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妊娠中に「葉酸」が必要なのはなぜ?

「妊娠中は葉酸を摂ったほうが良い」と聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。葉酸は妊婦さんにとって必要ですが、実は妊娠する前から意識的に摂ったほうが良い栄養素の1つです。

葉酸とはそもそもどんな栄養素なのか、なぜ妊娠中に葉酸が必要なのか、気をつけたい点など、素朴な疑問にお答えすべく、解説したいと思います。

1 葉酸とは?

葉酸はビタミンB群の一種で、赤血球の形成やDNAの合成、アミノ酸の代謝にも関わっており、女性だけでなく、老若男女全ての世代にとって必要な栄養素です。

葉酸には、大きく分けて2つの種類があります。
1️⃣一般の食品にもともと含まれる葉酸(folate)
2️⃣サプリメントなど人工的に添加された葉酸(folic acid)
このふたつの葉酸の大きな違いは、体内で消化・吸収される過程で、実際に葉酸が栄養素として利用される割合(生体内利用率)です。

2️⃣のサプリメントに含まれる葉酸は体内にそのまま吸収されますが、1️⃣の食品に含まれる葉酸は調理や加工、体内での消化により分解されてから吸収されるため、生体内利用率は、サプリメントに含まれる葉酸の約50%と報告されています。
つまり、サプリメントでの葉酸摂取は食品による摂取の利用率が2倍程度高いといえます。

2 妊娠中になぜ葉酸が必要なの?

葉酸の摂取が胎児の神経管閉鎖障害発症のリスクを低減させることが、多くの研究から分かったため、妊娠中に葉酸が必要といわれています。

お腹の中の赤ちゃんの脳や脊髄をつくる「神経管」は、多くのお母さんが妊娠に気づいていないとても早い段階で形成されます。そのため、いわゆる妊娠初期の間に一定量の葉酸を摂取する必要があります。

「日本人の食事摂取基準」では、『妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸(2️⃣サプリメントの葉酸)を400µg/日摂取することが望まれる』という文言が葉酸の項目に付記されています。

3 葉酸が多く含まれる食品は何?

葉酸は、ほうれん草やブロッコリーなどの緑色野菜、納豆や豆乳などの大豆製品、レバーや牡蠣に多く含まれています。

バランスの良い食事があってこそ、サプリメントを摂る意味があります。そのため、葉酸が多く含まれる食品をはじめ、偏りなくさまざまな食品を摂るように心がけましょう。

4 葉酸を摂るうえで気をつけたい点

前述のとおり、厚⽣労働省では、妊娠を希望する⼥性に対して、⾷事で摂取する基準の葉酸量(18歳以上は240㎍/⽇)に加えて、妊娠の1か⽉以上前から妊娠3か⽉までの期間、サプリメント等から1日あたり400㎍の葉酸を摂取することを推奨しています。

一方で、葉酸をたくさん摂れば摂るほどよいというものではありません。「いつもの食事」以外に摂取するサプリメントの葉酸の量が、1 mg (=1000μg) を超えないようにと通知しています。

サプリメントは、過剰摂取になる危険性があります。例えば、マルチビタミンなど他のサプリとあわせて摂っている場合には、必要以上の量になってしまっていないか注意が必要です。

まとめ

妊娠中は体調やメンタルの変化も大きく、食生活で気をつかわなければならないことが多いと考えがちですが、気をつけるべき栄養素は「葉酸」だけといわれています。「妊娠前から妊娠初期の間に、1日あたり400㎍の葉酸」というキーワードで、頭においていただけたらと思います。

参考文献・資料

・食事摂取基準(2020年度版)葉酸

https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586563.pdf

・葉酸解説 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所  

・妊娠中のサプリメントの利用について 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所

・葉酸とサプリメント ‐神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果 eヘルスネット


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