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夢の職業 05.講談社の絵本を読んで、「将来、物を書く人になりたい」って初めて思った。


ここ数年、「好きなことを仕事にしよう、好きなことで生きていこう」って風潮がすごいですね。

生活をしていくための手段から、生きる目的として仕事を捉えるようになってきたのかなと思っていますが。そんないま、みなさんはどうやって職業を選びましたか?いまとは全く違った時代に生きたVi男子のみなさんは、いったいどんな風に職業を選んだのか。それからもし戻れるとしたら、なりたい職業について聞いてみました。これからを考えるひとの参考になれば嬉しいです。全6回よろしくお願いします。

MONOGATARI KAIGI @DAIKON no KAI
#28GIJIROKU

モノガタリテラー 
だいこんの会 
永遠のギタリスト ナギー(75歳)
ガチな美術マスター 上さま(85歳)
江戸っ子オーガナイザー かとちゃん(78歳)
言葉のファンタジスタ スーさん(80歳) 
精巧な折り紙職人 ぐっさん(77歳)

ナビゲーター
アトリエクロック
いまちゃん(36歳)
さそんさん(仮45歳)

・ ・ ・

05 
講談社の絵本を読んで、「将来、物を書く人になりたい」って初めて思った。



いまちゃん
スーさんは「農業いやだなぁ〜」て思って、なにか他に思うことがあったんですか?

スーさん
それでねぇ、昭和24年だったかな、こっちへ出て来たのが。「やっぱり東京で暮らそう」って、一家でどおっと出てきたんだよ。そうしたら東京ってなんか一年中お祭りみたいなとこだったね。明るくて、電気が煌々と付いてて、「わあ嬉しい!」と思って(笑)。

一同
(笑)

スーさん
ただ、4年間田舎の生活しててね、田舎って蔵があるんだよ。そこに代々使った物、子どもの使った物がいっぱい詰まってるの。でぇ、そこに講談社の絵本があったの、こんな分厚い本でバアーンと、いっぱい!

いまちゃん
絵本?

スーさん
そう、絵本。それでその絵本を、最初こっちから読みなさいっていうところから、一冊づつ読んでったら、毎日毎日面白いんだよ!

そこの刷り込みがあって、「将来なんかそういう物を書く人になりたい」って、初めて思ったんだよ。

だって他に遊ぶもん、なんにもないもん。腹は空くしさ、なんか食べたいっても、なんにもないし。ただ本読むだけ。でもそれで一時、忘れられたからね。

上さま
講談社の絵本ね。講談社の絵本ってみなさん覚えてる?

スーさん
立派な本だよね。

上さま
ぼくはそれで育った時代だったからね。子どもながらに、あんな体系的であり、あんないい本ないって思ったよ。まだ、ちいちいぱっぱやるようなね、あるいは、おとぎ話っていうのはいっぱいありますけど。

講談社っていうと小学生が読むのかなぁ、分厚くてね、読み応えがあるんだけどさ、いい本だって思ったよね。描かれてるのは戦争のことが圧倒的に多いんだけども。

まあそれは、さっきも話したペンを持つか銃を持つかってことで、ほとんどの画家がみんなどっちか選ばなくちゃいけないわけで。描くとなったら、作家によっちゃあ、怖いこと描けない人は、馬とか動物を戦地の動物ってことで描くんだけど、そうじゃないひとは突撃のとこで鼻垂らして、玉砕する様子とかね、そういうのを描いたりしてるけど。

あれがひとつの情報源だったのかなぁ。いま思えば結局、そういうものでも煽られてたんだよね。講談社っていまもあるよね?

スーさん
あります、2番目に大きい。

上さま
だからすごい大きいな会社だし、講談社でもそんな時代で。その絵本ってのは、すごく自分の考えを占めてる物で、大きな影響をあたえる物だったんだよね。

ぐっさん
スーさん、そういう環境があったからのちの仕事にね、活きたんだね。

スーさん
だから刷り込みみたいなもんだよね。

いまちゃん
そうですよね!いまお聞きした話ですと。

スーさん
だけども、うちもさ、片親だったから。けっこう難しい人生歩いてきたの。まあ、大学は飯田橋の近くの法政だったんだけど、途中で辞めちゃって。それが悪っい女に引っかかちゃってさぁ〜(笑)、初めてさ、女ってこんな良いもんかと思ったのは、その時代だよ。

上さま
神楽坂か。

スーさん
(笑)

一同
(笑)

スーさん
でね、兄弟やなんかに集めてもらった月謝、つかちゃったのね。だから学校に月謝払えなくて。そしたら「月謝払って下さい」って催促の連絡が、家族にいってさぁ、そんな家族に連絡いくっていうのは知らなかったんだよ。うち帰ったらみんな怒ってんだよ。「なんで怒ってんの?」つったら、「お前最近どこ行った?」って(笑)。

ナギー
月謝払わないで芸者買っちゃったとかね(笑)。

一同
(笑)

スーさん
いつの時代もそういうのあるじゃないですか、そういうの引っかかんの早かったの(笑)。それから兄弟が口きいてくれなくなってねぇ・・・・、なんとか自分でアルバイトしなきゃいけないって。でぇ、アルバイト片っぱしからやったんだけど、一番稼ぎいいのが、ニコヨンで。当時はニコヨンつってね、254円が日当のお金なの。

ナギー
うん。

スーさん
大学行くとアルバイトの募集が貼ってあって、ニコヨンがあると、パッと目につくんだけど、それは成人の大人の募集で。「体を考えて選びなさい」って注意書きがあってさ、学生の体が細いのはできないじゃない。それで選んでやった中で、一番ニコヨンに近かかったのは、水道の修理の穴掘る仕事。ツルハシ持って。

一同
ああ〜。

スーさん
でもねぇ、あれはもう、ほんとに辛かったぁ(笑)。やっぱりいまも細いけど、その頃も細かったんだね、おれ(笑)。

上さま
ブルトーザーがない時代だからさ、石運ぶのにひとが担いでねぇ。おれなんかも橋造る仕事で、谷間の岩場を命をかけて行くような仕事をみんな手でやったね。

スーさん
それでね、大学、なんとか上手く2年に上がったんだけど、2年から3年に上手くあがれなくて。仕方ないフラフラしてたら、友人が、「ある広告会社で広告を書く商売があるけど、お前紹介するけどやってみる?」つって。「どこ?」つったら資生堂だっていうから、文書書いて持ってったら「お前合格だから、おれの代わりに行け」って言われてさ。

実はそれは試験だったんだけど、そんなこと分かんないであとで知ったんだけど。でぇ、おれ行くことになっちゃったから「お前どこ行くんだよ?」ったら、「おれは違うとこ行く」つって。そいつは結局、企業調査の草分けになったの、探偵みたいなもんに。

ぐっさん
帝国データバンクみたいな。

スーさん
そうそうそう、日本中飛び歩いてさ。そしたら、会社のことが一眼で分かるようになるってね。大っきい会社も小ちゃい会社も、調査に行くと、この会社はダメな会社か、いい会社かってのが、数歩入ると分かるようになるって。いい会社は匂いはしないし、ゴミはないし、態度はいいしって。

で、話し戻すと、そいつが行こうとしてた所におれがスポっとおさまって、そっからコロコロコロコロっと、3つ4つ、それで最後は博報堂。すごいっしょ(笑)。

彼も、もしかしたらひと探すのにお金もらってるかもしれない。でも、そうやって仕事変わるときは、ひたすら間に入ってくれた人が居たから助かったよ。入って一回目のご飯会はすごくいっぱいお金遣ってくれてねぇ、ご馳走をして頂きました(笑)。だから銀座好き、銀座大好き(笑)。

一同
(笑)

ぐっさん
でも、スーさんは幼少の頃の本が好きだってのが、そのまま職業、商売に活かされてんだね。

スーさん
ほんとはどっかで、そっち(絵本)へ移りたかったんだけど、移った瞬間に金が入って来ないときがあるでしょ、最初は売れないから。ここをどうやって埋めていくかっていうのが難しいんですよ。賞とか獲ればいいんだけど、賞なんかなかなか獲れない。

それでも手応えがあったところは何社かあって、小ちゃい会社だけど「作品流してやる」って言われて。ただ、「日本中の書店に流せるパイプはもってるけども、君に掛ける気はしない。だからいくらかお金を負担して下さい」って。でぇ、「えー50万も!?」とかさ(笑)、そうやって一つ一つチャンスが潰れてっちゃって。

ぐっさん
やっぱり、そういう賞とか獲ると箔が付いたりなんかして売れるんですか?

スーさん
賞を獲った作品は、賞を獲った時点で、すでに金になってるわけですよ。賞金30万とかさ、そういうお金が入ってきて。で、やがて芥川賞とかそういうのいくと100万とかもっと入る。そこからなんたって、賞を獲ったことで本が一挙に、何十万と売れていく。わたしは、そこへなかなか辿り付けなかった。獲ったお金ですぐ遊んじゃう(笑)。

一同
(笑)

スーさん
遊びはいいんだよぉ〜、ほんとに〜(笑)。

上さま
ぼくが東京出てきてからだけど、売春禁止法ってのがね、昭和33年の3月31日だったかな。ぼくあの日、吉原に居たけどさ、

一同
(笑)

上さま
金がねえからね、入れないんだけど。でも、あそこで最後の31日を過ごしたよ、おでん食いながら(笑)。

一同
(笑)

スーさん
そういうんじゃ、わたしは女手ひとつで育っちゃったから、お袋がいっつもすごい心配してくれるの。

ある時さ、「今日は高校卒業したから、こういう人たちと遊びに行く」つったら、封筒持してくれてね、中見たら、「なんで7万円も入ってるのお!?」って。すっかり、お袋が筆下ろしに行くと思ってたの(笑)。「みんなの分かなあ?」とかいろいろ考えて、あんまり大きいからさ翌日勝手に後悔してさ(笑)。

上さま
いい母親だねぇ。

スーさん
そんなことしなくても自然とそうなってくのにね(笑)。

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2019-10-07-MON
(つづきます。明日は、)

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