「頭のいい悪者たち」と「何もやり返せない僕たち」 - 裁かれない犯罪
つい先日、外国の友人からすごくムカつく話を聞いた
当人のプライバシーを守るため、ここでは起きた事件を「銀行」で起きた出来事に置き換えさせていただく(また、これは日本で起きた出来事でもない)
実際は銀行に関係はしていないのだが、僕の友人が体験した出来事の大まかな枠組みは同じである
「俺を殺したらこいつも死ぬぞ」
その友人にはずっと使い続けていた銀行口座があった
ある日、少し特殊な手続きをする必要があり、銀行口座の情報を公的機関に提出したところ、その口座に不審な情報があったと言われたそうだ
後日、確認のために最寄りの銀行支店に向かい話を聞くと、なんと関係のない複数人にその口座の情報が使われていたのだという
その支店の行員や公的機関の職員に話を聞くと、明らかにおかしな状況であり、彼らの話によると、友人が口座を開設したときの担当職員がいくらかのお金を受け取って情報を横流しした可能性が高いのだそうだ
これは明らかな犯罪であり、情報を横流しした行員は罰せられてしかるべきである
しかし、友人は警察や裁判所にこのことを報告し、その行員に法の裁きを与えるという選択肢はとらなかった
年単位でかかる裁判をしたくないというのもあっただろうが、それ以上に大きかったのが、「自分の親戚が自分の口座の情報を使っていた」ということだ
これは、その親戚が犯罪者の一味だった、という話ではない
友人の口座の情報は複数人によって使われていたが、担当の行員は親戚に何も知らせないまま、友人の口座情報を勝手に使わせていたのだ
行員が情報を本当に使わせたかった人と同時に、無関係な親戚や他人を巻き込んだのである
その親戚は何も気づかないまま、犯罪の片棒を担がされていたのだ
僕の友人が何もできない理由は、その担当の行員を訴えた場合、自分の親戚も逮捕されるからである
もしこの状況に自分が陥ってみたらと考えてみてほしい
あなたには2つの選択肢とその結果がある
犯罪行為を訴える
→年単位の裁判の後、その行員は逮捕されスカッとする。法律によっては被害に対する賠償がもらえるかもしれない。しかし、同時に何も知らないあなたの親戚あるいは小学校からの友人なども逮捕され、彼らは職を失い、これからずっと履歴書に「銀行口座情報の不正利用」と書き続けることになる
犯罪行為を訴えない
→イライラは残る。ムカつきも残る。しかし、大きな金銭的被害は被っていない。口座について多少の手続きが必要なので、まあまあの時間と交通費・書類代などがかかるが、親戚や昔からの友人には何も起きない
この2つの行動と結果を見て、あなたが当事者だったらどちらの選択肢をとるだろうか?
おそらく、多くの人はその犯罪行為を訴えないだろう
腹立たしくはあるが、人生を壊されるほどの被害があったわけではない
だが、訴えれば親戚の人生は間違いなく壊れてしまう
親戚はある意味、人質だ
頭のいい悪者はこのように犯罪を犯す
「訴えなければ多少の被害で済むが、訴えれば大きな不利益を被る」
頭のいい悪者はこうなる状況をつくり、被害者に泣き寝入りをしたほうがいいと判断させるのだ
そして、彼らはまた新たな獲物を見つけに行き、新たに泣く人を作り出す
こうして世の中には、「法律に違反すれど裁かれない行為」が存在しているのである
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