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私の一番好きな場所

トラベルライターをしていてよく聞かれるのは、
「今まで行ったところでどこが一番好きか?」
という質問。
旅というフィルターを通したら、見るもの全てが新鮮で、なかなか一番を決められないが、あえて選ぶなら、長いこと憧れてやっと行くことができた、アリゾナ州のアンテロープキャニオン。
ここは、スロット・キャニオンと呼ばれる幅の狭い渓谷で、ネイティブアメリカン、ナバホ族の居留地の中にある。それゆえ、2000年の初めくらいまでは地図にも載っていない場所だった。
現在はJ●Bのツアーでも行ける場所になっているけれど、この中へは、いまだにナバホ族のガイドを伴わないと入れない。

アンテロープキャニオンは、グランドキャニオン国立公園から車で約1時間半の所にある。
アッパーアンテロープと、ロウアーアンテロープ(以下、アッパー、ロウアーと略)の2カ所があり、どちらも川底の地形なので、上流で天気の異変が起こると容赦なく鉄砲水が押し寄せて来る。なので、天気が思わしくないと、立ち入り禁止になってしまう。

また、アンテロープキャニオンは普段は暗い洞窟で、太陽が真上に来る昼前後しか楽しめない。
この場所に初めて入った時、暗くてちょっとがっかりだった。でも、数ショット、写真を撮り、モニターを確認した時、
「なんだこれは!」
と思わず叫んだ。そこには実際に見た以上に美しく幻想的な、光をまとった岩の様子が写っていたのだ。アンテロープキャニオンの岩には、光に反応する成分が含まれているという。
写真写りのいい人っているけれど、ここはそれの景色バージョン。
もちろん、肉眼でも別世界感は十分あるのだが、画像はそれを上回るものがある。私のようなアマチュアが撮っても、アーティスティックな絵に仕上がるのだ。嬉しくなってあちこちにカメラをむけていると、天地が分からなくなって酔ったみたいなることも。かつては、ここへ来る人も少なかったから、2時間半のフォトシュートツアーを選んでじっくりキャニオン内にとどまることができたが、ブレイクしちゃった今は15人くらいづつ列を作らされて入るから、ゆっくりすることもできなくてちょっと悲しい。

また、アッパーでは4月から10月の間は、上空から太陽光線が差し込むと、ビームという光の束があちこちで見られてより幻想的に。それ以外はキャニオン内の様子も、アッパーもロウアーも大差はない。アッパーは足元もフラットだが、ロウアーは岩のほんのわずかな裂け目から入って、梯子で奥深くまで降りる。人一人がやっと通れるくらいのところもあり、地球の胎内に潜入しているような気分になる。なめらかに波打つ岩肌にスリスリ(!)もでき、自然、ひいては地球との一体感を楽しめる。
旅が自由にできるようになったら、真っ先にこのアンテロープキャニオンに行きたいな。


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