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いい音爆音アワー vol.1 ギターの神様

2010年12月8日(水)@風知空知

「12月8日」と言えば、真珠湾奇襲攻撃すなわち太平洋戦争開始の日、そしてジョン・レノンが凶弾に倒れた日であると、多くの人が瞬時に答えるでありましょうが、何を隠そう、力道山がナイトクラブで暴力団員に刺された日でもありました(1週間後の15日に死去)。
そして実は、イベント「いい音爆音アワー」がささやかにスタートした日でもあるのです。2010年12月8日。3ヶ月後に東日本に大震災が来ることなど、もちろん想像だにしていませんでした。

レコードというものが発明されて以来、世の中には録音された音楽が数え切れないほど蓄積されて、なおも増え続けているけれど、今やほとんどの人は圧縮された(その分音が悪くなった)デジタル音源を、ヘッドフォンで“ながら聴き”するだけ。
音楽は、いい音&爆音で、全身で受け止めるとすごく気持ちよいのに。人は耳だけでなく、皮膚でも音を感じていて、そうすると脳の深部を活性化するそうです。実は音楽の魅力って半分は「音響」だと私は思っています。何より、誠実なつくり手は、他人が気づかないような細かいところにも、納得がいくまで手を尽くして、音楽をつくり上げています。だから、しっかり聴いてあげないと、失礼だし、もったいない。
ところが、ライブは爆音で聴ける機会も多いのに、録音物はそういう環境がとても少ないですね。そんな状況を、少しでも何とかしたくて、私はこのイベントを始めました。

初めのうちは、私が当時在籍していたインディーズ流通会社、バウンディ(現在はスペースシャワー・ネットワークに統合)が扱っていたその月の新譜からひとつ選んで、それにふさわしいテーマを決めてから、他の曲を選んでいました。一応仕事の一環だよ、ということを見せておきたかっただけですが。2012年末あたりまではそんな感じで、それ以降は新譜のしばりは外して、自由に選曲しています。

テーマに沿った選曲ですが、なるべく時代と地域とジャンルを万遍なく選ぼうという方針です。クラシックは長いのが多いので、ジャズは私が疎いので、メタルとヒップホップは私が好きじゃないので、あまり入ってきませんが、それ以外で、私が名曲・名盤と思うものなら何でもありです。
「結局自分の好きなものだけじゃん」と思われるでしょうが、その通り!好きじゃないと人にお薦めなどできませんからね。

第1回目は、ちょうどイベント当日、2010年12月8日に発売されたDavid T. Walkerの『For All Time』というアルバムを中心に、ギター名人たちの作品を集めて聴きました。

ふくおかとも彦 [いい音研究所]


▶David T. Walker『For All Time』より

1960年代より数々の名アルバムに参加した伝説のギタリスト、の2010年のスタジオ盤♪ 未だ衰えを知らず。

1. For All Time (Overture) 作曲:David T. Walker
2. Eleanor Rigby 作詞・作曲:Lennon–McCartney
3. If You Want Me to Stay 作詞・作曲:Sly Stone
4. God Bless the Child 作詞・作曲:Billie Holiday, Arthur Herzog Jr.
5. Song for My Father 作曲:Horace Silver
6. Compassionate Tranquility 作曲:David T. Walker
7. Justified 作曲:David T. Walker
8. Joyful Insight 作曲:David T. Walker
9. Let’s Stay Together 作詞・作曲:Al Green, Al Jackson Jr., Willie Mitchell
10. Soul, In Light & Grace 作曲:David T. Walker
11. For All Time 作曲:David T. Walker

アルバム『For All Time』(2010年12月8日発売)
プロデューサー:David T. Walker
レーベル:DCT records

デイヴィッド・T・ウォーカー:
1941年6月25日、米国オクラホマ州・タルサ生まれ。父親は黒人、母親はアメリカ原住民の血を引く。8人兄弟の長男。
14歳までセントラルカリフォルニアの農場で育つ。
高校卒業後親元を離れ、ニューヨークに移り、プロ・ミュージシャンとしての活動を開始する。
1967年、初ソロ・アルバム『The Sidewalk』リリース。
 マーヴィン・ゲイ『Let's Get It On』(1973)、スティービー・ワンダー『Innervisions』(1973)、ジャクソン5『ABC』(1970)、マイケル・ジャクソン『Ben』(1972)、キャロル・キング『Rhymes & Reasons』(1972)、クインシー・ジョーンズ『Body Heat』(1974)などのアルバムを始め、数多くの作品に参加してきた。
 日本との関わりも多く、井上陽水、阿川泰子、上田正樹、松岡直也、吉田美奈子、古内東子、“Dreams Come True”、“SMAP”、“Sing Like Talking”らの作品やコンサートで活躍している。
 現在のポップ・ミュージックにおけるギター奏法に多大な影響を与えた。

▶Larry Carlton『Larry Carlton(夜の彷徨)』より

Steely Danの「Peg」のギターソロでOKをもらえなかったから、このアルバムの「Room 335」をつくったという噂。だからリフがそっくりなのか。

1. Room 335 作曲:Larry Carlton
4. Point It Up 作曲:Larry Carlton
5. Rio Samba(リオのサンバ) 作曲:Larry Carlton

アルバム『Larry Carlton(夜の彷徨)』(1978年発売)
プロデューサー:Larry Carlton
レーベル:MCA

・drums: Jeff Porcaro / bass: Abraham Laboriel / keyboard: Greg Mathieson / percussion: Paulinho Da Costa

ラリー・カールトン:
1948年3月2日、米国カリフォルニア州トーランス生まれ。
1968年製ギブソンES-335を愛用しているので、“Mr.335”という愛称で呼ばれている。

1968年、1stソロ・アルバム『With a Little Help from My Friends』をリリース。
1971年から1976年まで“The Crusaders”に参加する。
1977年、ワーナー・ブラザーズ・レコードと契約し、1978年から1984年にかけて、6枚のソロ・アルバムをリリース。
1970年代はスティーリー・ダンやジョニ・ミッチェル他、多数のアルバムに参加している。ローリング・ストーン誌の「Greatest Guitar Songs」ランキングでは、カールトンがソロを弾いた、スティーリー・ダン「Kid Charlemagne」[アルバム『The Royal Scam』(1976)収録]が80位に選ばれている。
1995年、リー・リトナーとのデュエット・アルバム「Larry & Lee」をリリースした。
1997年、リトナーに代わり、“Fourplay”[1990年にボブ・ジェームス(p)、リー・リトナー(g)、ネイザン・イースト(b)、ハービー・メイソン(dr)により結成]に参加。
2010年にはソロ活動に専念するため、フォープレイを脱退。
 同年6月、B'zのギタリスト松本孝弘との共作『Take Your Pick」をリリース。

▶Stuff『Stuff(スタッフ!!)』より

日本では一番人気のフュージョン・バンドでした。スティーヴ・ガッドは今でも人気。

1. Foots 作曲:Richard Tee, Cornell Dupree, Eric Gale, Gordon Edwards, Steve Gadd, Chris Parker
6. How Long Will It Last? 作曲:Eric Gale
8. Happy Farms 作曲:Cornell Dupree

1st アルバム(1976年発売)
プロデューサー:Herb Lovelle, Tommy LiPuma
レーベル:Warner Bros.
 
スタッフ:
ゴードン・エドワーズ(Gordon Edwards)(b):1946年12月26日、ニューヨーク生まれ
コーネル・デュプリー(Cornell Dupree)(g):1942年12月19日、テキサス州フォート・ワース生まれ 2011年5月8日、肺気腫のため死去
エリック・ゲイル(Eric Gale)(g):1938年9月20日、ニューヨーク市ブルックリン生まれ 1994年5月25日、肺ガンのため死去
リチャード・ティー(Richard Tee)(key):1943年11月24日、ニューヨーク市ブルックリン生まれ 1993年7月21日、前立腺癌のため死去
スティーヴ・ガッド(Steve Gadd)(dr):1945年4月9日、ニューヨーク州ロチェスター生まれ
クリストファー・パーカー(Chris Parker)(ds):生年月日不明、シカゴ生まれ

メンバーはいずれもニューヨークを中心に活動していた一流のスタジオ・ミュージシャン。
1960年代半ば、ゴードン・エドワーズとコーネル・デュプリーが結成したセッション・バンド“The Encyclopedia of Soul”がニューヨークの「Mikell's」というクラブでレギュラー出演するうちに徐々にメンバーが固定化されてゆく。
1976年7月、スイスの「Montreux Jazz Festival」に出演。好評で、ワーナー・ブラザーズとの契約も決まる。“Stuff”と改称。
 同年、1st アルバム『Stuff』リリース。1977年に2nd『More Stuff』を、1978年に3rd『Stuff It』をリリースした。
1980年以降は各メンバーがソロ活動などで多忙になったため、自然消滅的に解散する。

▶Lee Ritenour『The Captain's Journey』より

カールトンとはよきライバルでもあり、同士でもあったけど、こんなに上手い人なのに、なぜか、“Steely Dan”にはたった1曲しか参加していません。

1. The Captain's Journey 作曲:Lee Ritenour
4. Matchmakers 作曲:Lee Ritenour
6. That's Enough for Me 作詞:Patti Austin/作曲:Dave Grusin

6th アルバム(1978年発売)
プロデュース:Lee Ritenour, Dave Grusin
レーベル:Elektra

・piano: David Foster / keyboard: Dave Grusin / rhythm guitar: Jay Graydon / drums: Steve Gadd / bass: Anthony Jackson / percussion: Paulinho Da Costa, Alex Acuna / side vocal: Patti Austin
・リトナーがギターを弾いている“Steely Dan”の曲とは、『Aja』収録の「Deacon Blues」。それも、ラリー・カールトンと2人で。

リー・リトナー:
1952年1月11日、米国カリフォルニア州ハリウッド生まれ
6歳よりギターを始め、ウェス・モンゴメリーに多大な影響を受ける。
高校時代にセミプロとして活躍し、南カリフォルニア大学入学後、デイヴ・グルーシンと出会い、1970年代よりスタジオミュージシャンとして活躍し始める。
1976年、Epicより、1st アルバム『First Course』リリース。
1977年、 Ernie Watts(sax), Dave Grusin(p), Patrice Rushen(p), Anthony Jackson(b), Harvey Mason(dr), Steve Forman(perc)と“Gentle Thoughts”を結成し、アルバム『Gentle Thoughts』をダイレクト・カッティングで制作。
1977年、3rd アルバム『Captain Fingers』をリリース。
1978年、6th アルバム 『The Captain's Journey』リリース。
1990年、ボブ・ジェームス、ネーザン・イースト、ハーヴィー・メイソンと共に“Fourplay”を結成、1995年までに3枚のアルバムを発表した。
1996年、自身のレーベル「i.e.ミュージック」を新設し、プロデュース業で多忙になったため1997年、“Fourplay”を脱退。後任にはラリー・カールトンが加入した。
・・・
2010年、ギター活動歴50年を記念して、アルバム『6 String Theory』をリリース。

▶Jay Graydon - Steely Dan「Peg」

先ほどのカールトンのソロが不採用になった曲で、見事採用されたのが、この人。プロデューサーとしても活躍しました。

シングル(1977年11月発売)
6th アルバム『Aja(彩 エイジャ)』(1977年9月23日発売)収録
作詞・作曲:Walter Becker and Donald Fagen/プロデュース:Gary Katz
レーベル:ABC
全米11位 アルバムは全米3位、全英5位

ジェイ・グレイドン:
1949年10月8日、ロサンゼルス生まれ
1977年、“Steely Dan”の曲「Peg」のギター・ソロの収録に参加。6人の有名ギタリストの演奏が不採用となった後に呼ばれたグレイドンの演奏が採用され、音楽業界にその名を知られるようになった。
1979年、デイヴィッド・フォスター、ビル・チャンプリンと共作した“Earth, Wind and Fire”の「After the Love Has Gone」でグラミー賞の最優秀R&B楽曲賞を受賞。
1980年、デイヴィッド・フォスターとともにユニット“Airplay”を結成して、同名のアルバムをリリース。ヒットこそしなかったが、AORのバイブルとして、今なお評価が高い。
1983年、スティーヴ・ルカサー、チャンプリンと共作したジョージ・ベンソンの「Turn Your Love Around」で、再びグラミー最優秀R&B楽曲賞を受賞した。

▶Steve Lukather - Wilson Bros.『Another Night』より

なぜか日本だけで人気が高いAORアルバムですが、アーティストよりもルカサーのギターの方が目立っているところがその理由?

1. Feeling Like We’re Strangers Again(愛にひとりぼっち) 作詞・作曲:Kelly Wilson & Mark O'Leary
2. Take Me to Your Heaven(君のすべてを今夜) 作詞・作曲:Steve Wilson & Kelly Wilson

1st & onlyアルバム(1979年発売)
プロデュース:Kyle Lehning
レーベル:Atlantic

・ウィルソン・ブラザーズが残した唯一のアルバム。兄のスティーヴは2000年3月に亡くなったらしい。
・アルバムでは、タイトル曲を除くすべての曲で、ルカサーがギターを弾きまくっている。

スティーヴ・ルカサー:
1957年10月21日、米国カリフォルニア州サンフェルナルド・バレー生まれ
7歳の頃からギターを弾き始める。
1970年代から、スタジオ・ミュージシャンとして、ロサンゼルスを中心に、ボズ・スキャッグスやオリビア・ニュートン=ジョンなど多くのアーティストのレコーディングに参加。
1976年、学生時代からの友人でかつスタジオ・ミュージシャン仲間だった、ジェフ・ポーカロ、デヴィッド・ペイチから誘われ、“TOTO”を結成。
1978年、1st アルバム『TOTO(宇宙の騎士)』をリリース。
・・・
1989年、初のソロ・アルバム『Lukather』をリリース。
2012年から、“Ringo Starr & His All Star Band”に参加。


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