「播水句集」

・京都時代 

新妻の友の賀状もちらほらと

大試験今終りたる比叡かな

噴水に水の面の落花漂へり

花篝更けたる火屑こぼしけり

若葦の水に溜れり船の煤

縁側の極暑の煤やいづこより

青嵐や湖きはまりて川となる

川狩の今夜の網を繕へり

一痕の月に旅愁や冷奴

泳ぎ宿西日あたれる碁盤かな

七夕竹捨てて流れぬ水なりし

金魚玉隣へ贈り退院す

秋水に映れる歯朶の葉裏かな

月未だ色に出でざる花野かな

客あらば使ふ厠や秋の寺

冬寺の使はぬ部屋を通りけり

夜となれば晴るる空やな凍豆腐

宮島の灯を消し旅の蜜柑むく

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