Review*Movie*風立ちぬ

風はまだ吹いているか ならば生きねば

風立ちぬ [DVD]

全力で、一生懸命に夢に向かって、時代を生き抜く人の話でした。
その仕事が戦争で使う武器のためのものであっても、しかもその戦争には勝てないと知っていても、愛する人の命が残り僅かとわかっていても。
それが夢であり、それが自分の人生だから全うする。


この映画(というか現実)には沢山の「矛盾」が存在する。
戦争のための飛行機が作りたいわけじゃないのに、戦争のお陰で莫大な予算が手に入り飛行機が作れるという矛盾。
仕事に集中したいのに、所帯を持つという矛盾。

どこにでも矛盾は存在し、理解していても善悪を問われる。その中で二郎は二郎の生き方を選択し、ぶれることなく突き進んでいく。

彼に惹かれ夢を託す人たち、同じ夢を持ち切磋琢磨する人たち、そんな夢を見ることのできない違う世界にいる人たち。それぞれ置かれた境遇が違うし、能力も違う、だから使命が違う。見ている私たちとは時代が違う。
けれども、自分の人生を全うするというのはこういうことなのだろう。

戦争時代に沢山の庶民や犠牲者の上で、
飛行機の開発に勤しんでいた二郎たちのような優秀な先人のお陰で、
世界的先進国となった国に生まれ、
国の緩やかな衰退を日々感じながら生きている私たちやもっと後の世代に向けて、何を言おうとしているのか。
結局宮崎駿が答えを持っているわけもなく。(むしろ自身がピークの状態ではないことを黒川の目線から語っているように見える)
この映画の意図を察することのできる世代に対して「君の10年を力を尽くして生きなさい」と言っているのだろう。

風はまだ吹いているか ならば生きねば

風立ちぬ [DVD]


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