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80歳に老後について聞いてみた(その3)


寿命が延びて、いまや人生100年時代だそうです。同時に人口は減って、社会保障、働き方も変化しています。30半ばのボクらの両親たちも第二の人生を迎えはじめました。老後の2000万円も話題になっていました。まだまだは重々承知ですが、それでもここらでボクらの第二の人生を少し想像してみようということで、老後、第二の人生をお題に聞いてみました。

MONOGATARI KAIGI @DAIKON no KAI
#34GIJIROKU

モノガタリテラー
だいこんの会 
ガチな美術マスター 上さま(85歳)
言葉のファンタジスタ スーさん(80歳) 
精巧な折り紙職人 ぐっさん(77歳)

ナビゲーター
いまちゃん(36歳)
さそんさん(仮45歳)

「船に乗れ」っていう小説、これは面白い本だよ。



スーさん 
いまちゃんに一言アドバイスしとくと、結局ね、われわれみたいに歳とってくると面倒見て欲しいの、空いてる時間を。

まだ歩けるし、動けるし、お金もあるわけじゃないけど、ないわけじゃない(笑)。みんな面倒見てくれるようなところにはお金を使っていいと思ってんだよ。だから、そのお金をどうやって吸い上げるかだな。

でぇ、いろいろこう考えてみると、子どものころから教育受けて登ってきて、社会人なって、こんど下ってって、いまはどんどん若いひとの逆を走ってるような気がするのね。この下がってくるところを捕まえるといいと思う。

登ってきた育ちざかりと、下りざかりと似てるんだよね。

いろんなひとの話聞くと、熱く語るっていうのはね、中学校や高校でなんかやってたひとだよ。例えば「合唱やってました」とか、「ギターやってました」とか、「音楽関係やってた」とか「絵画クラブいってた」とか、勉強以外のことで。

それがきっとね、年寄りの下ってきたひとたちにも言えるような気がする。だから下ってきたひとを捕まえて、年寄り向きの音楽のこういう会をもったらすぐくいついてくるかもしれない。

「船に乗れ」っていう藤谷治のベストセラー作品があるの。それは音楽家の家族の話でね、主人公は小ちゃいころからピアノだとか、チェロだとか、叩き上げられて、国立の芸術高校を受験するけど失敗しちゃう。

じゃあ仕方ないって、親族がつくった大学付属の音楽高校に入るのね。でもね、そのままじゃ行って出ても職がないっていうの。

それで、じぶんちはお金あるから、親が「ドイツ行って修行してきなさい」つって、夏休みにドイツに留学したんだって。2ヶ月間くらいドイツの管弦楽団のところに住み込みみたいに習いに行ってね。

そしたら格好だけ教えるだけで、楽器鳴らさせてもらえなかったんだよ「君の音は骨に伝わらない」つって(笑)。

それで2ヶ月くらいやってね、日本に戻ってみんなに披露したら、「音がすごい変わった」って言われるんだよ。「ああそういうことか、これはやっていけない」って主人公は思ってね、音楽家離れちゃった。そういう物語。

「船に乗れ」っていう、これは面白い本だよ。

でぇ、物語の最後はみんな定年になって、「みんなでまた音楽やろうよ」って、むかしの仲間が集まってコンサートをやるんだけど、

「音楽やってきてこんな楽しいこと、いままでなかったね」っていう終わり方なんだよ。60過ぎのおじいちゃんたちが、「こんな楽しいことなかったね」って。

だから、きっと、小学校、中学校、高校、大学ぐらいの間のどっかの地点でのめり込んでたことを、下り始めた頃にやりたいって希望を持ってるひとは多いんじゃないかって気がする。

例えば、おれなんかが「こんなのあればいいなぁ」と思うのは、言葉を教えてくれる教室があればいいなと思う。言葉って日本語ね。

さそん 
最近の言葉とかそういうことですか?

スーさん 
いや、漢字。「すすめる」っていう漢字は何字書けるかとかね。一番難しいのは推薦の「薦」ね。あれ毎日覚えようと思っても覚えられない。

いまちゃん
たしかに書けないですね。

スーさん 
書けないでしょ。あれを上手く教えてくれるひとが居れば教えてもらいたいと思う。そん次に必要なのは、筆順を正しく覚えなきゃ、字が上手くならない。そういうこときちんと教えてくれるひととが居たらいいよね。

いまちゃん
なるほど、参考になります。

上さま 
それは書道なんかも?

スーさん 
書道なんかもいいんだと思うけど、書道も筆順が分かんないと形にならない。右と左でも、筆順違うからね。右はノから入る。

上さま 
いまの教育ではどうなんだろう、ぼくらのときは厳しかったよね、書き順。ところがいま孫見てると、変な書き順するんだよね。だからどう教わってるのかなと思うけど。

スーさん 
それはやっぱりね、習字っていうのが基礎にあったから、筆順を教えないと上手く書けない。だからうるさかったんだよ。

上さま
ぼくらは習字が基本だったからね。

ぐっさん 
そうだったね、習字だったね。いまもやってるのかな?習字ってのは。

いまちゃん 
どうなんですかね、わたしは別で習ってたんで。

スーさん 
そう?あんた字綺麗だもんね、だけど書道が上手かった字じゃないね。

いまちゃん
ああ(笑)。

上さま 
うちの孫は、算盤とかヒップホップダンスだとかやってたねぇ。

スーさん 
すごいねえ。

上さま
ただ習字は習いに行ってねえなぁ。

スーさん 
親がうるさくないとね、日本の字は育たない。うちいい加減な親だったけど、でも、字にはうるさかったですよ。

上さま 
小学校入ってすぐのころ習わさられたよね。

ぼくも石川台のガード下にいつも習いに行ってね、ただ、いたずらしてクビになっちゃったんだけど(笑)。自分じゃ自覚がないんだけど、親が「ぼくはイタズラするから」っていうことで辞めさせられちゃった。でも、学校で賞獲っちゃって、親も困ってたっていうことがあったよ。

だから、幼いときに習っとくとさ、自然と基本は身についてるんじゃない。

スーさん 
習字は、久が原のどっかで女の子がやってんでしょ。

上さま 
ああ、しょうこちゃんね。あの子は天才だよ。

スーさん 
そこ教室もあるわけでしょ、だから居るんですよ、やろうってひとも。

上さま 
あそこはもう、すごい書道教室になっちゃってるよ。

谷口 
お母さんが書道家なんでしょ?

スーさん 
たいてい有名なのは親も書道家だよ。

上さま 
それでなんか流派があるじゃない。しょうこちゃんの見に行ったりすると、お母さんは明治大学文学部卒業で、なになに派とかって全部書いてあったよ。

スーさん 
書も道だから。お花とかお茶とかってのも同じじゃない。

上さま 
いまからでも書やりたいな、おれ(笑)。

スーさん 
床の間に書いた書が飾ってあるじゃない。芭蕉の俳句を書いて飾ってあるんですよ。

上さま 
あれは自己流で書いてさ、勝手に掛け軸に掛けて(笑)。しょうこちゃんとこ行きゃあ、もっとすごいの書けるだろうけど。

ぐっさん 
ぼく、あの子が実際に書いてるとこを見に、池上文化センターに行きましたよ。お母さんがすごいサポートしてるのね、筆を持ってると硯をお母さんがそばまで持って来たりしてね。

上さま
鎌倉とか京都行ったり、ニューヨークでも書いたんだもんね。世界的なひとになっちゃったよね。

・ ・ ・

第二の人生を職業で捉えるけど、ほんとに満たされるものって憧れに近いもの。



上さま 
でもさ、字の書き方とか読み方って基本だから、みんな習ってると思ってたけど、うちの孫なんかの書き順が違うのを見てると、「時代が違うか」と思わざるおえない。

スーさん 
時代が違うんでしょ、やっぱりね。だって「書き順が違うよ!」って親がうるさく言うことないもんね、親が分かんないから(笑)。

上さま
だからさ、孫が書き初め書くじゃない。そんときはちゃんと、ぼくの部屋入るときお辞儀して戸を開けさせて、掃除させたりして、それで「気を落ち着かせてやってみろ」ってやりましたよ。

ぐっさん 
そっから入るんだね。

上さま 
うん。だけどさ正月だけで終わっちゃう。2、3回書きゃ終わっちゃう(笑)。

ぐっさん 
墨をするっちゅうのも、気を落ち着かせるっていうね。いま墨汁でバーっとやっちゃうから、まだ書く準備ができてないうちにパッパッと書いちゃうでしょ。だけど墨すってると、「これからやるんだな」っちゅうね、気持ちになってくる。

スーさん 
墨っていい匂いがする。あれ、匂いを嗅いでるんですよ。膠(にかわ)やなんかが入ってるから変な匂いだけど、書の好きなひとはあれがいいってね。

上さま
でもさあ、やっぱし大きいの書こうと思えば、あれだけするってのは大変だからね(笑)。

スーさん
バケツなんかにつけて書くのはね(笑)。

ぐっさん 
ははは。

上さま 
でもいまからでもやりたいですね。

スーさん 
きっと、みんなね、そういう気持ちあると思う。自分はこれをやりたいけどやれないっていう。

いまちゃん 
ああ。

スーさん
みんな第二の人生をすぐ職業で捉えるけども、ほんとに満たされるものってのは憧れに近いもので、近づこうと思う気持ちがあれば「やろう」っていう気も出てくる。

第二の人生なんて、しみじみ考えたことなかったな、おれ。やっぱりもう、第三ぐらいかもしれないな。

ぐっさん
いまは折り紙一生懸命やったりなんかしてるけど、ぼくはもう第三だね。

いまちゃん 
仕事だけじゃなくて、遊びとか趣味も大事と。

スーさん
いまの話は遊びじゃなくて、趣味の方だよな。

いまちゃん 
あ、そうですね。ちなみに趣味でゴルフってどうですか?

スーさん 
ゴルフ深いけど、知的じゃないよな。だから、いまはさ「知」の部分で満たされるものがないよ。

上さま 
ゴルフは遊びだよ、完全に。

スーさん 
そう、遊び。だけど遊びでも、ものすごいなんか嬉しかったり悲しかったりしますよね。

上さま 
運動だし勝負だしねぇ。

あと、ゴルフってのはコミュニケーションの取り方なんかも、いろいろいい勉強になるよ。

いまちゃん 
なるほど。他になにか「これやってて良かった、これやるといいよ」みたいのありますか?

上さま 
ぼくは仕事してるとき趣味で蘭をやってたんですよ。

蘭ってのは洋蘭と東洋蘭とあって、洋蘭は王室の中にあるようなどっちかっていうと派手な花で、東洋蘭はもっと地味なタイプの花。ぼくは東洋蘭をやってたんだけど、それをやったのが40歳代からかな。

でぇ、東京都職員蘭友会ってのがあってね、そういう会に入ったの。何をするかって言うと、蘭を自分で育てて展示会で発表するわけですよ。そういうのやってて。

それでぼくは、蘭室っていう蘭の温室持ってるから、いまも植えたりするんだけど。だから考えてみると大きな趣味だね。40代後半ぐらいから、蘭の部屋をつくって自分で育てて、多いときは百鉢くらい育ててた。

一時は利益になるようにしたこともあるけど、趣味っていうのはね、利益を考えると汚くなちゃってできなくなっちゃう。

スーさん 
(笑)

上さま 
だから、そんなの考えてると人間汚くなっちゃうから、こんだ自分で好きなのをやって。それで、例えば三越とか大丸とかで、展示会があるときに出品求められたりして、それは勤めながら趣味としてやってたよね。

結局、東京都の蘭友の代表にさせれて、ぼくが都の中で蘭展をやって、発表会をやったりしましたよ。でも、なんか時間を掛けて育てて、花を咲かせるっていうのはいい趣味だと思うよ。

スーさん 
蘭って、四季あるの?

上さま 
一番多いのは春なんだよね。

スーさん 
春蘭って、ジジババのこと言うわけじゃないの?

上さま 
ジジババが発展したわけ。ジジババは全然つまんないでしょ。ジジババを赤にさせたり、白にさせたりしたの。

スーさん 
じゃあジジババのグループ?

上さま 
そりゃあもう、500も1000も種類あるから。

スーさん 
そんなにあるんですかぁ!?

上さま 
もう広すぎちゃってね。

値段もひと鉢、500円から1万円、10万円、100万円、1000万まであるからね。

スーさん 
すげえね。夏の蘭、秋の蘭ってあるんですか?

上さま 
ある。

スーさん 
一年中蘭はあるんですか?

上さま
洋蘭で、シンピジュームとか胡蝶蘭とかって、あれは温度掛けて温室で育てるわけね。だから一年中咲かせるし、それで派手ですよ。

ふつう蘭っていうと洋蘭の方に目がむくと思うけど、ぼくのはどっちかっていうと地味なワビサビの世界に近くなるけど。東洋蘭は日本の精神、禅の精神ですよ。

スーさん 
お茶とかと近いですよね。

上さま 
そうそう、そっちの世界。だから和室でちゃんと。

いまちゃん 
ぼく、はじめて蘭の世界を知りました。

スーさん 
蘭の好きなひといっぱい居るよ、苔の好きなひとも居ますよね。

上さま 
うん。ぼくも苔もやったけど、苔は苔でまた違う世界があるのよ。苔と蘭は合うし、苔は皐月とも合うし。若いときは、皐月は皐月でまたやりましたよ(笑)。

スーさん 
そうー。皐月はなんでもうしないの?

上さま 
あれ、刺して大きくなるでしょ。

スーさん 
刺してって、土にさすの?

上さま
そうそう、そうです。そうするとそれが大きくなっちゃって。
だからなんやかんや、やってんだけど、一番は父親の影響が強い。父親が全部やってたわけ、蘭もそうだし、皐月もそうだし。家でぼくが小ちゃいときから育てて、やってるの見てるから。字もそうだけどね。

スーさん
結局、ずうっと親のやること見て覚えてんでしょうね。

上さま 
だって薔薇なんか、親父が戦前にイギリスから20種類ぐらい取り寄せてたからね。

38歳くらいのときかな、お祭りのときに蘭が売ってたからオヤジに買ってやろうと思って、親孝行で買ってって。

そうしたら中国の蘭ってのは匂いがするの。日本の蘭ってのは匂いがしなくて色が綺麗なんだけど。

それでオヤジが喜んじゃってねぇ、だからぼくも、なけなしの金でオヤジに孝行するつもりで買ったんだけど、そしたら自分がやり出しちゃって、深い世界でねぇ(笑)。

いまちゃん
そうなんですねぇ。

スーさん 
「胡蝶蘭はまだ生きてますか」っていう便りが一番困るよね(笑)、一ヶ月半ぐらい経つとみんな来るんだよ・・・・。

いまちゃん
そろそろ時間ですね。だいぶ参考になりました、わたしも考えた方がいいですね・・・・先のこと。消化仕切れてないんで考えます。今日もありがとうございましたー。

・ ・ ・

2019-10-21-MON
(おしまいです)

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なお、本文中でスーさんがお勧めしてくれた本はこちらです。とっても面白いそうなのでわたしも読みます。

聞いてくれてありがとうございます。いかがでしたか?気に入っていただけたら、ぜひスキ(♡)やフォローをお待ちしています。励みになります。感想やヴィダンシ(ヴィンテージ男子)へのコメント、聞きたい話題などもいただけたら、嬉しいです。頂いたコメントは、ヴィダンシにもちゃんとお届けします。今後の会議の参考にもさせてもらいます。よろしくお願いします!

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