ザ・タイム考察その1

例えば、ザ・タイムに全盛期と呼べるものはなく、オリジナル・メンバーである時こそが全盛期、と言ってみたりする。彼らのアルバム、そしてライブからその辺りをだらだらと考察していく。その1。

ザ・タイムのアルバムに関してはメンバーがオリジナルかどうかは、ぶっちゃけ関係ない。だってプリンスが曲を作っているのだから。ファーストはドクター・フィンク、リサ・コールマンの演奏が含まれている、シュー・アン・カーウェルがコーラス、After Hi Schoolはデズ・ディッカーソン作で演奏はプリンス、セカンドWhat Time Is ItのThe Walkでヴァニティのコーラス、Wild And Looseの歌詞はデズでコーラスにスーザン・ムーンジー、Gigolos Get Lonely Tooでジェシー・ジョンソンがギター、サードIce Cream Castleで、Jungle Loveのリズム・トラックはジェシーが作った、The Birdはザ・タイムによるライブ演奏等、これらは本当の事なのだが、所詮多勢に無勢、プリンスのイニシアティブ、という歴然たる事実に全く変わりはない。プリンスがファンキーなR&Bバンドを作りたかった、だから生まれたのがザ・タイムだ。

プリンスが作ったザ・タイムのための楽曲に、唯一どうしても必要な人間がいる。それはザ・タイムに相応しいメインのボーカリストだ。アレキサンダー・オニールでは無骨なので駄目、だから、キザで生意気なのに憎めない、根に太鼓持ち的部分があるモーリス・デイ。彼しかいない。作曲にもモーリスは絡んでいるが、貢献度のトップ・プライオリティは彼が歌っているという一点にある。

それではザ・タイムのライブはどうだろう。プリンスが全ての楽器を同時に演奏するということが出来ない以上、当たり前だがミュージシャンがいる。彼らはフライトタイム、エンタープライズ、二つのファンク・バンドのメンバーの合体だが、既に共にライブアクトの高評価を受けており、初期から折り紙つきの演奏が約束されていた。よってオリジナル・メンバーがプレイしていたファースト・セカンドの頃が有名なのは当然ということになる。殆どプリンスの前座としてであったが、彼らの演奏が本家プリンスを超えることもしばしばある位のファンキーさだったと言われている。ブート映像が少なくなくあり、ザ・タイムとプリンスの演奏が共に収録されていることもあるので比較してどっちが良いか、なんて観てみたりもする。でも正直どちらがファンキーとか完成度が高いとか、どうでもよくなってくる。この二つを当時同時に観ることが出来た観客に嫉妬こそすれ、どちらも凄いとしか言えないのだ。ファーストの頃には他にザップ、セカンドではヴァニティも前座を勤めたが、彼らとでさえ比較するのも愚であろう。このような凄いバンド、グループが総合的にコンサート全体を彩っていたということ、それが凄いことなのだ。比較するのなら例えば70年代後半のPファンクのライブとならわかる。さしずめザ・タイムはブーチー・コリンズのラバーバンドだろうか。でもザ・タイムのが凄いかもしれない。プリンスの傘下としてのザ・タイムではあるのだが、メンバーそれぞれが枠に収まりきれないソロとなってヒットし得る無限のポテンシャルを秘めていたからだ。

つづく

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