![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/117624124/rectangle_large_type_2_ed2dce292b65dde33d14a3d862e7f736.png?width=1200)
「俺たちの原稿はこれからだ」 2話:二次元殺法コンビ【漫画原作】
〇絵画教室・室内
向き合う創と育絵。
と、育絵に女子生徒が話しかける。
育絵「ほんと、久しぶりね」
女子生徒「育絵、知り合いなの?」
育絵「うん、幼馴染」
女子生徒「そうなんだ」
創「(育絵に)お前、漫…」
と言いかけてやめる。
創M「そうだ、この世界は漫画はない。だからこいつが漫画家じゃなかった」
改めて創、育絵に、
創「お前、ずっとここ通ってるのか?」
育絵「そうだけど?」
創「そうか…よかったよ、今も絵を描いてて」
育絵「なんか…すっごい大人じゃん。昔はすぐ否定してきてたのに。なんでそんなずっと絵描いてるんだよ、同じやつ。バカじゃん? みたいな」
創「あったね。全面的に悪いね」
育絵「そ、訴えたら完全勝訴よ」
創「…ごめん」
育絵「許す」
育絵、笑顔を浮かべる。
〇路地
を歩いている創。
足取りがとても軽い。
創「それにしても、絵下手だなー自分」
反省のハズなのに、笑顔を浮かべている創。
創「描くしかないけど…ずっと描いたら上手くなるのかね…」
と後ろ向きな言葉と裏腹にスキップを踏む。
創「…良かったな、今日あそこに行って」
笑顔の育絵のイメージ。
〇創の自宅・中(夜)
創、タブレット(に描かれた自分の漫画)を見つめている。
創「ここ、本当は何て書いてあったっけ…」
その直前のコマには敵らしき人物が「お前ひとりに何が出来る!?」と言っている。
創「「一人」いや「二人」…コンビ…」
とつぶやいた所で、三葉のインタビューを思い出す。
三葉の言葉は
『三葉:コンビで漫画を作るのは無限の可能性があります。ぜひ挑戦してもらいたい。』
という内容。
創「…コンビ」
再び笑顔の育絵のイメージ。
創「あいつとコンビ組んだらどうなるんだろ? 育絵に作画を担当してもらったら、絵の方はかなり良くなる」
と考えた所で、育絵の漫画を思い出す。
そこには「水木先生の次回作にご期待ください」という一文が書かれている。
創M「あれ以来、育絵の作品が世に出る事は無かった。ここ数年は何も音沙汰がなかった。最後の絵、明らかに荒れていた。あいつを漫画の世界に誘ったら、またそうなるかもしれない…」
創、自分の漫画を手に取り、
創M「それに今のこの作品じゃ、漫画の面白さを伝えるのは難しいかもしれないし。とにかく、今は自分の腕を磨く。絵だけじゃなくてストーリーの事も勉強しないと」
〇各所
デッサンの勉強や、物語に関する本を読んだり、仕事でうつらうつらしたり、様々な創の様子をテンポよく見せる。
〇喫茶店・中
タブレットとにらめっこする創。
創M「ここどんな風に展開したっけ…」
一か所、描きあがっていないコマがある。
敵と対峙する正義の集団。
その一人が仲間に「お前たちは逃げろ。こいつには勝てない」というセリフがあり、その仲間の返しが空欄となっていた。
創M「三葉先生ならどんな風に言う…?」
創、セリフを色々考えてみる。
創M「「水くせえ、仲間だろ」…「悪いが断る」…「お前の指示にほいほい従ったりはしない」…」
言ってみたもののどれもしっくりこない。
天井を見る創。
ふと浮かぶ、幼い頃の創のイメージ。
何かから逃げている様子。
創「逃げれば楽なのにな…楽? 逃げてどうするんだよ…」
言ってハッとする。
そして、「逃げてどうするんだよ」というセリフを書き込む。
創「…できた、完成だ」
〇創の自宅・中(夜)
PCの前で緊張の面持ちの創。
創「よし、UPするぞ」
と操作をする…が、あっけにとられる。
創「無い、漫画サイトが…ピクスブも無い…」
さらにカチャカチャとマウスを操作し、
創「あった。ツイストーはあるんだ…じゃあここに…」
と、マウスに指をかけるが、なかなか押せない。
不安な表情。だが、
創「…逃げてどうする」
と覚悟を決め、ボタンを押す。
一気に脱力し、床に大の字で寝る。
創「…お前ら、知らないだろ、漫画を。びっくりしろよ」
× × ×
数時間後。朝日があがり、日が差し込んでいる。
PCを見つめる創。
創「なんで…」
創の漫画には全く反応が無かった。
一つ、コメントがあるのみ。
それは「なんですかこれ?」とだけ書いてある。
創「ウソだろ…」
〇土手
たたずむ創の姿。
目の前にタブレットが置かれており、漫画が映っている。
創「何がいけないんだ…いや、まだクオリティが足りてないんだろうけど、にしても…」
と、その背後から育絵の声。
育絵「何それ?」
創が振り向くと、育絵の姿。
慌てて漫画を隠す。
創「な、何でもない…」
育絵「じゃあ何で隠すの?」
創「見せたくない。なんでもないから見てもしょうがない」
育絵「…逃げてどうする」
創「うるせ、放っとけよ。育絵はさ…育絵は才能が…」
と言いかけて必死に黙る。
創「…言わない。僕はもうそういうの言わない」
育絵「いや、そうじゃなくて、「逃げてどうする」そう書いてあったじゃん」
とタブレット(の漫画)を指す。
創、驚いて、
創「な、なんで…!?」
育絵「教えてほしいんだけど、なんですかこれ?」
という育絵の声と共に、漫画についたコメントの「なんですかこれ?」がフラッシュバックする。
創「もしかして…?」
育絵「別の人間なのに顔が同じだしさ、言ってる言葉も時々不自然だし、絵が枠に囲まれてるけどなんか見づらいし、左手が右手になっちゃってる絵もあったし…でも、なんか知らんけどわくわくした、めっちゃめちゃ」
創、あっけにとられている。
育絵「教えてよ、私にも。私も色々教えるから」
創「ああ、教える」
創、小さく喜び、
創「そうだ、間違ってない。こうやっていけばきっと人気も出る。そしたらアニメにだって…」
創の言葉にきょとんとした育絵、
育絵「…あにめって何?」
創「はあ!?」
2話 終わり
よろしければサポートお願いいたします。いただいたサポートは大切に使わせていただきます。