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熊神さまがやってきた日

「ご近所からクマの肉をもらった。
食べるなら冷凍して送るよ」

そんなラインがきたのは、数日前のこと。

シカは料理したことがあるけれど
クマはまだ、経験がない。
料理研究家の相方のお母さんに尋ねても
イノシシならあるけれど……という返事。

1キロという量にひるんだけれど
ともみさんが料理してくれるなら
食べてみたいという言葉に背中を押され
送ってもらうことに。

「肉塊」というラベルのついた
冷凍便で届いたカチカチの熊肉は
袋越しにもわかるほどのケモノ臭。
冷蔵庫で一晩解凍し、いざ調理へ。

筋膜とおぼしき緑のネットのような膜をはぐと
鮮やかな紅色の肉が姿をあらわす。

ざっと下ゆでしてから、解体を始める。
筋肉のかたまりを握り、引き剥がし、
結節点の筋を削ぎ切りながら一口大に。

未処理のかたまり肉を扱うのは初めての経験で
はぎ分けているうちに、ふと
肉食獣が狩った獲物を食らっているような
そんな思いにかられたり

熊送りをするアイヌが狩る熊を
解体している時の気持ちを想像したり

暑い中、肉と格闘しながらの
不思議なひと時。

切り分け終わり、圧力鍋にかけた途端
立っていられないほどの疲労感。
ぼんやりと座り込み、待つ間に煮上がった。
当初の臭みはなんとか抜けた
それでもまだ癖はある大和煮風。

相方宅へ持参して、お昼ごはんに。


熊神さまがきた!と大喜びの相方は
ちょうどアイヌの文献を読んでいたとか。
かつお節みたいな味などと言いながら
にこにこして食べている。

それをみて誤解した相方のお母さんが
ともみさんの料理は食べるのねえと
ちょっぴり呆れ顔。

そして、暑かろうが病気で伏せろうが
食欲は衰えないわたしは
作るだけでお腹いっぱいという気分を
初めて味わった。

ぱくぱくと食べられるものでもなく
それぞれに3・4切れほどをいただいて。

たまたまいらしたご近所の方に出したら
喜んで持ち帰りまでしてくれたみたい。
ありがたし。

鹿肉の時は直感的に
人参とトマトで煮込んだけれど
今回は小手先では太刀打ちできなそうと
まじめにレシピも探してみた。

なるほど、りんごで甘みをつけるのかと
参考にした、一番シンプルなレシピはこちら。

https://cookpad.com/recipe/2416495#share_url

最近は、ほぼベジタリアン的食生活だけど
「いのちをいただく」ということまで
感じられた、肉と格闘した1日。

疲れて、食後は寝落ちしちゃった。

送ってくれた母が書いていた「肉塊」は
インパクトが大きかったなー。

おいしいごはんと、瞑想のようなもの思いから浮かぶ言葉と、日々のささやかなできごと。そんな生活の切れ端と、たまにディープに心のことを、思いつくままにつづります。 お仕事として、ライティングや講座の企画・構成、こころとからだのセッションもやってるよ♪