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こどもを置いてバス釣りに行く父親たち

しかも三連休のどまんなかに。

九月です。晴れると暑いが風は涼しい最高のおでかけシーズンに、ゼロ歳と三歳を奥さんに預けて午前3時にiPhoneの目覚ましが鳴ります。床に転がっている哺乳瓶を拾って、台所へ。ふだんの1.5倍くらい薄いコーヒーを入れて魔法瓶へ。ほかの荷物は前日の晩に車へ積んであります。

「え? 明日釣り?」

「日曜はいないって半月前にLINEしたよ」

LINEは来たが釣りだとは書いてなかったぞ。と顔に書いてある奥さんと視線を合わせないようにしながら、1個25kgのバッテリー(しかも2個)をえっちらおっちらと運んだのでした。

バス釣りは荷物が多い、そして重い。ダム湖で1台のボートを借りて釣りをする場合、ひとりでは一度に運びきれないぐらいの荷物になります。今日はふたりなので少しらくちん。首都高速を経由してH氏を迎えにいきます。

インターチェンジに入る手前のコンビニで、インディアンカヌーを屋根の上に積んだジープを目撃。ほかにも、アウトドアっぽいハット(あごひもがついて360度ぐるっとツバのあるやつ)をかぶっているおとなたちがレジに列をなしていました。みんな野山に行くのだなぁ。

もし、ここに子ども連れがいたとしたら、早朝4時から遊びにいくなんてよほど気合の入ったアウトドア一家、という感じを受けたでしょう。小学校時代の友だちのカズキ君は、キャンプに行った話をよく作文に書いていた。そして足が速かった。そういう家族がある一方で、うちの両親はテントやランタンやを買うようなタイプではまったくなかったのに、60代になってから登山好きのモンベルユーザーになったから不思議なものです。

ダム湖に到着して、朝6時から釣りをはじめて、およそ5時間のあいだナニゴトモナシ。コスパ悪し。バス釣りは一箇所でじっとしている遊びではないので、ボートでちょこちょこ移動しながらルアーを投げていくのですが、三連休のどまんなかだけあって非常に釣り人が多くて、誰も釣れているところを見かけない。早起きによって分泌された特殊な脳内物質がそろそろ枯渇しはじめたこのタイミングでいつも男たちを襲うのは、至極まっとうな罪悪感です。

「こんなにすがすがしい秋晴れの1日を棒に振って、いったいぜんたい、なんて生産性のないことをやってるんだろうオレは」

ピロリン、とLINEで奥さんから写真が届きます。普段は青菜をまったく受け付けない3歳の娘が、蒸しパンにしたら小松菜をむしゃむしゃ食べてくれた、と。細かく刻んで、味噌汁のわかめに隠してもダメだったのに。食べないからといって、相手が認識できないように誤魔化すのが正解だとは限りません。ほんのちょっとアプローチが間違っているだけなのかもしれない。

岩盤が途切れ、ごく浅いシャローフラットが広がる場所へ。下流側から吹く風で水面が波立っています。それまで巻き続けていたスピナーベイトを、ここで今日初めて使うジャークベイトに変更。だって、ほんのちょっとアプローチが間違っているだけかもしれないから。5時間かけて降り積もった罪悪感は、たった1回のアタリで吹き飛んでしまう。

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