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今年のテーマは「ローカルとグローバルを結んで、分断から理解へつなぐ」

皆さまあけましておめでとうございます。

去年を振り返ると、模索の年でした。それは去年に始まったことではなく、ここ三年くらいはそんな流れで。
2016年に11年過ごしたロンドンを離れ、夫と寂しながらも国際別居をはじめ、ドバイへ新職と同時に移住、その後2018年から日本へ本帰国。
日本に帰ってからは、せっかくの祖国なので、日本の企業での経験を積もうと広告デザイン/コンサルの数社、フリーランスを経験。日本の業界を身体を通じて知れた、よい経験でした。

去年の8月から東大生産技術研究所と母校のイギリスのRoyal College of Artのデザインラボでご縁があり、フリーランス契約からはじめ、ようやく12月からフルタイムの特任研究員に就任。一番有名な国立大学で、研究所での勤務とはいえ、アカデミックな領域での仕事を始めました。美大出身でメディアアーティストを目指していた私がまさかこんな機会に恵まれるとは、人生何が起こるか分からないものです。
お役所系/半公務員的な仕事が初めてだったもので、最初はやり方の違いに戸惑いつつも、私としては社会的意義の追求や、新しい価値の追求に専念できる事が非常に嬉しくて。私がやりたかった事はこういう本質的な物事への追求にあるんだなと改めて思いました。

職場だけでなく社会全体を通して見ても、ちゃんと理由を説明して、自分が今居る居心地のよい人たちや、同じ業界の人達以外でも理解を得る事ができるし、その理解を通じてもっと違った層からも自分のことを応援してくれる人が現れて、より一層プロジェクトや行動を支援してもらえて大きくできる事がわかってきました。

年の瀬は周りの大切な友人や新しい人を含め、毎日のように忘年会に顔を出していたのですが、人と振り返ることで、去年一年のキーワードやまとめが自然と浮かび上がってきて、とても良かったです。

一番印象に残っているのが、ある都市のイノベーション業界友人と会ったときに合致した、本当に面白い活動をしている人達は、ネット上に出てきていない、ということでした。
そこで私が感じたのは、ネット上のコミュニケーションと、実際に行われている日々の営みにまだ乖離があるんだろうな、と。インフルエンサーがもてはやされる、売名先行主義が助長される状況の危うさも同時に感じました。
そしてそれはネガティヴな意味だけでなく、まだまだ地道にがんばっている、表に出てきていない面白い人たちが沢山いる事の可能性も感じて楽しみになりました。

私の下半期の大きな変化としては、東大の仕事で、現存のOMNIという市民参加型の海洋計測のプロジェクトに、コミュニティと研究者を結ぶコミュニティリサーチャーとして参画し始めたのですが、そのプロセスが思った以上に面白く。
要は海洋を計測するIoTデバイスを、どのように地域を巻き込んで理解を得て、実際に皆で計測して考えていく場を繋ぐ役割としての仕事。当たり前だけど、例えば一個地域の学校でワークショップを開催するにしても長い道のりが必要で。
でも逆にいえば、そのコミュニティとのリーチの仕方やコミュニケーションの取り方で、公のプロジェクトの敷衍度合いが変わってくるので、科学/デザイン側のプロダクトとしての根拠だけでなく、コミュニケーションや体験の手法も、そのプロジェクトの進行にとって重要なものになる事がわかってきました。

そして、そういった一つ一つのローカルとの接点って想像以上に重要で、私達研究者にインスピレーションを与えるような情報が沢山あって。逆にいうとこういった今まで交流がなかったところに動線を築く事が、本当のイノベーションへの第一歩なんだなと改めて思ったわけです。

友人からのコンタクトからはじめて、高校の文化祭に出向いたり、果ては鎌倉や逗子の市長にお会いしたりと、コンタクトをはじめると速いペースで色々な繋がりが出来ていって、それは私にとって刺激的な経験でした。
https://www.designlab.ac/single-post/2018/12/06/OMNI--Ocean-Monitoring-Network-Initiative

でも実は、OMNIは携わっている一つのプロジェクトで、私がメインに携わるプロジェクトは、東大生産研とシンガポール大学とが正規提携した初めてのプロジェクトです。
健康的な社会形成について多方面からフィールドリサーチをはじめています。そのフィールドリサーチをどのように科学的な新しい技術と結んで、国際的な研究者と一緒にどんな新しい価値を作れるかを考えるのが楽しみです。

これまでの私を振り返ると、私にとって新しいアイデアが生まれる瞬間は、いつも何か新しい感動とか意味を知った時だなと思っていて。
脳がインスピレーショナルな状態であれる事が重要で、そのループを日常生活に作る事がとても重要で。でもそれはただハイエンドのものを見ているだけではなく、日々の生活の見方や、自分が普段接していない人や物の中にあって。

極論、自分の中の慣性や惰性で動いている事を日々ぶっ壊す事だなと思っていて。
新しい価値が生まれる状態って居心地の悪い場所に入り込んで、そこから新しい事を学んでいく日々の姿勢でしかないと思っています。
私がいるデザイン、アート業界に限らず、科学技術、経営、教育のどこの業界も、やっぱり自分の居心地のいい空間や人と付き合ってるのが一番楽でね。その馴れ合いを全否定はしたくないけれども、深く掘り込んで自分の興味を追求するよりも、隣にいるよくわからない他者に興味を示す事の方が私は今は価値があると思っていて。そういう意味では、今経営層からもてはやされている、アート/デザイン業界を見ても、実際のところ閉鎖的である事も、まだ場合によってはあると感じていて。

理解って、全部を受け入れる事ではないけど、他人の事の一部を受け入れる重要な行為な気がしています。
多様性を尊重する事が重要になっているこのご時世、誰もが一緒にまとまることよりも自分と他人との距離をリスペクトすることが大事になってきていて。かといってその自分とは真逆にいる人達をただ排他的になっているだけでは前に進まないけど、知性があれば理解はできる。そういう緩やかなグラデーション作りを助長する事が、創造性支援の現場に求められている気がしています。

そういう意味で私の今年のテーマは、「ローカルとグローバルを結んで、分断から理解へつなぐ」です。
今年は、ロンドン、ドバイ、日本についでのシンガポール勤務。勤務先としては4カ国目です。
ようやく最近になって自分が今まで携わってきた沢山の違ったデザイン業務経験がつながってきた感覚があり、嬉しいです。
更なる進化に向けて行動し続けたいと思っているので、本年もよろしくお願いします。

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