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ひきこもりのはじまり 02-おさまるところにおさまってくんだから、 君も僕もそうやって生きてきただろ?



「中高年のひきこもり」。わたしの身近でも起きていることだけれど、わたしにできることはあるのだろうか・・・・。メディアでも目にするようになってきたし、気になっていた。今回はそんな「中高年のひきこもり」をお題に伺ってみました。生まれた時から衣食住に困ったことのないわたしと、生きるか死ぬかの時代を生きた上さま、戦後を一生懸命に駆け抜けてきたみんな。それぞれの考えがぶつかり合う、熱い時間を、どうぞお聞きください。

MONOGATARI KAIGI @ だいこんの会
#52GIJIROKU

ストーリーテラー 
だいこんの会
・永遠のギタリスト ナギー(75歳)  
・ガチな美術マスター 上さま(85歳) 
・江戸っ子オーガナイザー かとちゃん(78歳) 
・言葉のファンタジスタ スーさん(80歳) 
・精巧な折り紙職人 ぐっさん(77歳) 

ナビゲーター
アトリエクロック
元ギャルバン娘 まるこ(矢田)


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02 
おさまるところにおさまってくんだから、
君も僕もそうやって生きてきただろ?



上さま 
まぁ、ヒモの話は置いておいて(笑)。派遣会社ができたのってさぁ。

スーさん 
派遣会社って昔からアメリカにありますよね。

上さま 
あるねぇ。日本に「派遣」っていう名称が出てきたのは1990年代だったかな。

ぐっさん 
昔は派遣っていえば、限定された特殊な職業の人だけが派遣をやってたけどさ、小泉内閣を機に事務職の派遣とかも生まれちゃって、どんどん変わっていったでしょう。

スーさん 
そうだね。そもそも派遣の人たちってのは特権階級の人たち、特殊技術を持ってる人たちだったもんねぇ。

ぐっさん
その枠を一般の産業まで小泉政権が広げちゃったわけでしょ?

スーさん
まぁそうだね、本来の質がだんだん低下していったよね。本来は派遣が切られるなんてことはなくって、「優秀な人材だから来てください」って引き抜かれていくものだったからね。

上さま
僕の体験で言うと博物館ってあるじゃない?で、美術館の中にも切符のもぎりとか、カタログ販売とか監視員とかの仕事があって、そういう仕事を派遣の人が担当することが多いんだよ。大体そういう派遣さんって、学芸員の国家資格を持ってるんだけど、美術館の正規職員になれるのって、ほんと狭き門なわけよ。50倍100倍の競争なんてザラだからね。僕が責任者のころ、4年生の大学を出た20代半ばの男の子が「もう3年も派遣をやってるんですけど、なんとか正規雇用になれませんか?」って泣きつかれたことがあって、僕も気持ちとしては「何とかしてやりたいなぁ」って思ったけどさ、こればっかりは僕一人でどうにもできないことだったからねぇ。

ぐっさん 
派遣はさ、一時的には会社にとっていいと思いますよ。日給で雇うわけだし、ボーナスとか出さなくていいんだもん。ただ長い目で見た時に日本の社会が沈没していくことになるんだよね。

スーさん 
ならないよ。

ぐっさん 
いや、ならないっていうかさ。

スーさん 
だって、資本主義っていう枠の中で我々は生きてるでしょ?
で、その枠の中でいろんな変動があるのは当たり前のことですよ。例えばこれからITがもっと加速していったら、俺たちみたいなアナログな人間なんて、もう生きていけなくなる可能性だってあるわけだよ、そういういろんな可能性の中の一つなんだよ。
上から下までみんなが同じ給料でやるとか、そんな共産主義みたいな考え方だったら、世の中発展していかないでしょ。

ぐっさん 
いや、共産主義がいいって僕は言ってるんじゃなくて、やっぱり弱い立場の人たちを政府が如何に救い上げていくかっていうのを考えないと、日本はますます先細りになっていくんじゃないかって思うんですよ。

スーさん 
そういうことに重きを置いちゃうと、諸外国にどんどん抜かされていっちゃうでしょ。先端技術の開発にしたって日本はどんどん負けてるわけだし。

ぐっさん 
そういうITとか、今の時代に合ってることをやってる会社だけが儲かっていくわけでしょ?

スーさん 
極端に言えば、社会が発展していけば、いずれはアラブの石油国みたいに、みんな働かなくなっていくんだよ(笑)。

ぐっさん 
そんな先のことまで僕はわかんないですけど、資本主義だから「弱いやつなんかいらないよ」ってことがふつうになっちゃたら、「じゃあ政治ってなんなの?」ってことになるじゃないですか。

スーさん 
それはもう、個人の資質の問題だよ。

ぐっさん 
いや、個人の資質じゃないですよ。
今ってなんでも自己責任で片付けちゃう風潮になっちゃってるでしょう、それって良くないと思うんだよ。だって自己責任で済む問題じゃないことも、たくさんあるんだからさ。

スーさん 
だから、俺もいろいろと我慢してるんだって(笑)。

ナギー かとちゃん まるこ 
(笑)

ぐっさん 
スーさんとか上さまとか能力のある人は、いいですよ。自分で人生を切り開いていけるだけの力があるんだから。

スーさん 
いや、俺は能力ないって(笑)。

ぐっさん 
いや、あるって。そういう能力のある人は自分でなんとでもできるけどさ、そういう域に達しない人のほうが多いでしょ?

スーさん 
でも、俺は折り紙折れないよ(笑)。

まるこ 
でも、能力って一括りにするのもやっぱり難しいですよね。「自分には才能が無いから何もしない」っていう選択肢をとる人もいれば、「才能が無いから努力するんだ」っていう選択をする人もいるわけで。ただ、失敗した時にチャレンジできる土台というか、世の中がもっと温かい目で見て欲しいなぁとは、思いますね。

わたしも20代のころに人生失敗したようなものなので(笑)。

でもそこから這い上がる時に、周りの人たちにほんと助けられました。家族や友達や今の会社のボスとか、人にすごく恵まれたんですよね、周りの人たちが「こうやって生きていけばいいんだよ」とか「仕事ってこうしていけばいいんだよ」とか、たくさん教えてくれたんですよ。だから、今こうやってここにも来られる自分がいるし。引きこもりの人たちも「このままじゃいやだ」とか「なんとか抜け出したいけど抜け出せない」って人たちもいると思うので、そういう人たちが何回でもチャレンジできる温かい世間の目が欲しいですよね。

スーさん 
でもさ、引きこもってる人達は高等遊民で、すでに周りから手厚いサポートを受けてるんだからいいんだよ。だって、生きていけてんだから。ぐっさんが言ってるのは食べていけない人たちのことを言ってるんでしょ。いろんな理由で、本当に食べていけない人たちだって、この世の中にはいるでしょ。引きこもりっていうのは、そういう底辺の話じゃないんだよ。引きこもっていられるんだから、引きこもれる間は好きなだけ引きこもっていればいいじゃない。だから、お前さんとこは従兄弟かなにか知らないけど、お前さんが可愛がってあげればいいんだって(笑)。

まるこ 
もう、茶化さないでくださいよ〜(笑)。

ぐっさん 
でも、好きなだけ引きこもってるなんて、そんなこといつまでも続けられるわけないでしょう。

スーさん 
そう?

まるこ 
んー、でも今のスーさんの意見と、うちのボスの意見って近しいものがあって。わたしが「今度、引きこもりについて話そうと思ってるんです」と伝えたら「それに対してどう思ってるの?どうしたいの?」って言われて。「引きこもりがなくなればいいとまでは思ってないけど、やっぱり1回切りに人生なんだから、引きこもらないほうが、いろんな経験もできて楽しいだろうし。だから、そういう人たちが少なくなったらいいかなって思ってます」って言ったら、「引きこもりの人たち=不幸せって勝手に決めつけてない?引きこもってたとしても、いまはその場所が必要なのかもしれないし、いいのかもしれないし、もしかしたら幸せだってこともあるかもしれないでしょ。引きこもりってどこから生まれてくるんだろうね」って言われたんですよね。それを聞いて「あ、なるほど。たしかに。」って納得して、引きこもることイコール幸せじゃないって、勝手に定義付けしてたことを反省したんですよね。

スーさん 
だろ?だから、飯が食えて寝る場所があるからそれでいいんだよ。だってさ、戦後の飯が食えない時代の時なんか、そんなやついなかったからね。みんな毎日必死だったから、それだけ今は余裕があるってことでしょ。

ぐっさん 
たしかに余裕があるからってのもありますけど、このままで済むわけがないですよ。だって、食べさせてる親だってどんどん高齢になってきてるんだから。

スーさん
そりゃあ、他所さまの家庭の問題なんだから考えなきゃいいじゃない。

ぐっさん 
いや、他所の問題っちゅうことじゃ済まされないですって。世の中全体で考えていかないと。

スーさん 
引きこもりの人たちは、親がしっかりしてるからいいんだよ。

ぐっさん 
じゃあ、その親が亡くなったらどうするんですか。

スーさん 
親が財産持ってるかもしれないじゃない。

ぐっさん 
財産がない場合はどうするんですか。

スーさん 
親のお金がない子は自立するよ。お前さんとこの親戚はどうなの?

まるこ 
うちの親戚の場合は、不動産持ってます・・・・。

スーさん 
ほらな〜、大体そういうもんなんだよ。

まるこ 
・・・・昔、その親戚が「将来は家賃収入あるからいいんだ」って言ってるのを聞いた時は、もう何も言えなかったですが。

スーさん 
不動産があるならいいじゃない、鴨の味作戦やってみな(笑)。

まるこ 
いや、従兄弟じゃないですから(笑)。

ナギー 
そういう風に生活できる計画になってればいいですよね。
だけど、親の年金に頼ってずっと引きこもってて、親が死んでも役所に届けないとか、そういうのは良くないですよ。

スーさん 
縁の下に隠せばいいんじゃないの?

ナギー 
ははは。隠せるものじゃないじゃん(笑)。

一同 
(笑)

ぐっさん 
笑い話のうちはいいけどさ、実際にそういう事件も起きてるしねぇ。

スーさん 
そんなの、0てん何パーセントの話じゃない。

ぐっさん 
例え0てん何パーセントの話だって、社会問題として取り上げなきゃだめでしょう、放っておいちゃだめだよ。

上さま 
うちの孫の場合はさ、引きこもりとはまたちょっと違うけれど、4年生の大学を出て就職したけど2年経ったら辞めちゃってさ。
俺、就職祝いでご飯連れてって、飲んで食べてご馳走してさ、「おじいちゃんにはそのうちご飯ご馳走しなきゃな」って言ってたと思ったら、もう辞めてんだからなぁ(笑)。

まるこ 
それは、他に移りたい企業があったとか、ご自身で何か起業されたいとか?

上さま 
それもあるかもしれないよね。ただ今って、一つの会社にずっといることに拘らないしねぇ、転職しやすい時代になったよ。だから、ある意味昔よりも自由ではあるよね。

スーさん 
そうそう。だから上さまのお孫さんみたいに、できる人たちは、みんないいとこ目指して、どんどん辞めてっちゃうからね。会社側は残って欲しいって思う優秀な人材ほど辞めてっちゃうんだから、大変だよな。

ぐっさん 
でもさ、会社を変えたとしても、全員がうまくいくとは限らないでしょう。

スーさん 
いいんだよ。おさまるところにみんなおさまっていくんだから、いいんだって。君も僕もそうやって生きてきただろ?

ぐっさん 
僕たちの時代はまだ良かったけど。

スーさん 
彼らの時代もこれでいいんだよ。

ぐっさん 
でもうまくいかない場合だってあるじゃない。

スーさん 
その時はめげるだろうよ。めげたらめげたで、また違う選択肢が出てくるからいいんだよ。

ぐっさん 
そういうことを繰り返して乗り越えられる人はいいけれども、失敗して深みにハマっていく人もいるわけじゃない。

スーさん 
大丈夫だよ。みんなどっか居心地のいいところに引っかかるように人生なってんだから。

ぐっさん 
たしかにそうかもしれないけど、自分の理想とかみんなできれば叶えたいわけでしょう?

スーさん 
居心地のいいところが、理想が叶ったところなんだよ。

ぐっさん 
「叶わなかった」って、悲観する人もいるわけでしょう?

スーさん 
そう悪いことばかり考えるなよぉ(笑)。

ぐっさん 
悪いほう、悪いほうに考えてるわけじゃないけどさ(笑)。
俺たちの時代はいいよ、俺たちあと十数年でみんな居なくなるわけだし。ただ、20年後30年後、まるちゃんみたいな若い人たちが、このままいったらすごい苦労するじゃない。

スーさん 
そんな先の心配すんなよぉ。な〜んでそんな先の心配すんの(笑)?

まるこ 
上さまは、何かご意見ありますか?

上さま 
う〜ん、そうだねぇ。さっきからずっと考えているんだけど、自分の身の回りで体験してないからさぁ、わからない、掴めないんだよな。

スーさん 
責任感がないだけですよ。

ぐっさん 
責任感って言うけど、「努力したけどうまくいかなかった」って人もいるじゃない、頑張って勉強したって、うまくいかない人だって沢山いるんだし。

スーさん 
例えばさ、父親と母親がいて、2人とも働けない状態だったら自分が働くしかないでしょ。最悪な場所で働いてたとしても、そういうやつは一生懸命働くんだよ、それが責任感なわけだよ。だから責任感がなくなると、頼れる場所があったら頼るんだよ。

まるこ 
責任感は環境によって生まれてくるってことですか?

スーさん 
そう思うよ。

まるこ 
う〜ん、でもそうしたら、親の育て方が原因になっちゃうってことですか?

スーさん 
原因なんてないんだよ。同じ環境だって、引きこもらない人だって、たくさんいるんだから。

まるこ 
そうですよねぇ。そこを攻めるのは違いますよね。

ぐっさん 
かとちゃんが持ってきてくれたこの記事だと、親が「お前の育て方が悪いんだ」って、親族から責められることが多いって書いてありますね。

スーさん 
そんな親族との付き合いなんてやめちゃえばいいよ。

ナギー 
登戸の殺人事件の犯人も、一緒に住んでた叔母さんからあーだこーだ色々と言われたのが、動機の一つだったっんでしょ?なんかニュースで言ってましたよ。

かとちゃん 
いろいろ言われて、カーッときちゃったんですかね。

上さま 
この間の京都アニメの事件はどうなの?

スーさん 
犯人の動機ってわかったの?

まるこ 
なんか、「自分の小説を盗まれた」って訴えてるみたいなんですけど、そんな事実はないっていう報道です。

上さま 
やっぱ、精神的にふつうじゃないよね、だから難しいよなぁ。じゃあ事件を起こさないために、社会生活をふつうに営めない人たちを自由に出歩かせるのをやめさせるなんて、そんなことできないしね。人権や精神衛生法とか関わってくるしね。

まるこ 
たしかアメリカだと、犯罪を犯した人が住む周辺住民には知らせてますよね。

スーさん 
婦女暴行犯ね。

ぐっさん 
体にGPSを埋め込んで、警察が行動を把握してるみたいですよ。

上さま 
安心っちゃあ安心だけど、日本だと人権が絡んでくるからすぐにはそんな対策できないしねぇ。あ、そろそろ行く?これからカラオケ屋まで歩いていかなきゃいけないし。

まるこ 
そうですね。ぼちぼち片付けながら暑気払いに行きますか。

スーさん 
今日はなんかヒートアップしたなぁ(笑)。

ぐっさん 
そうですね(笑)。まるちゃんもさ、偉いね。自分の身内の話だったし、みんなに言うのって勇気が必要だったでしょ?

まるこ 
そうですねぇ。ただ、自分の中でずっとモヤモヤしてましたし、みなさんの意見を聞いてみたいなって思ったんですよね。

ぐっさん 
そっかそっか。でも、難しい問題だよね。

まるこ 
そうですね。でも、言葉に踊らされないようにしたいなと思いました。やっぱり、報道とかで騒がれてる対象になってると、ネガティブなイメージを勝手に持っちゃうんで、わたし。引きこもりっていう言葉で一色たんにしないで、ちゃんと知って、ちゃんと考えないとなと。でぇ、ほんとに助けを求めてる人には、手が回るような社会にしたいですね。

ぐっさん 
そうだね。じゃあ気をとりなおして、暑気払い行きましょうか。

まるこ 
はい!

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2019-08-31-SAT
(おわりです、次回もおたのしみに。)

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