始末書を書いた
数年前始末書を書いた話。
私は会社で物流部に所属している。お客さんからの注文伝票を見ながら、倉庫内でフォークリフトに乗ってピッキングをしたり、運送会社に渡すために荷札を貼ったりする。
私は物流部のリーダーのため、現場を仕切りながら在庫管理にも携わっている。
会社の倉庫は毎日出社している業務センターを拠点にして車で20分圏内に4つの倉庫があり、業務センターに置ききれない商品を保管している。
そのため4トントラックで毎日商品を倉庫にとりに行かなければならない。
普段4トントラックに乗っているのは私を含めて4人だ。70代のおじいさん、60代のおじさん、30代の先輩、当時20代後半だった私だ。
4人とも毎日のようにトラックに乗っており、今まで事故は起こしたことがなかった。
そんな時、60代のおじさんが会社に止まっていたトラックを見て何かに気づき、私を呼んだ。
トラックの左側面上層部に赤い塗料が付いており、左後方の腰の高さあたりにへこみがあったのだ。
「これはやばい、新車の4トントラックに傷をつけてしまっている」「しかし誰が?」「自分のやってしまったことを隠すような人はいないはずだ」
その後私は全員に聞き取りをしたが、当てた感覚は一切ないという。私にもその感覚は一切なかった。
私は推理した。倉庫への道中で曲がり角は数えるほどしかなく、しかも赤い塗料が付いているということは、道路標識ではないだろうかと。
「赤いと言えば止まれか!」
業務センターの目の前の交差点に止まれがあるので見に行くと、標識が曲がっていた。そして腰の高さのへこみはガードレールだと気づいた。
業務センターに帰ってきたときにいつもそこを右折するのだが、その右折時にハンドルを切るのが早く、当ててしまったのだろうと確信した。
ではいつやったのか。当てて気づかないということはあるのか?
そう言えばその数日前にゲリラ豪雨があった。かなり強い雨の中70代のおじいさんが乗っていたことを思い出した。
私はそれで決まりだと思い、再び確認したがやはり記憶はないという。
私はドライブレコーダーの映像を何度も見直した。画像は荒くはっきりとは見えなかったが、ゲリラ豪雨の前にすでに標識が曲がっているような映像が確認できた。
なぜだ!!まったくわからない。事件は迷宮入りとなってしまった。
そしてリーダーとして私が始末書を書かなければならなくなった。
どうやって書こうか。
私は悩んだが、これだけ必死に聞き取りをしてドライブレコーダーも確認してわからなかったのだから、そのまま書こうと決めた。
事件発覚から私の調査結果までの時系列に沿って書き、提出した。
後日社長に出会ったときに呼び止められた。
「桃柄君、始末書読んだよ。」
「うわ、やばい。内容がまずかったか。。。怒られそうな雰囲気だ」
と思った瞬間
「お前始末書めちゃくちゃわかりやすいな。あんな短い文なのにすごくまとまっている。」
「え???」
「まさかのお褒めの言葉をいただいた」
まさに緊張と緩和を体験した。
私は文章をまとめるのがうまいのか?そのころから少し自信が持てるようになった。
以上、トラックは傷ついてしまったが、良い経験ができた始末書の話だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?