第一章〜最終章の全8話。 実話をもとにしたフィクションです。もっと書き足すかも。29000↑
久々にちゃんと一つ終わらせられた小説でした。実話をもとにしたフィクションです。 「自分が救われる為に」書いたので、まとまりに欠けるかもしれませんが、推敲を重ねます とりあえずは完結です
在る。なにがある?本だ、本がある。沢山ある。どれくらいある?とにかくたくさん。灰ともベージュともつかない無機質な棚がはてしなく続いて在る。ここに、果てしない本が果てしなく入っている。目線ほどの高さの棚が何列も前に並び続ける。後ろは見えない。前は果てしなく見える。遠くがぼやけて、白んでいる。目の前の本に手が伸びた。大きい、分厚い。少し古びていて、図鑑みたいだ。臙脂色の背表紙に金でタイトルが彫られている。直感的に知人の名前だ、と思った。誰かは知らないが、確かに知人の名前なのだ。手
「あっ!」 ハルの漏らした感嘆の声、向く先には海がこちらを覗いていた。ちらちらと反射させた光がこちらまで届く。 私たちが海を目指して直進していたのに、着いたというよりかは海が思わぬところに出てきたようだ。もう少しアスファルトを歩んだ先が高架下であり、そこを境として色素の薄い砂が見える。海なんてもうずいぶん来ていない、少なくとも今年は一度も訪れていない。さらにいえば、冬の海なんて来たことがないかもしれない。素直に高揚してしまった。 「足場悪いよ、大丈夫?」 「うん__だいじ
7:56。 外に出ると、冷気が鼻をつんとついた。この感覚、今年も夏には忘れてしまうのだろう。そして恋しくなる頃に不意に戻ってくるのだ。不思議と火照っていた全身が心地よく冷やされるのを感じた。こんなに朝早くに、まして図書館やカフェ以外へ外出するのは久々であった。 あれから私は本当に一睡もせず、一時間後に化粧を始めた。カラコンで少し気合を入れ、紺のトレーナーに白のデニムのセットアップを合わせ、マリンコーデを自称する。勿論、防寒に黒のダウンを羽織って。必要なものに加えてお金、練