007 notimetodie 人になる
ダニエルクレイグが演じるジェームズボンドは今作でラストにふさわしい、いい作品に仕上がっていたと思います。
ネタバレありです
まずマドレーヌの過去が描写されたことによって今回はマドレーヌの過去が追いかけてくること、そしてスペクターとは別の組織が敵なんだと
明示されました。ここでなんとなくマドレーヌ版のスカイフォールっぽく
なっていくのかなぁと感じました。
そしてボンドとマドレーヌがイタリアに入りお互いに過去に対して、
ボンドはケリをつけ、マドレーヌは打ち明けようとするのですが...
そうはさせてくれないのが因縁のスペクター
スペクター勢に襲われて橋から離脱するシーン、カーチェイス、
反撃の大乱射、どれもかっこよかったですね
ここでボンドがヴェスパーのことを引きずっていた事が
明らかになったのですが、初めて愛した女はやはり重かったのでしょう。
(正直そこは”慰めの報酬”で割り切れたものとして捉えていました。)
これが今回のポイントというか吹っ切れていないがゆえに悪い方向へと
転がって行ってしまう物語でした。007としての自分を捨てきれないボンド、007であるがゆえに人を信じ切ることができない。
ここをブロフェルドに突かれてしまいマドレーヌを突き放してしまう。
車の中で襲われながら見つめているシーンでは「何で信じてあげないんだ!!」と心の中で叫んでいました。
駅の別れでは「あぁ!頼む!!そんなことしないで!!」という切なる願いが無情にもそのまま胸を通過していきました。
ここから5年経ったのは驚きました。まじでびっくりしました。劇場で「え...」とつぶやいてしまったかもしれません。その後の展開の上では必要なことだったんですがその時点ではびっくりですよね。
やっぱり世界は007を放っておいてくれない。
旧友フィリックスの依頼には消極的だったのに
ノーミが新しい007としてボンドの前に現れたことによって
フィリックスの依頼を受けることにしてしまう。
ここのノーミとのやり取りでムッとしてしまうのかわいいよね
こういうところからも007としての誇りというか意地みたいなものが垣間見えてくる
もしノーミじゃなくてマネーペニーとかきてたら大人しくしてくれてそう。
今作は強い女性が出てくるんですがその中で強さと可愛さの両立を
させてきたのがパロマ
初任務ということもありパロマは戦闘が始まるまでに可愛らしさを存分に発揮してくれる。一気飲みも良かった。それを見てるボンドもまたよかった。しかし戦闘が始まるとさっきまでの姿はどこへやら、一気に押し寄せるカッコよさ、思いついたことを大胆にも実行できる行動力の塊、ここでしか出てこないパロマですがその魅力は多くの人を引き付けたものと思います。
そしてここでは仕事に失敗してしまうノーミですが強さは見せられた場面ではありました。
船でのフィリックスとのシーンも良かったですね
お互いがお互いの立場を理解しているからこその会話だったと思います
ここでのフィリックスはようやく人になれたという感じがしました
ボンドは引き続き...という感じ
手がかりをなくしてしまったボンドはイギリスに戻り、ブロフェルドに会おうとする。が会えるのは精神科医としてのマドレーヌだけ
そこで再びマドレーヌとあった時のボンドがねぇ
「お前!!こらっ!そうじゃないだろ!!!」と見たみんなが思ったはずです。いやあのシーンではあの言葉しかないだろうけども...あの動揺し具合は...
「踏み込めー!踏み込めー!」と同時に「あぁ...」ともなってしまいましたね。ヴェスパー同様引きずってるなぁと、さらにそこで直ぐに別れてしまう。ボンドはやらなければいけないことがあるためそこに残る
そんな動揺具合の中ブロフェルドと対面するのですが、彼が冷静でいさせてくれるはずがありません。そして結果的にああなってしまうと...
ところでブロフェルドのカッコウのマネが結構好きなので
今回も登場してくれて良かったです
マドレーヌの家ではイタリアで打ち明けたかった秘密を聞かされ、子供の存在を知る。「いや、その眼!!」と思いましたが、まあいいでしょうと流しました。
そこにやってくるサフィン達、
逃げる際に「ランクルだ!」(正確にはプラドだったんでしょうか??)と思ったらランクルがレンジローバーをバッタバッタとやっていくシーンでは
監督が日本車びいきなのか、とかスポンサー側はこれいいのだろうか、とか感じました。
過去子供が戦闘に巻き込まれたことがあまりないのであの判断がどうだったかはわからないんですが、ボンドガールだけだったら連れ立ちながら戦ったと思うんですよね。そうはしなかった結果的に連れ去られるということに繋がってしまうんですが...
いきなり日本とロシアの領土問題が存在してる島が出現したのもびっくりですね。それは確かに外から見ればバッチリ問題は存在してるんですけど政府の発表としては”無い”が公式な見解ですからね。
・科学者はロシア人でしたからロシアにアジトを作りたい
・そして細菌兵器なので隔離が容易な島
この二つを満たそうとすると不凍港な北方領土の辺りになってしまうのは致し方ないのかなと...
ノーミがボンドを007に推挙するのも良かった
ノーミはただの数字として認識しているがボンドにとっては誇りなのだと
理解しているゆえの推挙だと思いました。
ここら辺のどこかだった気がしますが旧Mの肖像画が出てきたのは嫌な予感がしました。ただでは転ばないだろうなと
潜入して007とノーミが別行動してからノーミの強さが見れた
それまでもやってきたけどここから派手に暴れましたね。
サフィンと対面したボンド、ここはボンドの中の人間ポイントと
007ポイントが拮抗しているシーンだと思うので大切なシーンだなぁと
マチルドがサフィンに抵抗した場面のために5年という期間を設け、意志を持たせたのではないかという感じはしました。自分の意思があり、自分で 行動することができる。マチルドが自分の意思で...というのがポイントで それをサフィンは受け入れるわけですね。さらに彼にとっては殺すことより生かすことのほうがより深い関係を築くことが出来ると語っているわけですから、ここでは当然彼女を見逃すわけです。
きっとサフィンはこれからも多くの人を殺し、生かすつもりなんだろうなと
その上で深いつながりをたくさん作っていこうと思っていたんじゃないかと
だからここでマチルドにこだわる必要は必ずしもあるわけではないと
2人を逃がすのにノーミに託していくのもノーミの実力を信頼している感があっていいと思いました
大戦の遺物を何も見ずに動かしだすボンドもいいですねぇ
かっこいいはかっこいいんですが時代に取り残されてしまった感が出てて、
俺とこいつは同じなんだ、と理解しているぞ、と哀愁を醸し出している気がします。
そしてサフィンに細菌兵器に感染させられてしまうことで
誰とも触れ合うことが出来なくなってしまうボンドは、
脱出を諦め島の破壊を選択
最期のボンドとマドレーヌの会話はたまらなかったなぁ
涙腺にきました
ただ一番の見せ場はボンドの眼を含めた表情でした
ここはダニエルボンド1セクシーだったと断言してもいいと思います。
肉体的セクシーならカジノロワイヤルには勝てないんですが、
ここの哀愁的セクシーはそれを凌駕していた
本当に見惚れてしまいました
ここで脱出を諦めてしまうのはジェームズボンドらしくないと感じる人も いたと思いますが、自分的には納得できました。
元々ダニエルボンドはよく007を引退したがります
カジノロワイヤルでもそうですしスカイフォールでも、スペクターでは最後に引退し今作に続きました。
しかしその度に悪党が現れ、それを許容できないボンドは復帰します。
今作でサフィンとの会話の「お前のような悪党が云々」というセリフにある通り悪党がいて、それを倒すためにボンドは007になるわけです。
そして”007”という称号に誇りを持ち、拠り所になっているわけです
(今作ではそれを理由にノーミとバチバチ感が出てしまうわけですからね)
では誰とも触れ合うことが出来なくなってしまったボンドは
007としての活動ができるのか、
引退してこの先一生隔離生活を送っていくことが出来るのか、
もしまた悪党が現れてしまったときに大人しくしていられるのか、
どれも出来るはずがありません。
それほどまでに”007”というものがボンドの心の中心にいるわけです。
完全に007であることを諦めなければならなくなったボンドは
”追って、追われて”の007を辞めることができるわけです。
じゃあ007を辞められたボンドは何になるのか
ここでボンドはようやく人間になれるわけです。
今までのスパイという重い重い鎧をサフィンによって脱がされて
ありのままの人間になれたんです
逆に言えばジェームズボンドは死ぬまでスパイなんだという悲しい事実を
明示しているようでもあります
ボンドの鎧はヴェスパーにもマドレーヌにも完全に脱がすことはできなかったのですから
(上の方でも書きましたがフィリックスについても同じような事を感じました、彼らは死ぬまで諜報部員なんだと)
ボンドの表情についてですがスパイでなくなったボンドが人間として見せる死を覚悟したもの、大切なものを守ることができたという安堵感、成長を見守ることができない悲しみ、複雑で入り乱れたとても哀愁漂う表情だったと思います。
ダニエルボンドは悲哀に満ちたシーンが毎作品有ったのですが
こんな表情を007で見ることになるとは思いもしませんでした。
なによりも”眼”ですよね、元々青い眼のダニエルクレイグが
さらに強調されてました。
今作には強い女性が何人か出てきましたがその中で最も強かったなと感じたのは、マドレーヌでした。
文中には書いていませんでしたが、前作のスペクターから見て最も強くなったと、さらに強くあろうとしている女性だなと
ボンドと別れた後も一人で生き、子供を守ろうとする、そしてこれからも守り続ける母としての強さを感じました。
ダニエルボンドは5作品で1シリーズになってる作品でとてもよかったと思います。
5作品でジェームズボンドが007になり、007を引退し人間になるまでを描いたシリーズ
お疲れさまでした。ダニエル・クレイグ。
蛇足
追加してほしかったかなぁと感じるとしたら、
ボンドがQを介して回線をつなぐときにノーミのことを007扱いしてほしかった気はします。そんなに尺のある瞬間ではなかったですけど、一言何か入っていたら...
自分の中でのあの場面ボンドは007を引退していたので・・・
そうなると次回作の作成に影響を与えるかもしれないですけど今作内の
収まりがいい気がしたので
エンディングにルイアームストロングがきたときには
「うわー!うわー!」と思いつつも
どっかで聞いたなと思って、後で調べたら女王陛下の007でも使われていた曲でした。
あれのストーリーも結末含めて好きなんですよね。
曲に関して言えばビリーアイリッシュの曲はルイアームストロングに
持っていかれてしまってあんまり覚えてなかったりします。
曲単体でいい曲だとは思うんですけどね
持っていかれてしまった気がします
書くべきことではないかもしれませんが
今回の文章はwikiを見ながら思い出しながら書いていたので
正直劇場で見た瞬間とは違った理解をしている部分もあります
吹き替え版を見たのですがサフィンに注射を刺された後、「愛する人に触れると・・・」となっていた気がするのでマドレーヌとマチルドに触れると、という意味だとその瞬間は思っていた気がします。
その後の展開であそこまで思い詰めて死を選ぶレベルなのだから
サフィンの研究所にあったDNAの全データの入ったものなんだろうなとは
思いましたけど・・・
細菌兵器というのも少し曖昧ですがナノボットだったように認識しています。登録されたDNAのみを攻撃するナノボットじゃなかったかなぁと、
そして触れ合っただけで移ってしまう。
という認識です、これは今でもこう思っています。
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