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ひきこもりのはじまり 01-失敗してもリベンジっちゅうか、 また挑戦できるように。

『ヴィンテージ男子のモノガタリノート』本日配信開始です。通称 #ヴィダンシnote で連載していきます。

こちら、隣人文化系ダイアログマガジンです。ヴィダンシ(ヴィンテージ男子)と語るモノガタリ会議の会話を収録、いつか役立つ知恵と戯論、そして次世代へたくす問いを、たっぷりとお届けしていくnoteになっています。人生物語・社会課題・雑談・昔懐かしい話・オススメ情報などを配信していきます。しばらく平日11:30頃-に配信予定。よろしくお願いします。


「中高年のひきこもり」。わたしの身近でも起きていることだけれど、わたしにできることはあるのだろうか・・・・。メディアでも目にするようになってきたし、気になっていた。今回はそんな「中高年のひきこもり」をお題に伺ってみました。生まれた時から衣食住に困ったことのないわたしと、生きるか死ぬかの時代を生きた上さま、戦後を一生懸命に駆け抜けてきたみんな。それぞれの考えがぶつかり合う、熱い時間を、どうぞお聞きください。

MONOGATARI KAIGI @ だいこんの会
#52GIJIROKU


ストーリーテラー 
だいこんの会
・永遠のギタリスト ナギー(75歳)  
・ガチな美術マスター 上さま(85歳) 
・江戸っ子オーガナイザー かとちゃん(78歳) 
・言葉のファンタジスタ スーさん(80歳) 
・精巧な折り紙職人 ぐっさん(77歳) 

ナビゲーター
元ギャルバン娘 まるこ(矢田)


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01 
失敗してもリベンジっちゅうか、
また挑戦できるように。



まるこ
本日もよろしくお願いします。そういえば、今日ってまだポットが届かないですねぇ。いつもならこの時間にはとっくに届いているのに、どうしたんでしょう。

ぐっさん 
あ!ごめんね。「今日は暑気払いもあるし、早めに会議を切り上げよう」って、昨日スーさんと電話して決めたんだよね。それで僕のほうから包括さんに連絡して、「今日はポットは大丈夫です」って伝えてたの。まるちゃんに連絡するの忘れててごめんね。

まるこ 
とんでもないです!そういうことだったんですね、了解しましたー!

スーさん 
今日の暑気払い、楽しみだなぁ。カラオケの、あの、ピッピッピッってやるやつ、得意?

まるこ 
はい!リモコン操作はお任せくださ〜い。

ぐっさん 
さすがだねぇ。われわれはそういうの、苦手だからね(笑)。

上さま 
そういうのは得意な人にお任せしましょ(笑)。

まるこ 
あれ?スーさんが持ってるのって、いのっちの自分史ですか?

スーさん 
うん、そうだよ。ゆっくり読みたかったから、いのっちから借りたのよ。すごく良かったよ。俺はもう全部読み終わったから、次はぐっさん読む?

ぐっさん 
いいですね、じゃあお借りしていこうかな。

上さま 
いのっちのマラソンの話とか、すごいよねぇ。

ぐっさん 
マラソンやってたんですか?

スーさん 
九州地区で1位だよ。

まるこ 
えー!すごーい!

ぐっさん 
そうだったの?アスリートじゃん!あ、ほんとだ。この写真がそうなんだ。

スーさん 
九州で1位取ったけど、マラソンやってても得しないってわかって、辞めたんだって。

ぐっさん 
へ〜。

まるこ 
では、開始時間も過ぎたので、そろそろ始めていこうと思います。
前回の会議終わりに、触りを少しお話させていただきましたが、今日は「中高年の引きこもり」についてお話ができたらなぁと思ってます。
今回、なんでこのお題を持ってきたかっていうと、自分にも関わりがあることだからなんです。実は、わたしの親戚の中にも当事者となる人が居まして、20歳のころから約20年間引きこもっているんです。法事とか結婚式とか、親族間の行事で数年に1回は会ってるんですけど、なんか見るたびにどんどん太ってくし、痛風にもなっちゃってるし。

スーさん 
俺だって痛風だよ。

まるこ 
あ、そうでしたね(笑)。

スーさん 
俺、引きこもりだから。

まるこ 
いやいやいやいや(笑)。
それでですね、その親戚に会うたびに毎回複雑な気持ちが湧いてくるんですけど、この5月に久々に会ったら、やっぱりそういう気持ちになりまして。もともとすごく優しくい人なので、やっぱり心配というか・・・・。

スーさん 
その方って、従兄弟ではない?

まるこ 
違いますよ〜。

スーさん 
なんだぁ。もしね、従兄弟だったら、「従兄弟同士は鴨の味」って言うんだよ。

まるこ 
鴨の味?

スーさん 
美味しいんだって。

まるこ 
ん?何が美味しいんですか?

スーさん 
いいんだって。

まるこ 
ん?何がいいんですか(笑)?

スーさん 
接近すると。

まるこ 
接近(笑)?親でもなく兄弟でもなく、ちょうどいい距離感だから話しやすい、仲良くなりやすいってことですか?

スーさん 
違ぁうよ。
「従兄弟同士は血が濃くなるから、くっついちゃだめ」って言われてるけど、昔からの言い伝えで、「従兄弟同士で夫婦になると愛情深い夫婦になる、鴨の肉の味みたいにいいもんだ」って言われてるんだよ。
案外、従兄弟同士でくっついてるのって世の中多いんだよ。

まるこ 
へ〜。

スーさん 
お前さんまだ独りなんだろ?だから、従兄弟だったら、じゃあいいじゃんと思って(笑)。

ぐっさん 
あははは。

まるこ 
なるほど(笑)。そういうことですか・・・・。
えーっと、従兄弟でそういう場面に出会ったら検討させて頂きます(笑)。
でぇ、気になっているんですけど、じゃあ自分は何かしようかと、そういう気があるのか?っていうと、自分は自分で精一杯で、何もできてないです。ただ、ずっと気になってきたことだったので、みなさんの話を聞いてみたいと思って。

それで今回いいキッカケだと思って、中高年の引きこもりについて、少し調べてみたんですよ。

そしたら、中高年の引きこもりって、61万人もいて、若い世代の引きこもりよりも多くなっているそうです。引きこもりの親たちが高齢になって、親の年金で生活しているケースもあるとか、いろんな情報を知ったら、ここまで引きこもりが多くなったのって、人々の価値観とか社会の在り方っていうか、日本の社会の闇や歪みだなぁって思ったんです。

スーさん 
こんなことって言ったら何だけどさぁ。こういうことが社会問題になること自体おかしくない?アメリカなんて、高校を出たらほとんどの親は支援なんてしないよ。「はい、頑張って好きなように家を出てください。」って、そういうのがふつうだよ。

まるこ 
う〜ん、それを聞くと日本の親って、いつまでも子供のサポートが手厚いというか、ずっと自分の側にいて欲しいって望む人が多いような気がしますね。

ぐっさん 
日本の場合だと子供を一個人として見ないで、いつまでも子供として見ちゃうんだよね。アメリカ人みたいに割り切って「個」として考えられないんだよね。

スーさん 
要は、親のほうが子離れできないんだよ。

ぐっさん 
そうですよねぇ。アメリカだと大学費とか、高校時代に自分のアルバイトで貯めた蓄えから出すっていう人多いみたいだもんね。

スーさん 
あとはさ、アメリカは軍隊の仕組みがうまいことできてるんだよね。お金がない人たちは「軍隊に入れば大学資金出してあげますよ」っていう仕組みになってるみたいだからね。それか、軍隊ってお給料いいから、金を貯めて除隊して、またお勉強して大学に入るとかね。うまい仕組みになってるんだよな。

上さま 
なるほどねぇ。
ちょっと話変わっちゃうけどさ、韓国だって徴兵制度があるもんね。

スーさん 
そうですねぇ。韓国も徴兵で軍隊に入って出てきても、その後大学に入るにしても就職するにしても、何もハンディはつかないからね。
これが日本だとさ、どこぞの医学部では1年浪人したやつが試験を受ける時は最初から30点引きとか、みんな死ぬ思いして頑張ってきてるのに平気でそういうことやるでしょ?

かとちゃん 
そういう事件ありましたねぇ。

上さま 
ちょっと徴兵の話になるけどさ、日本も明治政府のころは徴兵制度があったんだよね。義務だったから僕の父親も行ったし、僕も行くもんだと思ってたけど、僕の場合は中学あがる前にちょうど終戦になったから、結局軍隊には入らなかったけどさ。何が言いたいかっていうとね、やっぱり教育って怖いのよ、人を変えちゃうっていうかさ。昔の旧制中学、今で言う高校には青年将校が各校に配属されてて、男子は鉄砲、女子は薙刀とか訓練しながら教令を教わっていくわけよ。で、だんだんと軍人が養成されていくんだよね。軍人で一番「恐いなぁ」と感じたのは、中級以上の軍人が持っていた軍刀、あれはほんと恐かったね。

まるこ 
刀ですか?

スーさん 
サーベルね。

上さま 
その軍刀をぶら下げるのが軍人にとって一つの誇りでもあったんだけど、その軍刀で敵国の何の罪もない民間人をふつうに切っちゃうんだよ。もうね、戦争っていうのは本当に恐ろしいよ。そういう教育を、ついこの間まで子供だった中学生にやらせるんだもん、ひどい話だよねぇ。そういう教えを叩きこまれてるから、実際の現場に行くと何でもやっちゃうんだよ。そういう恐ろしいことを僕はこの目で見てきてたからねぇ。いのっちだって4ヶ月くらいは教練受けたんじゃないかな。

まるこ 
実技だけじゃなくて精神論も叩きこまれていくんですもんね。

上さま 
そうだよ。歌にしたって、歌で精神論叩きこまれちゃうんだからさ。あの当時の歌といったら、全部天皇陛下のため、 お国のためっていう歌しかなかったからねぇ。学校の毎朝の朝礼では、天皇陛下を神様のように拝んでたしね。

まるこ 
教育って恐いですね。

上さま 
恐いよ、ほんとに。

かとちゃん 
ちょっと話を戻しますけど、先週新聞にちょうど引きこもりの記事が載っててね、気になったから持ってきてみましたよ。わたしはこういうの、よくわかんないですけど。

まるこ 
あ、ありがとうございます。

ナギー 
今の中高年、というか40代くらいの引きこもりの人たちはさ、彼らが若いころに就職氷河期が始まっちゃって、そのタイミングで就職できなかった人とか、それがキッカケで引きこもっちゃうケースも多いみたいだよね。

上さま 
就職氷河期は長かったからね。平成初期から20年くらい続いてたでしょう、ようやくこの5、6年くらいで回復はしてきたけどさ。

ぐっさん 
だから、日本の社会の成り立ちが1回失敗しちゃうと、ずーっとそのまま続いちゃう仕組みでしょ?

まるこ 
同感です。なんていうか、社会全体に「失敗できない」っていう息苦しさ?みたいなものをすごく感じます。

ぐっさん 
そうなんですよ。失敗してもリベンジっちゅうか、また挑戦できるように社会の仕組みを変えてくれればいいんだけど、新卒で会社に入れなかったら「失敗したやつ」っていうレッテルを世間が貼るでしょう。例え頑張ってどこかの会社に入れたとしても、負け組じゃないけどさ「失敗したやつ」っていう風に見る人が世の中多いでしょ。だから、よっぽど精神力の強い人じゃなければ、そういう世論に打ち勝っていくのは大変だよ、世の中は強い人ばっかりじゃない、弱い人のほうが多いんだから。今の吉本の社長じゃないけど、ああいう強い人間に怒鳴られる人間のほうが多いんだから。

さっきまるちゃんが、日本社会の闇とか歪みとかって言ってたけど、小泉政権になってから派遣社員がすごく増えたでしょ、あのころにまた大きく歪んだよね。だってさ、正社員枠を減らして派遣の仕事枠を増やして、税金を収められない人たちが今後増えてくるわけでしょう、そうすると日本の社会自体が20年後30年後に成り立たなくなっちゃうと僕は思うんだよね。こういうことにちゃんと取り組むのが政府の仕事なのに、その政府が切捨御免みたいに、弱い人を切り捨てていくなんて、どうするのっちゅうことですよ。今の日本は階級社会にだんだんなってきちゃってるじゃない。

スーさん 
ぐっさんの考えは終身雇用が基盤にある考えであって、今は終身雇用が不可能になってきてるわけでしょう?そうすると会社側だってリスクを避けたいんだから、一定期間少し高いお金を出してもいいから、外部から引っ張ってきて使うほうがいいんだよ。

ぐっさん 
それで世の中がうまく回っていればいいですよ、でも、派遣を切られて困ってる人が大勢いるわけでしょう?

スーさん 
でも彼らは結構いい額のお金もらってるよ?

ぐっさん 
でもさ、強いものだけが生き残って弱いものが淘汰されてくなんて世の中は、やっぱり良くないですよ。

スーさん 
資本主義の世の中ってのは、そういうもんでしょ。

ぐっさん 
まぁ資本主義と言ってしまえばそうだけど、でも社会っちゅうのは弱いものを如何にフォローしていくかが大事じゃないですか。

スーさん 
弱いものって誰のことを指すの?

ぐっさん 
例えば生活困窮者とかさ。

スーさん 
俺だって生活困窮者かもしれないよ(笑)?

まるこ 
う〜ん、生活困窮者の線引きって難しいですよね。

例えば、わたしは若いころ歯医者の受付で働いてたんですけど、その歯医者は生保の受給者がけっこう多く受診するとこだったんですよ。で、ある時に生保の申請書を若い女性が持ってきて、申請書を出した彼女の手元がすごいゴージャスなネイルアートをしてたんです。それを見た時に、何とも言えない複雑な気持ちになったんですよね。もしかしたら、ネイルはその人にとって一番の楽しみで、ネイルにはお金かけるけど、あとは節制して生活してるかもしれないし、友達が無料でやってくれたかもしれないし。もちろん生保でもらったお金をどんな風に使うかなんて個人の自由なんですけど、わたしからしたら、歯医者の受付なんてお給料がすごく低いし、東京の独り暮らしはお金かかるしで、とてもじゃないけどネイルアートに行くお金なんて出せなかったので「なんかなぁ」って当時は思ってました。

こんなこと言うのもなんですけど、わたしも世間で言ったら、人生に失敗したほうっていうカテゴリーになると思うんですよね。だって、専門学校を途中で中退して、その後音楽活動に打ち込んだけど、結局結果も出せず、はじめてちゃんと就職したのなんて28歳の時ですし・・・・(笑)。

スーさん 
お!じゃあ今日の暑気払いはすごい歌が聞けるんだな(笑)。

ぐっさん 
ははは。無料で聞くの申し訳ないなぁ〜。

まるこ 
やばい、自分でハードル上げちゃった(笑)。

スーさん 
あはは。この新聞記事だと引きこもりの定義ってのは、”1、自室からほとんど出ない。2、自室からは出るが家からは出ない。3、近所のコンビニなどには出かける。4、趣味のことだけ外出する。” だって。

まるこ 
うちの親戚は3ですね。

スーさん 
まぁ要するに、俺から言わせたら彼らは「高等遊民」なんだよ。

まるこ 
高等遊民?遊民の遊は、「遊ぶ」の字ですか?

スーさん 
遊ぶ民だよ。高等遊民ってのはね、明治から昭和の初めごろまで居たんだから。

まるこ 
へ〜、親がお金持ちで、そのお金でいい暮らしして遊んでたってことですか?

スーさん 
ま、大体そんなとこだね。親が金持ちってのもあっただろうし、大学とか高等な教育を受けたのに働かないってことだよ。昔の文学者は高等遊民ばっかりだよ。「あれは文学やってるから、面倒みてやろう」ってさ。そうやって周りのサポートがあって芸術家ってのは生まれるんだよ。

まるこ 
う〜ん、なるほど。「ヒモ」とはまた違うってことですか?

スーさん 
ん?ヒモ?

まるこ 
はい、女性に食べさせてもらうっていう。

スーさん 
それは一つの理想だろ?

一同 
(爆笑)

スーさん 
「頼む、俺の生命保険やるから養ってくれ!」ってな。

一同 
(笑)

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2019-08-30-FRI
(つづきます)

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