裏付けでしょう。

 昨春までは出脚の悪い所がありましたが、それも改善され力押しの目立つ内容でのレースが続き、本格化というに相応しい充実ぶりです。追走力が格段に高い訳ではないので、あまり前に飛びつき過ぎると失速する可能性もありますが、出遅れても差せるのは魅力。

 高速走破が得意なタイプなので道悪過ぎるとどうかという点はあります。左回りに良績が全くありませんが、2歳時から左でも好走していますし、昨年のレースはイレギュラーが重なった印象はあります。大外を引いたウインマーベルとは対照的に、念願の内枠を引いた点からも、これまでのレース以上に楽しみがあります。

ナムラクレア

余力:10
トップスピード:10
ギアチェンジ力:9
持続性能:7
追走力:5
機動力:6

総合力評価:85点(A++)
末脚評価:S+

 いつもの古豪です。2歳時ぐらいにこの馬の事を操縦性の高いメイケイエールと評した記憶がありますが、現在評としては突き抜けないものの堅実な馬になったという印象ですね。相変わらず地力は高いですし、崩れませんし、道悪も上手いです。

 末脚はトウシンマカオに勝るとも劣らない爆発力で、差すならやはり怖い存在です。たまに逃げるトウシンマカオと違って、こちらは差す内容に特化してのレースが殆どなので、スプリンターズSのように追走に力を入れると最後が甘くなってしまいます。この辺りが勝ちきれない要因でしょうか。

 堅実性があるように見えて結構ピーキーな性能なので、決め打ちするのが理想的でしょうね。位置を取りに行くとまた惜敗も見えますし。タイミング的には人気落ちになりそうですし、そもそも減点は少ない馬なので軸すぎるぐらいが丁度良いのかも。

ママコチャ

余力:8
トップスピード:9
ギアチェンジ力:7
持続性能:8
追走力:7
機動力:7

総合力評価:85点(A++)
末脚評価:A+

 お馴染みの白毛血統(白くはない)ですが、気が強い点とスピードレンジを生かして6F転戦するなりアッサリGⅠを勝利しました。まだまだ底は見せていませんが、特筆すべき強調材料が無いのも確かです。

 末脚も追走力もそれなりに有しており、俗に言う平均点が高いタイプで、乗り役の技量次第でパフォーマンスレベルが大きく変動する馬に見受けられます。川田騎手は白毛にもこの一族にも縁があり馬場読みも一級品ですから、外目の枠ではありますが、まあ不甲斐ないレースはしないのではと思います。

 懸念点は前走の敗因です。阪神Cは相当速い時計が出ましたが、3番手追走から最後は苦しくなりました。姉のソダシもそうでしたが、追走が苦しくなりすぎるとどうもパフォーマンスが落ちる傾向に感じますので、どの位置から競馬を進めるかは一つ鍵になりそうです。血統的に馬場は速ければ速いほど良いと思います。

マッドクール

余力:8
トップスピード:8
ギアチェンジ力:7
持続性能:8
追走力:6
機動力:8

総合力評価:80点(A+)
末脚評価:A-

 こちらも平均点が高いタイプで、断続的に流れるレースに強いと推測できます。自力で踏めない事もないですが、ペースの速いレースに強い訳ではないです。前走の香港スプリントも見せ場がありませんでした。

 中団ぐらいでレースを進めるのが追走力的に一番良さそうですが、別に末脚は全く強くないので後ろすぎるとゲームオーバーになります。道悪は上手いと思いますし、雨の影響で内馬場がどの程度まで走れるかにもよりますが、内でロス無く立ち回れるのもプラスだと思います。

 現状の評価としては、ママコチャ同様に特筆すべき強調材料が無い馬にはなりますが、ママコチャよりも追走力が無いのはネックです。高いレベルの追走経験が少ないので、香港スプリントの追走を糧に強くなっている可能性はありますし、人気以上に走る事も念頭には入れておきたいです。

ビッグシーザー

余力:7
トップスピード:8
ギアチェンジ力:7
持続性能:9
追走力:7
機動力:7

総合力評価:80点(A+)
末脚評価:A

 足踏みの期間は長かったですが、前走と前々走で2歳時のパフォーマンスから線で繋がるような内容で競馬ができたのは収穫だと思います。この馬もまた着実に強くなっていますし、楽しみな1頭です。

 前々走の淀短距離Sはまさに力任せの内容で、前走も直線に向くまでに不利がありましたがよく差しています。追走力もそれなりの値を担保できていますし、マッドクールと同型ではありますが、どちらを上にするかは好みの問題になるかなと。

 もう1段階力を上げる必要があるのはネックですね。とはいえ、既にGⅠ好走級のパフォーマンスはあるので、ここは狙い目と見て評価を上げたいと思います。マッドクールとは割とセットで買いたい。

ロータスランド

余力:8
トップスピード:10
ギアチェンジ力:9
持続性能:6
追走力:6
機動力:9

総合力評価:75点(A)
末脚評価:S+

 末脚のキレは一級品で、トウシンマカオやナムラクレアと違って決め打ちが確定しているので、爆発力すら担保されているという面白い馬です。ハマれば強いの典型例で、前走も絶望的な位置からよく追い込んでいます。

 内も捌けますし重馬場にも強いです。安定感には乏しいですが一発の魅力はありますし、穴で抑えておきたい1頭になります。頭までは難しいですが、しれっと3着ぐらいになら割って入れそう

 馬齢的なものなのか衰えを感じる点は否めませんが、混戦ならやはり侮れない1頭です。不発に終わる可能性も高いですが、完全に自分の形にしている岩田騎手の捌きには注目したいですね。こちらもメイケイエール同様引退レースです。

メイケイエール

余力:6
トップスピード:11
ギアチェンジ力:7
持続性能:8
追走力:5
機動力:6

総合力評価:70点(EX)
末脚評価:S+

 この世代の一線級ではほぼ最後に引退となります。GⅠは1つや2つ取れると思っていましたが、中々巡り合わせというのも良くなかったですね。重賞6勝と、並のGⅠ馬でも中々出ないレベルの成績は輝かしいです。名残惜しいですけどね。

 最高出力は4歳時のセントウルSで、このレベルのパフォーマンスが安定して出せていたならスプリントの絶対的存在として君臨するレベルです。次点のパフォーマンスはシルクロードSですが、これも2年前。トップレベルの末脚とスピード性能を持っていますが、丸1年半以上良いとこなしになっています。

 気性的なものも大きいですが、追走力を引き上げられなかったのも大きいですね。そもそもマトモに走っているかどうかというのが焦点になるので、ピークアウトしている可能性に関しては言及しないでおきます。上手く全てが噛み合うなら、ラッキースワイネスやウェリントン辺りとも渡り合えるかと。起こるかどうか分からない一発は警戒したいです。

予想・買い目

◎ルガル
○ビクターザウィナー
▲マッドクール
△ビッグシーザー
☆ロータスランド


予想軸
能力20:TB40:展開40

 内の馬場がどの程度掘れるかにはなりますが、ビクターザウィナーを除き能力差が少ないメンバーという点を考えると、どの程度まで上手く立ち回れるかというのがポイントになりそうです。

 最高評価の2頭は追走力が高いので据え置きですが、他馬は道中の位置取りでパフォーマンスが大きく左右されそうな構成のため、基本的に内枠有利と見てレースを考えたいと思います。

 ルガルとビクターザウィナーは追走負荷が高いレースで勝利しており、自力から考えても最上位と判断しています。このメンバーの中だとスプリント戦線で戦う能力のバランスが一番良いですし、2頭とも軸で考えます。

 3番手評価は最後まで迷いますがマッドクールにしました。好走に限定して、6Fで追走負荷が高かったレースはルガルのシルクロードSを除けばママコチャ・マッドクールのスプリンターズSとトウシンマカオの函館スプリントSに限定されます。勿論それ以上の負荷が掛かっているのが香港スプリント。その経験値が出れば人気以上の好走が見込めそうです。

 4番手評価にビッグシーザーです。抜群に目立つ数字こそ出ていませんが、中京2歳Sの数字から逆算すればもう一つ成長してもおかしくないように感じますし、ここ2走の質も高いです。他馬の最高パフォーマンスは数字を出したタイミングが古い場合も多いため、ここは成長力に期待です。弱いと言われている4歳の躍進を信じます。

 穴評価でロータスランドを。衰えはギリギリ感じないレベルですし、追走負荷が高くなりそうな構成で差すのであれば、決め打ちの方が狙いやすいと踏んでいます。人気落ちになるタイミングからも狙いやすい1頭かなと。

 ウインマーベルはやはり外枠というのが気になりますね。連勝の内容も7Fですし、4歳から6Fより7Fの方が好走が目立っている点からも、6Fの外枠というのは割り引きたいと思います。後はナムラクレアとトウシンマカオですが、追走レンジを担保できているトウシンマカオの方は馬券的に厚めに買おうと思います。ナムラクレアは決め打ちするかどうかという所。先行するなら厳しいイメージですし、最高出力も1年前のシルクロードSと好走している割に強くなっている印象を受けません。

買い目
⑥-⑩-①②③⑤⑧⑪⑫⑭⑯ 三連複9点
①②⑤⑥⑩⑫ 馬連ボックス15点
⑫ 単勝1点
①-⑥ ワイド1点

かなり多く買いますが、ガミはギリギリカバーする計算です。2点以上の的中を狙います。

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