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社会人10年目の社員が新人研修でドS講師を演じたらやたらと感謝された話

空から降りそそぐやわらかな光、風が気持ちよくそよぐ春。

4月1日は入社式。新社会人のみなさま、ご入社おめでとうございます。

入社式で思い出すのは、フリーになる前の会社での新人研修のこと。私が社会人10年目くらいの時の話。当時は人事部の社内研修の部署にいたんです。

入社式が終わった後の新入社員に、「名刺交換は名刺入れを座布団のようにして……」とか「何か問題があったら抱え込まずにすぐ報告」とかマナーや報連相を教えたり、社会人のマインドセットをする研修を3週間ほど実施していました。

250人ほどの新入社員に対して、4人程の社員がメインとなって研修を担当していたのですが、その会社の新人研修には不思議なルールが1つあったんです。

それは、4人の内1人は厳しい先輩社員を演じるということ。職人さんが多い会社だったので昔ながらの厳しいおじさん社員がいる現場に若い子達が配属されると、離職率が高いっていう数字がでていたんです。

ちょっと免疫つけときましょうってことで、新人たちには知らせずに、
1人が厳しい先輩社員を演じて、他の3人はフォローしていくという役回りがありました。もちろんパワハラにはならない程度。

社会人として自分で考えて行動するように促す、愛ある厳しさをみせる先輩社員という役割。ある年、職場の先輩が異動になり私にその厳しい先輩役がまわってきました。

普段から優しい私(自分で言っちゃうけど、怖いか優しいかと言われたら断然優しい先輩です)は正直困りました。

愛ある厳しさってなんだろう?私が新入社員の時、厳しくて有名な上司がいました。その上司に質問されて答えると「口答えしてんじゃねえ」と言われ、黙ると「黙ってんじゃねえ」と言われ、返事をすると「はい、じゃねえ」と言われるという、ありえない理不尽さ。きっとそれではない。そこには愛はなかった。あれはただの憂さ晴らしだった(と思う)。
きっと大切なのは、子供を谷へ突き落す獅子のような愛と厳しさ、間違いを曖昧なまま終わらせずに、しっかり指摘した上で、その意図を自分自身で考えてもらうようなかかわり方が必要なんだろうな。

とにかく外見から厳しく見せてみようと、ザマスメガネをかけてタイトなスーツにヒールを履いてドS先輩のキャラ作り。私のトレードマークと言われていた笑顔も封印。後輩からも「元の藤田さんを忘れちゃうほど仕上がってます!」のお墨付きをもらって、いざ新人研修へ!

それでも慣れないことをするのでドキドキしながら初日を迎えたのですが‥‥。

「あれれ?なんか変な才能が開花したかも!」

そう、楽しかったんです。厳しいドS先輩社員(役)。細かい数字や文字のミスを指摘して、先手を打って考えることを促し、お客様の立場から見たらその態度はどうなのか考えさせる、ドSはとにかく細かくてうるさい。

でもしっかりと愛は込めました。指摘した後はちゃんと「意図」を伝える、「意図」が伝わっているか確認する。そこに理不尽さがないように、理由や根拠を伝えることに細心の注意を払って向き合う毎日。

自分で思っているよりも、怖い先輩像は上手くできていたようで、授業時間に遅れた新入社員が教室に入れなくて外で震えていた、と上司から聴いたときは、さすがに役作りをやりすぎたと途中で反省しつつも、3週間ドS先輩でのりきりました!

新人研修の最終日、毎年新人たちが打ち上げを開いてくれて、その場に私たちも呼ばれるのですが、さすがに厳しくしすぎたから、打ち上げの場ではあまり声がかからないかな?と思っていたら、新入社員に囲まれてめちゃくちゃ感謝の言葉をもらいました。

「配属される前にご指摘いただきありがとうございました」
「最初は凹んだけど、社会人としての自覚がうまれました」
「新入社員研修が大変だったので、どこでもやっていけそうです」

そんな新人たちを見て当時思ったことを思い出しました。

たぶんみんな少しだけ厳しくされたいのかもしれないなと。

もう甘えてばかりの自分ではいられないんだって、学生の自分にさよならを告げるきっかけがほしかったのかもしれないなって。

もちろん、プライベートの自分と会社の自分をきっぱり分ける必要はないし、それをやりすぎたらきっと社会人は続かない。

でも日本の会社でやっていくには、学生とは違う、独特の空気感を身にまとっていく必要はある気がしています。

厳しい指摘は、あなたは学生から社会人になりましたよというシールを貼ってあげることだったのかもしれない。なんて思いました。

たぶん、みなさんも入社してすぐは理不尽だと感じる出来事もあるかもしれません。

特に、自分の意見をしっかり持っている人ほどそれが辛いし辞めたくなる時もあると思うんです。

でもそれは「社会人になりましたシール」をもらったと思って、ちょっと様子をみてください。しばらくして、環境になれると会社・社会人の文化として大切なところも見えてくるはず。

見えた上でその文化がやっぱりおかしいと思ったら、変革していけばいい。

(あと、どうかんがえても理不尽なことが続いていたら、周りの信頼できる方へちゃんと相談してくださいね)

まだまだ社会人生活ははじまったばかり。みなさんのこれからがワクワクに満ちた楽しいものでありますように。陰ながら応援しています。


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