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2024スプリンターズS 回顧+反省〜適性ラップで走るということ〜

今回から、実験的に回顧の記事も書いていこうかと。予想記事内で完結させようかと思ったものの、既に1万字以上書いた予想に回顧も数千字追記するのが面倒なためこちらに。回顧ぐらい無料の方が良いでしょ。予想記事の有料部分に関しても、レース後1週間程度で無料公開にする予定です。

レースの全体像として幾つか書いた後に、上位入線馬から順に短評を記載していきます。その前に、個人的な予想稿の反省会からやります。負け惜しみがあったとしめも短く済むように書けば良い構成すれば問題ナシという事で。どうでも良い方は読み飛ばして頂いて結構です。

予想稿はこちらからご覧ください

馬券収支と反省

まずは予想印と購入馬券、収支から。

これを見ても明らかですが、購入馬券は完璧すぎて反省の余地がありません。単勝の資金配分計算が間違っているので実質的な回収率はもう少し下がりますが、本命と対抗が1・2着は満足の行く結果となりました。

勝因としてはやはり、適性に対する騎手の思惑を読み切ったのが大きいです。これは後ほど回顧部分で書きますが、上位入線馬に騎乗したジョッキーは明確な意思を感じるレース内容で、今回はそれが明暗を分けたと思っています。西村騎手、菅原騎手はこの辺りを相当に意識されていたと思いますし、私としても、意志の強さを理論的に導き出せたとも思っています。

常態的にこういう予想は使えないですけどね。ジョッキーの思惑なんてのは、上位層の能力に差の無いメンバーで、展開を重視した予想を立てた上で、優劣を付ける際のエッセンスでしかありません。ジョッキーの乗り方一つで馬券が取れるなら、ルメール騎手がイクイノックスに対し「ポニーみたい」とは言わないはずですから。

「ピューロマジックが爆速で逃げて後続がスロー」なんてのは想定される展開の中でも可能性が薄い部分。上位5頭ぐらいなら、100回やって50回ぐらいはルガルかトウシンマカオが勝っていると思いますが、正直どう入れ替わってもおかしくない並びでした。ママコチャやウインマーベルを予想した人が外したのではなく、あくまで「たまたま」来なかっただけ。その「マグレ」を狙って出せた要因というのを、回顧で記載していこうと思います。

一応今後に向けた反省として、今回のような成功体験をあくまで「今回だけ」と割り切る事が急題なのかなと。思いきり気が緩んで外食していましたが、こんな時こそカップ麺で気を引き締めるべきだったのかもしれません。久方振りの牡蠣は絶品でした

牡蠣の酒蒸し(写真上)は素晴らしかったです



全体回顧・ルガルの勝因

レースラップ

11.8-9.9-10.4-11.0-11.6-12.3

勝ちタイム 1:07.0(32.1-34.9)

ピューロマジックのテンの速さが桁違いで、前半600mは驚異の32.1秒。北風が吹いていた分参考記録に近い所はありますが、それでも強度を非常に上げて逃げていたのは事実です。2F目の公式ラップ9.9秒は凄まじいですね。ここまで速いと馬の後ろで我慢どうこうの話ではなく、今後のスプリント界で必ず逃げるであろう存在になるかと思います。

ビクターザウィナーはトップスタートでしたが無理せず控え、押して行ったウイングレイテストを前に行かせて勝ち馬のルガルは3番手、映像を見る限りどう見ても先頭から6馬身ぐらいの差なのですが、公式の前後半は32.8-34.2なんですよね。とはいえ、3番手以降は相当に楽が出来ていたのは事実です。以下に予想記事内で算出したオーバーペース基準値を勝ちタイム1:07.0に置き換え、公式のラップタイムとの差で算出したものを掲載します。少し見辛いですが、入線順に並び替えてあります。

・ルガル:32.4(32.8/+0.4
・トウシンマカオ:33.1(33.5/+0.4
・ナムラクレア:33.4(33.9/+0.5
・ママコチャ:32.6(33.2/+0.6)
・ウインマーベル:32.3(33.6/+1.3)
・ビクターザウィナー:32.2(33.1/+0.9)
・サトノレーヴ:32.6(33.6/+1.0)
・ピューロマジック:32.1(32.0/-0.1)
・エイシンスポッター:33.8(33.8/+0.0
・オオバンブルマイ:34.0(34.3/+0.3
・マッドクール:32.7(33.4/+0.7)
・ムゲン:33.7(34.0/+0.3
・モズメイメイ:33.0(34.1/+1.1)
・ウイングレイテスト:32.2(32.5/+0.3
・ダノンスコーピオン:33.3(34.3/+1.0)
・ヴェントヴォーチェ:33.5(33.6/+0.1

予想した追走限界値(公式ラップタイム/ラップタイム-限界値)

ピューロマジックのみラップタイムとの差がマイナス値となっていますが、他馬は全てプラスの値を示しています。つまり、殆どの馬にとっては今年のレースはオーバーペースでないという事。後続勢は私の見立てではほぼ余力十分にスパートができる状態だったと推察します。勿論上がり勝負を苦手とする馬も居ますが、紛れが起きるようなレース展開ではないですし、上位入線馬に関しては素直に実力を評価して問題無いです。ルガルがキャリアハイの指数を叩き出していると思いますので、追走限界値に0.1〜0.2秒ほど補正を掛けても良いと思いますが、それでもピューロマジックとエイシンスポッターの2頭しかマイナスにならない計算です。

その上で注目したいのは太字の部分。追走限界値との差が0.5秒以内の馬(マイナスを除く)となりますが、上位3頭はこの値が小さい=良い塩梅で走らせている、という事になります。速い流れはともかくとして、遅い流れなら余力自体はある以上、他馬が絶対に苦手なペース配分だったかといえば違いますが、こと上位3頭は、自身の力を存分に発揮できるレースをしたのではないかと推察しています。

たまたまこうなったという見方もできますが、ピューロマジックとビクターザウィナーの競り合いが想定される並びで、大多数の馬が自重した点を考慮すれば、意識的に前に出して行ったルガルはスタートしてから400m地点で既に圧倒的なマージンを築けています。

赤丸:ルガル 青丸:ママコチャ

前述の通り、ルガルですら追走限界値は超えていないレベルで前半を走っています。前にも後ろにも横にも馬が居ない状況でマイペースの単独走、ルガルは1200mの指数値が他馬よりやや抜けているので、正直負けようが無いレース運びになりました。

西村騎手は逃げようかというぐらいのトップスタートからしっかりと位置を取っての無いようですので、シンプルに作戦勝ちと言わざるを得ません。この位置にママコチャやサトノレーヴが居なかっただけの話で、ストレスフリーな状況が出来たのは運ですが、ちゃんと狙ったが故の天運だったと思います。

前述の追走限界値の一覧を見れば分かりますが、ルガルは追走限界値が5番目に高い馬で、仮にこの位置にママコチャやサトノレーヴが居たとして、勝っていたかというのは些か疑問です。600m地点でママコチャとルガルは4馬身程度は離れているので、オーバーペースとなる可能性は十分にあった状況。4番手がビクターザウィナーになるので、その辺りが追走レンジとしては妥当なライン。この位置を取るには、スタートから400m区間で逃げ馬とも競り合うようなダッシュが必要になり、ルガルはそれができる馬だったというのも勝因の一つ。

私は高松宮記念の予想稿にて、ルガルを「スプリント界を背負って立つ馬」と評しており、今回の勝利で名実ともにトップスプリンターの仲間入りを果たしましたが、今後もその評価は揺らぎません。出走馬の中では最長のブランクがあり、前走で骨折しての休養な訳ですから、十全なデキではなかった可能性が高いです。その中でキャリアハイとなるパフォーマンスは額面以上に評価して良い内容だったと思います。

ゼロ発進が上手でないタイプな以上、今後もゲートの問題は付いて回りますが、暫く混戦が続いているスプリント界で久し振りに力押しで勝てる馬が現れたという印象です。まだ4歳で伸び代はありますし、今後は海外遠征なども視野に入ってくるでしょうから、チャンピオンホースとして育っていって欲しいです。断続的に流れるスプリンターズSでは無類の強さを誇ると思いますし、香港でもやり合えるのではないかと。「あの時は何故9番人気で買えたんだ…」と言わしめるような馬になっていくと信じています。ルガル陣営および西村騎手、本当におめでとうございます。

以後は2着馬以降について短評を記載していこうと思いますが、総評として力負けの馬が多かった印象です。これから伸びてくるであろうピューロマジック、デキが十全ではないであろうルガル、2歳ですがカンナSを圧勝したエコロジークのような強力な自力先行型スプリンターに対し、現5歳馬は指数こそ高いですが好走できるレンジが狭く、所謂「展開待ち」となるレースが増えてくるように感じます。前者が幅広い訳ではありませんが、自力でそういうレースを作れる点で、他馬より有利になる状況です。いよいよ、世代交代というべきでしょうか。毎年起こっている気がしないでもないですが。


2着馬以降の敗因と見解

●トウシンマカオ

スタートで出して行った際はペースが危ぶまれましたが、前半600mは33.5秒と追走限界値は超えないレベルの配分。4コーナー付近でウインマーベルが外からウインマーベルが動きで行きましたが、その間もしっかりと溜めた分ラストスパートでは軽く差し返しています。終始内に拘り、距離損もほぼ全く無いというコース運びでしたから、菅原騎手の好騎乗が光る結果となりました。

敗因としては、上記の画像からも明らかな通り、内の馬場が僅かにキックバックが出る馬場で、通った馬場状態が悪かったという可能性があります。4着ママコチャはトウシンマカオより完全に前に出た後も、内1頭分は避けてレースを進めています。当日の中山競馬場は午後から僅かながらに雨が降り、外回りは1鞍ありましたので、その影響はほんの僅かにあったかもしれません。

あとは、スタートから400m地点までに相応のダッシュをしたという事ぐらいでしょうか。スタートから400mぐらいまでの動きを見ると、ナムラクレアはしっかりと下げていますがトウシンマカオは位置をキープしています。序盤に僅かに脚を使った分、最後に差し切れなかったという可能性はあります。敗因と呼べる敗因はこの辺りですが、正直完璧に乗った内容であるため、これ以上を求めるのは難しい状況です。重賞3勝と力はトップクラスなのですが、純粋な力差として今後も歯痒い結果になりそうではあります。


●ナムラクレア

レース後コメントで横山武史騎手が「トウシンマカオの位置取りなら…」と仰っていましたが、正直位置取りは完璧だったと思います。この位置からでも差し切れる脚は持っていますし、仮に馬群が凝縮したとすればあの位置がパーフェクトになる訳ですから、馬群が開けたのはあくまで結果論。少なくとも昨年のこのレースは、この位置取りであれば勝っていたと思っています。

予想稿でも書きましたが、この馬は速いペースを自力で差しに行くのが不得手です。相応に力は出し切ったと思っています。トウシンマカオと同じで、これ以上のパフォーマンスは求めにくいのが現状。馬場不問で末脚値がトップになるので、現役を続けているか分かりませんが、来年の高松宮記念でまた狙いたいです。意識的に溜めないとレース運びが難しいコースなら割引が必要になってくるかと。具体的には中山、小倉、函館、札幌、福島辺りです。それ以外のコースなら本命でも良いのではないでしょうか。


●ママコチャ

予想稿では「浅いキャリアが故に脆さも内包している」と書きましたが、まあ出たんじゃないかと思います。追走限界値から仮定すれば、ビクターザウィナーの位置取りがパーフェクトになると思いますし、ルガルのように出して行けなかったのは、そういう経験をさせていないからというのが大きいです。

経験を積む事でまだまだ強くなれる馬だと思いますが、追走力が問われすぎるようなレースはやはり向かないのではないかなと思います。断続的に流れるレースで立ち回りを生かすとなると、やはりスプリンターズSにはなるのですが、思った以上に好走できるゾーンは狭いですね。スローペースになりやすいので何とも言えないですが、ヴィクトリアマイルが今年のような流れであれば勝ち切っていた可能性があるので、もう一度マイルに転戦してみて欲しいです。香港マイルとか良いんじゃないでしょうか。


●ウインマーベル

消耗戦に強い馬なので、今回の位置取りはあまり向かなかったですね。殆どの馬に余力がある状態とはいえ、末脚のレベルはそこまで高くありませんから。最序盤のトウシンマカオとの競り合いで前を主張していれば、もう少し良い着順は望めた可能性はあります。

ここで引いたのが5着の要因なのではないかと

予想稿でも書きましたが、この馬は1400mで取れている位置が1200mだと取れていません。勿論馬なりで9.9秒を出すピューロマジックに並べという訳ではありませんが、スピードレンジが1200mだと短いのだと思います。タイム換算としては同じなものの、位置取りに使う脚は1200mの方がより消耗するというような印象。シンプルなスピード勝負だと力負けなのではないかと思います。消耗戦となる香港スプリントや1351ターフスプリントは合うと思いますので、海外転戦も視野に入れて良いのではないでしょうか。


●ビクターザウィナー

トップスタートを決めたにもかかわらず下げたのは好判断でした。ピューロマジックの初速が明らかに違っており、仮に競り合っていればチェアマンズスプリントのようにもっと大敗していたでしょうから。加速力が非常に高い馬で、それがゼロからトップスピードに乗せるスタートに全振りされている形になりますが、今回のように控えると良くないのかもしれません。

前述のように加速力は高いのですが、それ故にラストスパートで一気に脚を使ってしまうという弱点も内包しています。先頭ないしルガルとの差を考慮すれば仕方無いスパートだったとは思いますが、ラストはやや失速気味。別カテゴリになりますが、イメージとしてはジャックドールが近く、テンの速さで先頭に立って、余力十分に持続的なスパートを掛けるのが合うタイプなのかもしれませんね。そうなると今後はピューロマジックが参戦する日本スプリントは鬼門です。


●サトノレーヴ

ここまで負ける馬だとは思ってなかったので、シンプルに追走位置や外を回した点より、デキの問題だった可能性が高いです。中間に5F63.3-3F34.6-1F11.2という超抜時計を叩き出しましたが、ややオーバーワークだったのかもしれません。とはいえ、1200m戦においての指数推移は目を見張るものがあり、混戦のスプリント界で唯一順調に成長している点は他馬にはない強みとなりますから、今後も目が離せない1頭です。別定戦になるシルクロードSは良いと思います。ルガルやトウシンマカオが出走するかは疑問ですが、ハンデ込みで指数上は五分になりますし。完全に度外視して良い内容かはまだ保留。


●ピューロマジック

個別ラップ11.8-9.9-10.4-11.0-11.6-12.8は見事というほかありません。同時期のアストンマーチャンには匹敵しないまでも、その次ぐらいには高い自力性能を有していますから、今回は単にオーバーペースとなっただけですが、馬なりで前半32.1を刻める以上は、いずれこういうラップでも減速率を抑えられると思います。

馬の特性的に逃げるしかないですが、いずれはトップホースになる馬だと思います。直近のスプリンターで、4歳春までに追走力でスプリント重賞を勝った馬はピクシーナイト、ルガル、ピューロマジックの3頭しか居ません。ピューロマジックはその中でも群を抜いて追走力に優れており、現役馬なら太刀打ちできる相手がゼロの状況。コース不問で強いと思いますし、来年は更に良い着順も望めると思いますが、道悪には弱そうなのがポイント、初戦のダートと2戦目の札幌(重馬場)では、あれだけの初速があり距離も長いのに逃げる事すらできていません。ダートでも余裕で逃げるモズスーパーフレアと違い、馬場の荒れやすい高松宮記念は鬼門になる可能性があります。


●オオバンブルマイ

出遅れがあったものの追走限界値はギリギリ。本質的にスプリントが合っていない可能性があります。レース後に武豊騎手が「ペースが速かった」と仰っていますが、5番手以降は緩んだ最後方なら、スプリントでは展開待ちとなるレースしかできないでしょう。とはいえ、上がりは2番目で11着と大きくは負けておらず、スピード能力自体は高い馬にはなりますので、1400mないしマイル戦でまた見直したいです。ただこちらは3歳のトップ層が超強力。自力のレース運びができないと今後も歯痒い結果に終わると思います。


●マッドクール

自身の追走限界値は超えていないという読みでしたが、坂井騎手のレース後コメントからは「ペースが速かった」との談。予想稿では春から「香港のレースを経て追走力が向上しているのでは」と書いていますが、レースの体を成していないため経験値としてはカウントできないものだったという事でしょうか。追走力のあるメンバーが揃わない昨年までと異なり、今後はピューロマジックやルガルのような、強力な自力先行型スプリンターと対戦しなければならない状況。高松宮記念で高い末脚を発揮しているので位置取りの問題にも感じますが、今後のレース質を見直す岐路には立たされているのではないかと思います。馬場不問で高松宮記念も合いますが、今回の大敗は度外視できず重く受け止めなければなりません。



以上です。それなりに高く評価したウイングレイテストについても書こうと思いましたが、シンプルに追走負けのため割愛します。

最後、香港遠征について少し述べておきます。香港に行って面白そうな馬を挙げると、追走力型スプリンターであるルガルウインマーベルが良いと思います。カリフォルニアスパングル以外の超級スプリンターであれば、割と撃破しても良いと思いますし、そのカリフォルニアスパングルも結構ムラがあるタイプですので、2頭ともチャンスは十分。指数値的にはやや物足りないですが、激流になりやすい香港でも自力勝負ができるという点は魅力的。国内での馬券発売があっても過小評価されそうなので、普通に軸で買いたいと思います。

ここまでご覧頂きありがとうございます。予想の参考に役立てて頂ければ幸いです。

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