from バク宙 to バク宇

 昔、本を読んでいてそれなりに衝撃を受けたことがありまして。「宇宙」という言葉、空間を意味するのだと思い込んでいました。

 でも「宇」は確かに空間を意味しますが「宙」とは往古今来つまり時間のことを意味しているそうです。では、くるりと空中で体が回る意味であったはずの「バク宙」とは時間をバックする、、、タイムマシンということですか?無事戻ってこられるか。ちょっと心配です。

 この根拠は中国の古典で『荀子』『荘子』『淮南子』とかいうタイトルの読み方すらハードルが高い本がありましてそれに書いてございました。「宇っていうのは四方上下っていうことで、宙っていうのは往古今来ということね。」「四方上下往古今来のルールを解き明かして(紘)真理、究めたるわ。」とか仙人系のやる気に満ちております。

---根拠--------------------------
『荀子』解蔽篇「大理を制割して、宇宙も裏(つつ)まるる」
『荘子』外篇知北遊二十二「かくの如き者は、外宇宙を観ず、内、太初を知らず」
『荘子』外篇「実(み)つることあって、而して処なきものは宇なり。長ずることあって而して本剽(始めと終わり)なきものは宙なり。」
『荘子』郭象(中国晋代)の註「宇とは四方上下ありて、しかも四方上下窮まる処あらず。宙とは古今の長ありて、しかも古今の長、極まりなし。」
『淮南子』原道訓「宇宙を紘して、三光を章(あき)らかにす。」
『淮南子』高誘(中国漢代)の註「紘は綱なり。四方上下を宇と曰ひ、古往今来を宙と曰う。」----------------------------------

 だから「宇」「宙」「紘」の意味を考えると、

 八紘一宇とは、「世の中のあらゆるルールを極めたら四方上下だぜ。」っていう事ですネ。できの悪いインターネット翻訳サイトに言葉を突っ込んでみましたって感じが出てしまいます。宙はどこに行ったのか。今を生きています。ヤンキーみたいでもありますね。


 この熟語が初めて出てきたのは日本書紀らしい。漢字の本場では通用しない熟語だから当然です。

 おそらく中国の文化に憧れていた時代だから色々な本が輸入されたけれども十分読み込めなかった、だから誤用してしまったのではないでしょうか。「経済」みたいにその後日本で意味が通用するようになったからいいかとも思いますが、言い出しっぺの気持ちを考えるといたたまれません。

 私実は二十歳くらいまで「雰囲気(ふんいき)」を「ふいんき」と読んでいました。三十過ぎた今「君、昔ふんいきのことをふいんきって読んでいたよね笑。」とか友達に言われたら逆切れするか枕に顔をうずめて発声練習をしてしまう自信があります。
きっと八紘一宇とか言葉を作っちゃった人も天国の飲み会で時々いじられていてもう忘れたいのに、たまに現世でもほじくり返されていると知ったら。。。

 こんな悲劇が他にありますか。人の噂は七十五日って嘘やったんや。。。

 みなさんもう忘れてあげましょうよ。



#八紘一宇





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